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Symptoms · Published

Tinel徴候

Tinel sign

別名
チネル徴候Tinel test
臓器系
神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G1-37:末梢神経絞扼症候群神経内科 G3-18:橈骨・尺骨・正中神経障害症候群
関連疾患
足根管症候群

🧠 全体像:は「神経を軽く叩くと、その神経のにビリッとした感覚が響く」という、末梢神経の圧迫・絞扼・再生を示す所見である。学習の軸は一つ——どの神経を、どこで叩いているかを押さえれば、のでも、のでも、のでも同じ原理で応用できる。⚠️ ただし「陽性=診断確定」ではない。感度は低〜中等度、特異度は比較的高いという誘発試験に共通の弱点を持ち、単独では診断を除外も確定もできない。

定義と用語の整理

(Hoffmann-)は、末梢神経の走行上を近位から遠位へ軽くしたときに、その神経のにちくちくした感覚が生じれば陽性とする所見である。1915年にPaul HoffmannとJules Tinelがそれぞれ独立に報告した1。

用語 内容
神経の走行上をして誘発する遠位のちくちく感
誘発試験 ・Phalen徴候・など、特定のや刺激で症状を再現させる診察手技の総称
などの所見とは別に、学的に神経障害を評価する検査

⭐ 「叩いて響く」のは、圧迫を受けた部位や再生中のが機械的刺激に対して過敏になっているためである1。したがって同じ手技でも、絞扼部位を診断する場面(・など)と、神経再生の進み具合を追う場面(外傷後の神経縫合後など)の両方に使われる。

病態生理

flowchart TD
    A["末梢神経が絞扼・圧迫される<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carpal tunnel'>手根管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tarsal tunnel'>足根管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cubital tunnel'>肘部管</span>など)<br>または外傷後に再生中である"] --> B["圧迫部・再生端の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='nerve fiber'>神経線維</span>が<br>機械的刺激に対し過敏になる"]
    B --> C["その部位を軽く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percussion; tapping'>叩打</span>する"]
    C --> D["神経の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='territory of innervation'>支配域</span>(遠位)に<br>ちくちく感・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiating pain'>放散痛</span>が生じる"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Tinel sign'>Tinel徴候</span>陽性"]

⚠️ 見逃してはいけないもの

⚠️ は感度が低〜中等度にとどまり、陰性でも絞扼性神経障害を除外できない。 での感度は23〜67%(特異度95〜99%)1、での感度は25〜75%(特異度70〜90%)と、いずれも報告によって大きくばらつく2。

⭐ それでも臨床的な価値がある理由が二つある。

  • ではPhalen徴候・Durkan試験の方が感度・特異度に優れるため単独診断には向かないが1、を扱った82編・4213例のレビューでは誘発試験のうちが最も高頻度(89%)に用いられており、実地診療での位置づけは高い3。
  • では、術前にが陽性であること自体が後の疼痛緩和を強く予測する——診断精度としては不完全でも、治療反応性の予測因子として独立した価値を持つ2。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["神経走行上の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='percussion; tapping'>叩打</span>でちくちく感が誘発される"] --> B{"どの神経・部位を叩いたか"}
    B -->|"手根部・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='median nerve'>正中神経</span>"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carpal tunnel syndrome'>手根管症候群</span>を疑う<br>ただしPhalen徴候等も併用し単独で判断しない"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tarsal tunnel'>足根管</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior tibial nerve'>後脛骨神経</span>"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tarsal tunnel syndrome'>足根管症候群</span>を疑う<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsiflexion-eversion test'>背屈外がえし試験</span>と組み合わせる"]
    B -->|"外傷・縫合後の神経走行"| E["神経再生の進行度の指標として<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serial'>経時的</span>に追跡する"]
    C --> F["陰性でも除外はできないため<br>症状・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiologic study'>電気生理検査</span>と総合判断する"]
    D --> F
  • は単独の確定診断ツールではなく、他の誘発試験・と組み合わせて解釈する所見として位置づける。
  • 外傷後の神経損傷では、で誘発される部位が時間とともに遠位へ移動していけば、神経再生が進んでいる所見として経過を追う指標にもなる。

まとめ

  • は、末梢神経の圧迫部・再生端を軽くしてにちくちく感を誘発する所見で、の診察に広く使われる1。
  • 感度は部位・報告によって23〜75%程度と幅広く低〜中等度にとどまり、陰性のみで絞扼性神経障害を除外できない12。
  • ⚠️ ではPhalen徴候・Durkan試験の方が診断精度に優れるが、ではが最も高頻度に用いられ、術前陽性が後の改善を予測する独立した価値を持つ。
  • 単独では判断せず、他の誘発試験・と組み合わせて総合的に評価する。

出典

  1. 1.Hoffmann Tinel Sign(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)Hoffmann-Tinel徴候が1915年にPaul HoffmannとJules Tinelにより定義された、末梢神経を近位で軽く叩打したときに対応する遠位の皮膚支配域にちくちくした感覚(pins and needles)を生じる所見であること、末梢神経線維の圧迫または再生を示す所見として一般に用いられること、手根管症候群における感度は23〜67%と幅があるが特異度は95〜99%と高いこと、手根管症候群の評価においてはPhalen徴候やDurkan試験などより感度・特異度に優れる他の誘発試験と比較して有用性が劣ること。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Tarsal Tunnel Syndrome(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)足根管症候群におけるTinel試験が、足根管を繰り返し叩打して後脛骨神経支配域に疼痛やちくちく感が出れば陽性とすること、感度は25〜75%と低いが特異度は70〜90%であること、除圧術後の疼痛緩和を強く予測する所見であり術前にTinel徴候が陽性の患者は手術によく反応すること。閲覧 2026-09-05
  3. 3.Differences in Diagnosing Tarsal Tunnel Syndrome Across the Literature: A Systematic Review and a Call for Standardization(JBJS Reviews・2026)足根管症候群の診断基準を扱った82編・4213例の系統的レビューで、誘発試験全体が82編中94%で用いられそのうちTinel徴候が最も多く用いられていたこと(89%)、誘発試験の感度は報告によって大きくばらついたこと。閲覧 2026-09-05