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Disease Atlas · 運動器 · 疾患

モートン神経腫

Morton neuroma

別名
Morton中足骨痛モートン病Morton's metatarsalgiainterdigital neuroma
臓器系
運動器
科目
Macroscopic Anatomy and Embryology (Macroscopic Anatomy)Neurology
トピック
解剖学 6.5:下肢:足関節と足神経内科 G1-37:末梢神経絞扼症候群
鑑別疾患
足根管症候群
症状
灼熱痛知覚異常圧痛

🧠 全体像:Morton神経腫は名前に反して真の腫瘍ではない。歩行の反復的な機械的刺激で指神経が変性・線維化する病態で、好発部位は第3-4間にほぼ限られる。⭐ 診断は画像より病歴と身体所見が主体——間圧痛が最も感度の高い所見であり、Mulder徴候(音)がこれを補強する。治療は病変の大きさで層別化され、5〜6mm以下は保存療法、8mmを超えると手術という目安がある。

名前の誤解を解く——「神経腫」だが腫瘍ではない

⚠️ “neuroma”という名称にもかかわらず、真のではなく変性性病態(degenerative)である1。の指神経が圧迫を受けて変性・を来す状態を指す。

病因には2つの仮説がある1。

  • 慢性外傷説(最も広く受け入れられている):歩行のが指神経になを与え、神経がとのあいだで圧迫される
  • 絞扼説:深横中足靭帯の前端と足底軟部組織に対して指神経が圧迫される

なぜ第3-4中足骨間に集中するのか

第3-4間が最多の好発部位である1。

💡 理由は解剖にある。 足底の(手のに相当)と(手のに相当)のは隣り合っており、第3間の指神経は両方の神経から二重に神経支配を受けるため、他の間よりも神経自体が太い。太い神経が相対的に狭い間隙を通ることになり、機械的な圧迫を受けやすい1。⭐ 女性に多い理由もこの力学に関係する——先の細い靴やハイヒールはを狭め、間の圧迫を強める。女性のは男性の少なくとも5倍で、中年女性に好発する。同一足に複数の神経腫が併存することも一般的である1。

臨床像と診察

症状は灼熱感・刺すような痛み・のうずきで、靴を脱ぐと軽快し、歩行で増悪する1。

所見 内容
間圧痛 の中で最も感度が高い1
Mulder’s click徴候 足を左右から圧迫しながら間を圧迫すると、クランチ音・が生じる1

⭐ 画像より先に、この2つの身体所見で診断の見当をつける。

画像診断

検査 所見
超音波 5mm以上の病変ではより高感度とされる1
MRI 啞鈴形の軟部組織病変として描出される1
単純X線 は写らないが、Sullivan徴候(罹患した間の開大)がみられることがある1

治療——大きさで方針を分ける

⭐ 5〜6mm以下の神経腫は保存療法で良好な予後が見込め、8mmを超えると手術を要する可能性が高い1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='forefoot'>前足部</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='burning pain'>灼熱痛</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paresthesia'>知覚異常</span><br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='toe(s)'>足趾</span>間圧痛・Mulder徴候陽性"] --> B["超音波または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で<br>病変径を評価"]
    B --> C{"病変径は<br>5〜6mm以下か"}
    C -->|"はい"| D["靴の調整・パッド<br>ステロイド注射から開始"]
    C -->|"いいえ・8mm超"| E["保存療法の効果は限定的<br>手術を検討"]
    D --> F{"改善するか"}
    F -->|"改善"| G["保存療法を継続"]
    F -->|"改善しない"| E
    E --> H["神経切除術<br>(最も良好な無痛達成率)"]

保存療法

  • 靴の調整:足幅が広く靴底が柔らかい、低いヒールの靴1
  • パッド:の近位に置き、間の圧迫を減らす1
  • ステロイド注射:短期的には良好な効果があり3〜6か月持続しうるが、病変が8mm以上では効果が減弱する1
  • (アルコール注射):⚠️ 近年のデータ(2023〜2024年)で再発率の高さが示され、推奨度は低下している1
  • :60〜85%で長期的な症状緩和が得られる1

⚠️ 「標準治療」と呼べるほど強いエビデンスは無い。 系統的レビューでは、ステロイド注射と・モビライゼーションが疼痛軽減について最も強いエビデンスを持つ2つの介入とされたが、高品質なエビデンスに基づくは見つからなかった2。

手術

では、注射療法のが43%であったのに対し、術は68%、神経切除術は74%が無痛を達成し最も良好な成績であった1。外科的切除全体の成功率は75〜85%、再発率は10〜20%である1。

⚠️ 合併症:、断端神経腫による症状の再発、ステロイド注射後の皮膚・、神経損傷によるハンマートゥ変形が起こりうる1。

足根管症候群との鑑別

も足底の・を呈するため紛らわしいが、痛みの解剖学的な局在で区別できる。

手がかり Morton神経腫
痛みの主座 間()。特定のへ放散する 後下方。・足底全体へ放散する
誘発試験 Mulder’s click徴候、間圧痛 、
増悪因子 狭い靴、体重負荷、歩行 夜間、立位・活動後
対応する神経 底側指神経(内側・の由来) 本幹

⚠️ としてが挙げられており1、症状がに限局するか、足底全体・踵まで及ぶかを必ず確認する。両者が併存することもあるため、片方が見つかっても他方の評価を省略しない。

まとめ

  • Morton神経腫は真の腫瘍ではなく、指神経の慢性圧迫による変性・である。
  • ⭐ 第3-4間に好発する理由は、両側性神経支配による神経の肥厚と間隙の狭さの組み合わせ。 女性は男性の5倍以上ので、狭い靴・ハイヒールが誘因になる。
  • 診断は間圧痛(最も感度が高い)とMulder’s click徴候が中心。画像は超音波(5mm以上で高感度)・(啞鈴形病変)・X線(Sullivan徴候)を補助的に使う。
  • ⭐ 治療は病変径で層別化する。5〜6mm以下は保存療法、8mm超は手術の可能性が高い。
  • 保存療法は靴調整・パッド・ステロイド注射が中心。は近年再発率の高さから推奨度が下がっている。
  • 手術(神経切除術)が最も良好な無痛達成率(74%)を示す。ただし系統的レビューでは「」と呼べる高品質なエビデンスは無いとされている。
  • とは痛みの解剖学的局在(か、後下方から足底全体か)で鑑別する。

出典

  1. 1.Morton Neuroma(StatPearls Publishing (NCBI Bookshelf)・2026)Morton神経腫が前足部指神経の圧迫性ニューロパチーで足底前足部痛・知覚異常・歩行耐容能低下・持続する活動制限を来すこと、真の腫瘍ではなく変性性病態であること(neoplasticではなくdegenerative)、最も広く受け入れられている病因が歩行の機械的作用による指神経の慢性微小外傷で中足骨頭と中足趾節関節のあいだで神経が圧迫されるという慢性外傷説であること、絞扼説として深横中足靭帯前端と足底軟部組織に対する指神経の圧迫も提唱されていること、女性の発生率が男性の少なくとも5倍であり中年女性に好発すること、同一足に複数の神経腫が併存することも一般的であること、第3-4中足骨間が最多の好発部位でその理由が間隙の狭さと両側性の神経支配による神経の肥厚であること、症状が灼熱感・刺すような痛み・電撃様のうずきで靴を脱ぐと軽快し歩行で増悪すること、Mulder徴候(足を圧迫しながら中足骨頭間を圧すとクランチ音・クリック感が生じる)と足趾間圧痛(臨床所見で最も感度が高い)が診断の手がかりになること、画像診断では超音波が5mm以上の病変でMRIより高感度とされ、MRIでは啞鈴形の軟部組織病変として描出され、単純X線ではSullivan徴候(足趾の開大)がみられること、保存療法として足幅が広く靴底が柔らかく低いヒールの靴・中足骨頭近位に置くパッドが用いられること、ステロイド注射は短期的には良好な除痛効果を示し3〜6か月持続しうるが病変が8mm以上では効果が減弱すること、硬化療法(アルコール注射)は2023〜2024年のデータで再発率が高いことが示され推奨度が低下していること、高周波熱凝固は60〜85%の長期的な症状緩和が得られること、5〜6mm以下の小さな神経腫は保存療法で良好な予後が見込める一方8mmを超える大きな神経腫は手術を要する可能性が高いこと、メタ解析で注射療法の完全寛解率が43%・神経剥離術の無痛達成率が68%・神経切除術の無痛達成率が74%と神経切除術が最も良好な成績であったこと、外科的切除の成功率が75〜85%で再発率が10〜20%であること、合併症として複合性局所疼痛症候群・断端神経腫による再発・ステロイド注射後の皮膚と脂肪の萎縮・神経損傷によるハンマートゥがあること、鑑別診断に遠位優位の症状を呈する足根管症候群が挙がることを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.The effectiveness of non-surgical interventions for common plantar digital compressive neuropathy (Morton's neuroma): a systematic review and meta-analysis(Journal of Foot and Ankle Research(Matthews BG, Hurn SE, Harding MP, Henry RA, Ware RS)・2019)2018年1月までの文献を検索した系統的レビューで25件(RCT7件・症例集積18件)を採用したこと、8種類の介入のうちステロイド注射と硬化療法がもっとも多く報告されていたこと(各7件)、2件のRCTのメタ解析でステロイド注射は対照群よりVASでの疼痛減少が大きかったこと(加重平均差-5.3、95%CI -7.5〜-3.2)、徒手療法・モビライゼーションも対照群より有意な疼痛減少を示したこと、体外衝撃波療法は対照群との有意差を示さなかったこと、硬化療法・ボツリヌス毒素注射・高周波焼灼・凍結神経融解は症例集積のみで方法論的な質が限られていたこと、ステロイド注射と徒手療法・モビライゼーションが疼痛軽減について最も強いエビデンスを持つ2つの介入だが標準治療と呼べるだけの高品質なエビデンスは見つからなかったと結論していることを確認した閲覧 2026-09-07