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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

エルロチニブ

erlotinib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(日本)
タルセバ
商品名(EU)
Tarceva
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
副作用
皮疹下痢爪囲炎
相互作用
リファンピシン
対象疾患
肺癌
原因となる疾患
尋常性痤瘡

🧠 全体像は第1世代EGFR-TKIの代表であり、「-tinib」=という規則を体現する薬の一つ。EGFR阻害薬に共通する副作用は皮膚()・消化管(下痢)・肺(の3つに集約でき、この組み合わせを覚えておけば同系統の薬すべてに応用できる。皮疹の強さが治療効果と相関するというな特徴(EGFRは表皮でもを担うため、阻害が強くかかっている人ほど皮膚にも効果が出ている証拠になる)は、EGFR-TKI全体を理解するうえで最も重要な視点。

薬効群の中での位置づけ

EGFR-TKIはへの対応で世代が進んだ。は第1世代にあたる。

世代 特徴 位置づけ
第1世代( ATP。野生型EGFRも阻害するため皮膚・消化管への影響が強く出る かつてはEGFR変異陽性NSCLC一次治療の基本形だったが、現在は第3世代が優先される(下記)
第2世代(不可逆阻害・pan-HER型) EGFRだけでなくHER2など複数のErbB受容体を不可逆的に阻害 効果は強いが皮膚・消化管毒性も強く出やすい
第3世代(T790M変異対応型: 第1世代耐性の主因であるT790M変異にも効き、が高い 現在の一次治療の第一選択。 第1世代との直接比較試験(FLAURA試験)に基づき未治療のEGFR exon19欠失・L858R陽性転移性NSCLCに承認されている1。第1世代耐性後(T790M陽性)の位置づけは以前からのものだが、現在は一次治療そのものの主役でもある

はほぼ双子の薬(詳細はのノートを参照)。どちらも野生型・を問わずEGFRを阻害する第1世代薬で、EGFR変異陽性NSCLCという同じ集団に使われてきたが、その一次治療の主役は第3世代のに移っている。

機序

flowchart TD
    A["EGFR遺伝子変異<br>(exon 19欠失・L858R点変異など)"] --> B["EGFR<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tyrosine kinase domain'>チロシンキナーゼドメイン</span>が<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='ligand-independent'>リガンド非依存的</span>に活性化"]
    B --> C["下流のRAS-MAPK/PI3K-AKT経路が<br>恒常的にON"]
    C --> D["腫瘍細胞の異常増殖・アポトーシス抑制"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='erlotinib'>エルロチニブ</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ATP-binding site'>ATP結合部位</span>へ<br>可逆的に結合"] --> F["EGFRチロシンキナーゼ活性を阻害"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>遮断→増殖停止・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='apoptosis induction'>アポトーシス誘導</span>"]
    E -.->|"正常組織のEGFRも阻害"| H["表皮のEGFR阻害→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acneiform rash'>ざ瘡様皮疹</span>"]
    E -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intestinal epithelium'>腸管上皮</span>のEGFR阻害"| I["下痢"]

💡 なぜ皮疹・下痢・がセットで出るのか。 EGFRは腫瘍だけでなく、正常な表皮の・肺胞上皮でも増殖・分化のシグナルとして働いている。EGFRだけを選択的に狙うのではなく野生型EGFRも同時に阻害するため、これらの正常組織にも影響が及ぶ。皮疹はEGFR阻害の直接的なの現れであり、皮疹が強い患者ほど・生存期間が良いという相関が複数ので確認されている。

薬物動態

項目 値・特徴
約60%。食後投与で吸収が増えるため空腹時服用が原則(食事の影響を避けて安定した血中濃度を得るため)
代謝 主にCYP3A4(一部CYP1A2)
半減期 約36時間。1日1回投与が可能
排泄 主に糞中(代謝物として)
pH依存性吸収 で胃酸下でのに依存する。・PPIとの併用で吸収が低下しうる

⚠️ CYP3A4を強く誘導する薬(リファンピシンなど)は血中濃度を大きく下げ、効果不十分につながる。 逆に強い阻害薬(など)はを上げる。喫煙もCYP1A2を誘導しの曝露を下げるため、喫煙者では通常量でも血中濃度が低くなりうる。

適応

領域 使いどころ
呼吸器 EGFR変異陽性(exon 19欠失・L858Rなど)の(NSCLC)。第1世代TKIとして使用(現在の一次治療の第一選択は第3世代のでありが未治療例の第一選択となる場面は限られる)
消化器 との併用(EGFR変異の有無を問わない適応として承認されている国がある)

用法・用量

NSCLC:1日1回150 mg、空腹時(食事の1時間以上前または2時間以上後)にする。併用療法では1日1回100 mgとを併用することがある。皮疹・下痢などの毒性に応じて減量する。実際の用量は適応・・併用薬で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ の既往・合併:EGFR-TKIによるリスクが高いため、投与開始前に肺病変の評価が必要
  • 喫煙者:CYP1A2誘導により血中濃度が下がりやすく、効果が減弱しうる
  • 強いCYP3A4(リファンピシンなど)との併用は避ける:血中濃度が大きく低下し治療効果が損なわれる
  • 消化管穿孔・出血のリスク(まれ):抗凝固薬・NSAIDs併用例では注意

副作用

頻度 内容
高頻度 皮疹、顔面・体幹に好発)、下痢
注意
重篤・まれ 例では致死的)、消化管穿孔、重症皮膚障害、

まとめ

  • 第1世代EGFR-TKIの代表。野生型・を問わずEGFRのを可逆的に阻害する。
  • 「-tinib」=という規則を体現する薬の一つ。
  • 副作用は皮疹・下痢・のセットで覚える。いずれも正常組織のEGFR阻害が原因。
  • 皮疹の強さが治療効果と相関するというな特徴を持つ。
  • CYP3A4で代謝され、喫煙・リファンピシンなどので曝露が下がる。空腹時投与が原則。
  • の既往がある患者ではリスクが高く、投与前評価が重要。
  • とほぼ双子の薬で、両者ともEGFR変異陽性NSCLCに使われてきた(詳細な使い分けはのノートを参照)。
  • ただし現在の一次治療の第一選択は第3世代のであり、が未治療例の第一選択になる場面は限られてきている。

出典

  1. 1.TAGRISSO (osimertinib) tablets — Prescribing Information(U.S. Food and Drug Administration / DailyMed・2024)第3世代EGFR-TKIオシメルチニブが、EGFR exon19欠失・exon21 L858R変異陽性転移性NSCLCの一次治療(first-line)に適応を持つことを確認した(第1世代TKIとの直接比較試験FLAURAの有害事象データも添付文書に収載)。閲覧 2026-08-03