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Drug Atlas · B35 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

アダグラシブ

adagrasib

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬
商品名(EU)
Krazati
科目
Pharmacology
トピック
B35: Drugs used in cancer treatment V (Small molecule signal transduction inhibitors. Retinoids)
副作用
悪心下痢
相互作用
ワルファリン

🧠 全体像長く「」とされてきたRASを直接狙うことに成功した薬。RASタンパクは表面がのっぺりとして小分子が結合できる溝に乏しく、何十年も「阻害薬の作りようがない標的」の代名詞だった。突破口はG12C変異という特定のにあった——グリシンがシステインに置き換わったことで生じる新しい反応性のを、共有結合で不可逆的に叩く設計により、ようやく直接阻害が可能になった。KRAS変異の中でもG12Cという一部の型だけに効くという狭さが、逆にこの薬の成立条件そのものになっている。

薬効群の中での位置づけ

標的 代表薬 位置づけ
BCR-ABL/KIT 分子標的薬の原型。融合キナーゼを直接阻害
EGFR 受容体型キナーゼをに阻害
KRAS G12C かつて「」とされたRASを、変異特異的なへの共有結合で初めて直接阻害した薬

KRAS G12C阻害薬は「だけを狙える」という点でEGFR-TKIとはが異なる。 EGFR-TKIは野生型EGFRも阻害してしまうため皮膚・消化管に影響が出るが、G12C特異的な共有結合阻害薬は理論上変異細胞だけを狙える——ただし実臨床ではの副作用は依然として高頻度に出る。

機序

flowchart TD
    A["KRAS遺伝子のG12C変異<br>(12番目のグリシンがシステインに置換)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mutant'>変異型</span>KRASタンパクの表面に<br>新しい反応性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cysteine residue'>システイン残基</span>が出現"]
    B --> C["GTP結合型(活性型)とGDP結合型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inactive form'>不活性型</span>)を<br>行き来しつつ大部分がGTP結合型で固定"]
    C --> D["RAF-MEK-ERK経路が恒常的に活性化"]
    D --> E["腫瘍細胞の異常増殖"]
    F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adagrasib'>アダグラシブ</span>がG12Cの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cysteine residue'>システイン残基</span>へ<br>共有結合で不可逆的に結合"] --> G["KRASをGDP結合型(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inactive form'>不活性型</span>)に固定"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='downstream signal'>下流シグナル</span>遮断→増殖停止"]

💡 なぜ「不可逆」阻害が鍵になるのか。 RASの表面には小分子が結合できる深いポケットがほとんどない。G12C変異が作る新しいは、共有結合という「一度つかんだら離さない」を利用できる数少ない足がかりであり、これが長年のの壁を破った工夫そのもの。

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 主にCYP3A4。CYP3A4に対してと誘導の両方を示すという複雑な性質を持つ
半減期 約23時間
排泄 主に糞中

⚠️ CYP2C9基質であるワルファリンとの併用は血中濃度を変動させ出血・血栓のリスクを不安定にするため注意が必要。 抗凝固が必要な場合は代替薬を検討する。

適応

領域 使いどころ
呼吸器 KRAS G12C変異陽性の

用法・用量

1日2回600 mgをする。QT延長・・消化器毒性に応じて減量する。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ QT延長:投与前後に心電図・電解質を確認し、他のQT延長リスク薬との併用は避ける
  • 肝毒性:投与開始後は定期的な肝が必要
  • CYP3A4基質・CYP2C9基質(ワルファリンなど)との相互作用と誘導を併せ持つ複雑なのため、併用薬の血中濃度が変動しうる

副作用

頻度 内容
高頻度 悪心下痢、嘔吐、感、
注意 、QT延長
重篤・まれ 重篤な肝毒性、、重篤な不整脈

まとめ

  • 長く「」とされたRASを、G12C変異特異的な共有結合阻害で直接叩いた薬。KRAS阻害薬という新しい薬効群を切り開いた。
  • 標的はKRAS G12C変異陽性NSCLC。に限定される狭い適応が、この薬の成立条件そのもの。
  • 共有結合でKRASをGDP結合型()に固定し、RAF-MEK-ERK経路を遮断する。
  • CYP3A4に対すると誘導という複雑な性質を持ち、ワルファリンなどCYP2C9基質との相互作用に注意する。
  • 消化器症状(悪心・下痢・嘔吐)が高頻度。QT延長・肝毒性のモニタリングも必要。