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Disease Atlas · 腫瘍 · 腫瘍

低悪性度神経膠腫

Low-grade glioma (pediatric, BRAF-altered)

別名
LGG
臓器系
腫瘍神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G3-06:脳腫瘍の病理学的分類
上位概念
中枢神経系腫瘍(成人・小児)
治療薬
dabrafenib + trametinib
症状
発作頭痛嘔吐視力低下
適応薬
ダブラフェニブ+トラメチニブ

🧠 全体像:「」は名ではなく、小児期に好発する grade 1〜2の系腫瘍を束ねる臨床的な総称である。・・などは分類第5版(CNS5)では別々の腫瘍型に分類されるが、MAPK経路(特にBRAF)の異常という共通の分子基盤を持つことが多く、この共通性が近年のような分子標的薬を「組織型を横断して」使える根拠になっている。成人に多いのびまん性とは別の実体であり、両者を同じ「」という語で混同しないことが重要である。

位置づけと分類

CNS5は、形態と分子所見を統合して腫瘍型を決め、その後にCNS gradeを付けるという方式を取る。小児で頻度が高いこの実体は、単一の腫瘍型ではなく複数の腫瘍型にまたがる。

CNS5でのカテゴリー 代表的な腫瘍型
限局性性
神経細胞・混合神経細胞膠腫
その他の系腫瘍

💡 「」という言葉を臨床・・添付文書で見たときは、単一のではなく、この束ねられた集団を指していると読み替える。の小児適応も、特定の一腫瘍型ではなく「BRAF V600E変異陽性の」という分子で定義された集団に対して与えられている1。

分子病理

多くの症例でMAPK経路(RAS-RAF-MEK-ERK)を活性化させる異常を持つ。代表的なものがBRAF V600E点変異とBRAF融合遺伝子(KIAA1549-BRAFなど)で、ではBRAF融合遺伝子が、・ではBRAF V600E点変異がより多く見られる傾向がある。

flowchart TD
    A["MAPK経路(RAS-RAF-MEK-ERK)の異常な活性化"] --> B{"異常の種類"}
    B -- "BRAF融合遺伝子(KIAA1549-BRAF等)" --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pilocytic astrocytoma'>毛様細胞性星細胞腫</span>に多い"]
    B -- "BRAF V600E点変異" --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ganglioglioma'>神経節膠腫</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleomorphic xanthoastrocytoma'>多形黄色星細胞腫</span>に多い"]
    C --> E["腫瘍細胞の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='proliferative signal'>増殖シグナル</span>亢進"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-grade glioma'>低悪性度神経膠腫</span>としての増殖"]
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='BRAF inhibitor'>BRAF阻害薬</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='MEK inhibitor'>MEK阻害薬</span>による治療標的"]

⭐ BRAF V600E点変異は低分子阻害薬()で直接狙えるのに対し、BRAF融合遺伝子は同じBRAF異常でもV600Eの標的にならない——「BRAF異常がある」だけでなく、変異の種類まで確認する必要がある理由がここにある。

臨床像

症状は腫瘍の発生部位に強く依存する。小脳・に生じれば(頭痛・嘔吐)や、視神経路・視交叉に生じれば・、大脳半球に生じれば発作やとして現れやすい。 grade 1〜2に相当する緩徐な増殖を示すことが多く、症状も年余にわたり緩徐に進行することがある一方、部位によっては早期から機能障害を来す。

治療

第一選択は可能な限りの外科的切除である。全摘出が得られれば追加治療を要さないことも多いが、視神経路など摘出が困難な部位、多発病変、再発・進行例ではが必要になる。

  • 化学療法(+など)が従来の標準治療である
  • BRAF V600E変異陽性例では、分子標的薬であるが国際共同で化学療法(+)と比較され、(47%対11%)・臨床的有用率(86%対46%)・中央値(20.1か月対7.4か月)のいずれにおいても化学療法を上回った2
  • この結果を踏まえ、dabrafenib + trametinibは米国で1歳以上のBRAF V600E変異陽性に対するとして承認されており、または許容できない毒性まで継続する1

⚠️ BRAF/は「BRAF V600E変異陽性」というが前提であり、BRAF融合遺伝子が主体のの多くには同じ機序の恩恵が及ばない。組織型ではなくがを決める好例である。

まとめ

  • は名ではなく、・・など CNS5上は別々の腫瘍型にまたがる、小児に好発する grade 1〜2の系腫瘍の総称である。
  • 成人に多いのびまん性とは異なる実体であり、混同しない。
  • 多くがMAPK経路の異常(BRAF融合遺伝子またはBRAF V600E点変異)を持ち、変異の種類によって治療標的になるかどうかが分かれる。
  • 症状は発生部位に依存し、外科的切除が第一選択、摘出困難・再発例では化学療法または分子標的薬を検討する。
  • BRAF V600E変異陽性例では、が化学療法より高い・より長いを示し、1歳以上の適応として承認されている。

出典

  1. 1.MEKINIST (trametinib) tablet, film coated / MEKINIST (trametinib) powder, for solution — full prescribing information(Novartis Pharmaceuticals Corporation(DailyMed)・2025)全文を確認した。1. の適応にBRAF V600E変異陽性の切除不能または転移性固形腫瘍(1歳以上、迅速承認)に加え、小児1歳以上の低悪性度神経膠腫が独立した適応として挙がること、2.3の投与期間が小児低悪性度神経膠腫では病勢進行または許容できない毒性まで継続するとされていることを確認した。閲覧 2026-09-08
  2. 2.Dabrafenib plus Trametinib in Pediatric Glioma with BRAF V600 Mutations(New England Journal of Medicine(Bouffet E, et al.)・2023)国際共同第II相試験(20か国、2018年9月〜2020年12月に登録)で、BRAF V600変異陽性の小児低悪性度神経膠腫110例をダブラフェニブ+トラメチニブ群(73例)またはカルボプラチン+ビンクリスチン群(37例)へ2:1の比率で無作為化した初回治療試験であること、客観的奏効率がダブラフェニブ+トラメチニブ群47%・化学療法群11%、臨床的有用率(clinical benefit rate)が86%対46%、無増悪生存期間中央値が20.1か月対7.4か月(追跡期間中央値18.9か月)であったことを確認した。閲覧 2026-09-08