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Symptoms · Published

皮膚乾燥(乾皮症)

Xerosis cutis

別名
乾皮症皮脂欠乏ドライスキンxerosis
臓器系
皮膚
科目
Dermatology
トピック
皮膚科 1-05:皮膚炎・湿疹群の臨床病型と治療皮膚科 1-06:アトピー性皮膚炎
関連疾患
アトピー性皮膚炎貨幣状湿疹甲状腺機能低下症慢性腎臓病慢性単純性苔癬
起因薬
アゼライン酸アダパレンアリトレチノインクラスコテロンクロファジミントアルクエタマブベキサロテン過酸化ベンゾイル
スコア
POEM(患者主体の湿疹評価尺度)SCORAD(アトピー性皮膚炎重症度スコア)

🧠 全体像は、)が破綻し、が増えて乾燥・粗糙感を来した状態である。「単なる乾燥」として片付けず、加齢や環境要因のようなありふれた原因か、内分泌・腎・肝胆道系疾患や悪性腫瘍を背景に持つ二次性の乾燥かを見分けることが診療の軸になる。放置すれば、さらにへと炎症を帯びながら進行し、そう痒―の入口にもなる。

定義と用語の整理

患者は「肌がカサカサする」「粉を吹く」などと訴えるが、実際は炎症の強さによって呼び名が変わる連続した状態である。

用語 特徴
(本項) の水分保持能低下による乾燥・粗糙感が主体で、炎症は目立たない
が進行し、陶器のひび割れ様のと軽度の紅斑を伴うようになった状態1
乾燥した皮膚にさらに炎症が加わり、境界明瞭な円形・貨幣状の湿疹局面を形成したもの
による口腔粘膜の乾燥で、本項が扱う皮膚の乾燥とは別の症状である

病態生理

など)に埋め込まれた構造で水分の蒸散を防ぎ、の分解産物である(乳酸・糖・アミノ酸・尿素など)が内に水分を引き込む2。💡 遺伝子変異はのバリア障害の一因でもあり、とADの乾燥はこの点で機序を共有する。このいずれかが破綻するとが増え、乾燥が生じる。

原因は機序で群にすると整理しやすい。

機序群 代表例 要点
加齢性 60歳以上で頻度が高く、産生の低下が背景にある
環境要因 低湿度(冬季・乾燥した室内暖房)、過剰な洗浄・熱い湯での入浴 や熱がバリア脂質を直接洗い流す
皮膚原発性 異常によるバリア障害が主体で炎症を伴う
内分泌・代謝性 、糖尿病 により全身性の乾燥が生じる
腎性 ・透析 発汗腺の萎縮や性変化が関与する
肝胆道系 胆汁うっ滞 掻痒とともに乾燥を伴うことが多い
・D欠乏、 表皮のターンオーバーが障害される
放射線・薬剤性 放射線療法、、スタチン、EGFR阻害薬 分泌の抑制や角化異常を介する
遺伝性 先天性の角化異常でバリア形成そのものが障害される

進行するとの順で炎症の強さが増し、いずれの段階でもが加わればそう痒―に入りへ向かいうる。

⚠️ 見逃してはいけないもの

  • ⚠️ 症を「加齢のせいの乾燥」で片付けない。 高齢発症の全身性では、徐脈・便秘・体重増加・浮腫などを示す他の所見を確認する。
  • ⚠️ 成人発症のは先天性と分けて考える。 全身の魚鱗様が成人になって新たに出現した場合、を中心とするであることがあり、や分子標的薬(EGFR阻害薬など)でも生じる3
  • ⚠️ 皮疹に乏しい全身性の乾燥に強い掻痒を伴う場合は、乾燥だけで説明せず肝胆道系疾患・腎不全・悪性腫瘍を背景に持つ全身性掻痒の原因検索に委ねる。
  • ⚠️ の乾燥を美容上の問題として軽視しない。 難治性の乾燥・掻痒は透析導入や治療強化を検討する根拠の1つになる。

鑑別の進め方

季節性・入浴習慣・薬剤歴で説明できるかをまず確認し、説明できなければ全身性の背景疾患を検索する順で進める。

flowchart TD
    A["乾燥を訴える患者"] --> B{"季節・環境要因で<br>説明できるか"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lifestyle advice'>生活指導</span>と保湿剤で<br>経過観察"]
    B -->|"いいえ"| D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Medications'>内服薬</span>・既往疾患で<br>説明できるか"}
    D -->|"はい"| E["背景疾患・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='culprit (suspected) drug'>被疑薬</span>の<br>管理を優先"]
    D -->|"いいえ"| F["TSH・腎機能・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Malnutrition or obesity'>栄養状態</span>を確認"]
    F --> G{"説明できるか"}
    G -->|"はい"| H["原疾患の治療を優先"]
    G -->|"いいえ"| I["成人発症なら悪性腫瘍を含め<br>再評価"]

介入の考え方

保湿剤はを油膜で覆う(ワセリンなど)と、水分をに引き込む(グリセリン・尿素など)に大別され、両者を組み合わせて選ぶ2。日本の実地診療ではもよく用いられる。

入浴・洗浄の見直しも治療の柱である。熱い湯を避けてぬるめの湯にし、石鹸の代わりに状の洗浄料を使い、入浴・洗浄の回数自体を減らすことが勧められる1

は乾燥そのものではなく、炎症を伴う部位に限って短期間用いる2まで進行した紅斑部には、軽いで十分なことが多い1

まとめ

  • バリア()の破綻による乾燥・粗糙感で、進行すると、さらにへと炎症を伴う病態に移行する。
  • 原因は加齢性・環境要因・皮膚原発性疾患・内分泌代謝性・腎性・肝胆道系・・放射線/薬剤性・遺伝性に群分けして考える。
  • 症を加齢のせいと決めつけず、成人発症のとなりうることを見逃さない。
  • 皮疹に乏しい全身性掻痒を伴う乾燥は、肝胆道系・腎・悪性腫瘍の背景検索に委ねる。
  • 治療の柱は保湿剤(の併用)と入浴・洗浄の見直しで、は炎症を伴う部位に限る。

出典

  1. 1.Xeroderma(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)角層バリアの構造(天然保湿因子として乳酸・糖・アミノ酸・尿素、セラミドが角層の主要な脂質成分、フィラグリンがケラチン線維の架橋を助けバリアを強化)、原因分類(60歳以上で高頻度な加齢性、寒冷・低湿度・乾燥した室内暖房などの環境要因、糖尿病・甲状腺機能低下症/亢進症・腎不全などの全身疾患、ビタミンA/D・亜鉛・鉄欠乏などの栄養障害、魚鱗癬などの遺伝性疾患、利尿薬・β遮断薬・経口避妊薬・レチノイド・長期の外用ステロイド・放射線療法などの薬剤・治療関連)、治療(ワセリンが代表的なオクルーシブ保湿剤、グリセリンが代表的なヒューメクタント、頻回入浴を避けぬるめの湯とし強い洗浄を避ける入浴指導、皮膚炎を伴う場合に限り外用副腎皮質ステロイド・カルシニューリン阻害薬を検討)を確認した。閲覧 2026-08-04
  2. 2.Asteatotic Eczema (Eczema Craquelé)(DermNet NZ・2014)皮脂欠乏性湿疹が乾皮症と本質的に同一の連続体で角層からの水分喪失が主体であること、高齢者に多く甲状腺機能低下症・低栄養(亜鉛・必須脂肪酸欠乏)・リンパ腫を背景に持ちうること、レチノイド・利尿薬・プロテインキナーゼ阻害薬などの薬剤で生じうること、重症化すると全身性の紅斑を伴う二次性皮膚炎に進展しうること、治療はワセリンなど厚めの保湿剤を1日数回、石鹸の代わりにクリーム状洗浄料を用い入浴回数自体を減らすこと、紅斑部には数日間のみ軽い外用ステロイドで十分なことが多いことを確認した。閲覧 2026-08-04
  3. 3.Hereditary and Acquired Ichthyosis Vulgaris(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)後天性魚鱗癬がホジキン病・多発性骨髄腫・リンパ腫などの悪性腫瘍のパラネオプラスティック徴候となりうること、全身性エリテマトーデスやAIDSなどの全身性疾患、セリアック病・クローン病などの吸収不良疾患、コレステロール低下薬・アロプリノール・EGFR阻害薬/BRAF阻害薬などの分子標的薬でも生じうることを確認した。閲覧 2026-08-04