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Disease Atlas · 皮膚 · 疾患

Hailey-Hailey病

Hailey-Hailey disease

別名
家族性良性慢性天疱瘡良性家族性天疱瘡
臓器系
皮膚
科目
DermatologyMicroscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)
トピック
皮膚科 3-01:皮膚の構造組織学 8.1:皮膚・付属器:表皮
鑑別疾患
Darier病
治療薬
タクロリムスアシトレチン
原因微生物
黄色ブドウ球菌
症状
掻痒

🧠 全体像:は「だけで起こるカルシウムポンプ異常」として捉える。原因はATP2C1がコードするGolgi装置のCa²⁺/Mn²⁺-ATPaseで、の原因であるATP2A2(SERCA2、小胞体のポンプ)とは別の分子だが、どちらも細胞内カルシウムの乱れがの接着を壊すという共通の機序を持つ。⭐ 臨床像は腋窩・・頸部というに限局した有痛性のびらん・水疱で、のような全身の病変や粘膜病変を欠く。組織学的にはと紛らわしいが、に乏しく、を繰り返しやすい点が実地の課題になる。

病態・遺伝

原因はATP2C1(3q21-q24)で、Golgi装置の型Ca²⁺/Mn²⁺-ATPase(isoform 1)をコードする1。この遺伝子の変異はGolgi装置内のカルシウム枯渇を招き、細胞接着に必須のタンパク質の処理を障害すると考えられている1。結果として表皮内の広範なが生じる。

で・可変発現を示し、ATP2C1のは214種類以上報告されている。約15〜30%の患者は家族歴を欠き、または未診断例と考えられる1。

💡 との違いは「どのポンプが壊れるか」。 のATP2A2(SERCA2)は小胞体のポンプ、のATP2C1はGolgi装置のポンプで、局在するオルガネラが異なる。この違いが、の全身性の病変と、の限局という分布の違いに反映されていると考えられる。

疫学

推定は約1/50,000で、と同程度と考えられている。発症は通常後思春期から30〜40代である1。

臨床像

部位 所見
好発部位 頸部両側・背部、腋窩、、会陰部(陰嚢・)。対称性・両側性の分布。約50%の女性患者で部が罹患
病変 ⭐ 有痛性のびらんを伴う紅斑性斑と、悪臭を伴う滲出液。群集性のが基本病変で、破裂後は痂皮性びらんとなる
慢性病変 肥厚性の局面、湿性疣贅様の外観

以上はいずれも同一のStatPearlsによる1。

⚠️ という好発部位が診断の第一歩。 掻痒を伴う有痛性のびらんが腋窩・・頸部に対称性に生じたら本症を疑う。

増悪因子と二次感染

増悪因子は軽微な外傷・摩擦・加熱・湿度・紫外線照射・である1。⚠️ 黄色ブドウ球菌・・カンジダ属・などのが症状増悪や急性播種を招きやすい1。という湿潤・摩擦にさらされやすい部位の性質が、この易感染性の背景にある。

診断

臨床像から疑い、で確認する。組織学的には広範なが「老朽化した煉瓦壁」様の外観を呈し、上基底層に裂隙を形成する。⭐ はと異なり軽度にとどまる1。直接は陰性で、これがとの鑑別点になる1。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intertriginous (area)'>間擦部</span>の有痛性びらん・水疱・悪臭"] --> B["生検:広範な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acantholysis'>棘融解</span><br>老朽化した煉瓦壁様の外観"]
    B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dyskeratosis'>異常角化</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='seborrheic areas'>脂漏部位</span>病変・爪のV字<span class='jp-term jp-term-diagram' title='notch (incisure)'>切痕</span>は"}
    C -->|"目立つ"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Darier disease'>Darier病</span>を疑う"]
    C -->|"乏しい・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intertriginous (area)'>間擦部</span>限局"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hailey-Hailey disease'>Hailey-Hailey病</span>を疑う"]
    E --> F["直接<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunofluorescence, IF'>免疫蛍光</span>:陰性"]
    F --> G["ATP2C1変異検索は必須ではない"]
    A --> H["急な悪化・悪臭増強があれば<br>細菌・真菌・ヘルペスの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='superinfection'>重感染</span>を検索"]

鑑別:Darier病との違い

のにはが含まれる2。

観点
ATP2A2(小胞体のSERCA2) ATP2C1(Golgi装置のCa²⁺/Mn²⁺-ATPase)
病変分布 が主体。・手掌足底・爪・粘膜にも波及 (腋窩・・頸部・会陰部)に限局
目立つ(corps ronds・corps grains) 乏しい1
爪・粘膜所見 特徴的(V字、) 通常なし

治療

軽症例には間欠的な外用とを用いる。中等症〜重症例にはを、第二選択として外用を用いる。としてはドキシサイクリン100 mg/日(最大3か月)や経口10〜25 mg/日(効果は不定)が挙げられる1。

⭐ 難治例の選択肢が近年広がっている。 、、注射(発汗抑制による摩擦・湿潤の軽減が狙い)、低用量(3〜4.5 mg/日)、が挙げられる1。

まとめ

  • (家族性良性慢性)はATP2C1(Golgi装置のCa²⁺/Mn²⁺-ATPase)の変異による常染色体優性疾患で、はと同程度(約1/50,000)。
  • (腋窩・・頸部・会陰部)に対称性に生じる有痛性のびらん・水疱・悪臭が特徴で、約50%の女性患者で部が罹患する。
  • 増悪因子は摩擦・発汗・熱・紫外線・。黄色ブドウ球菌などのを繰り返しやすい。
  • 組織像はと紛らわしいが、に乏しく直接は陰性。
  • 治療は対症的で、軽症は外用・、難治例には注射・低用量・などの選択肢がある。

出典

  1. 1.Benign Familial Pemphigus (Hailey-Hailey Disease)(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)推定有病率が約1/50,000でDarier病と同程度と考えられていること、通常は後思春期から30〜40代に発症すること、好発部位が頸部両側・背部・腋窩・鼡径部・会陰部(陰嚢・陰唇)で対称性・両側性の分布を示し約50%の女性患者で乳房下部が罹患すること、有痛性びらんを伴う紅斑性斑と悪臭を伴う滲出液が特徴で群集性の弛緩性水疱が破裂後に痂皮性びらんとなり慢性病変は肥厚性斑や湿性疣贅を呈すること、増悪因子が軽微な外傷・摩擦・加熱・湿度・紫外線照射・二次感染であること、組織学的に広範な棘融解が「老朽化した煉瓦壁」様の外観を呈し上基底層に裂隙を形成し異常角化は軽度にとどまること、直接免疫蛍光が陰性であり天疱瘡との鑑別点になること、黄色ブドウ球菌・化膿レンサ球菌・カンジダ属・単純ヘルペスウイルスなどの重感染が症状増悪や急性播種を招きやすいこと、治療が軽症例では間欠的外用抗炎症薬と消毒薬、中等症〜重症例では外用ステロイドや第二選択のタクロリムス、全身療法としてドキシサイクリンやアシトレチンが用いられ難治例にはCO2レーザー・光線力学療法・ボツリヌス毒素注射・低用量ナルトレキソン・デュピルマブが選択肢に挙がること、常染色体優性遺伝で完全浸透・可変発現を示し`ATP2C1`(3q21-q24)の変異が214種類以上報告されており約15〜30%は家族歴を欠くことを確認した閲覧 2026-09-07
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