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Drug Atlas · C3 Antiparasitics / 抗寄生虫薬

クロタミトン

crotamiton

分類
Antiparasitics / 抗寄生虫薬
商品名(日本)
オイラックス
科目
PharmacologyDermatology
トピック
C3: Antiprotozoal and antihelminthic drugs2-14: Scabies
承認適応
疥癬
副作用
掻痒紅斑

🧠 全体像:クロタミトンは、他の抗寄生虫外用薬(・・)とは立ち位置がまったく異なる薬である。それらが「を殺す」ことを主目的にするのに対し、クロタミトンは殺虫効果の機序が不明・確実性に乏しい一方で、皮膚感覚神経のTRPV4チャネルという掻痒に関わる分子標的への作用が近年同定され、鎮痒薬としての実力のほうが確かという逆転した性格を持つ。日本の添付文書上も効能・効果には含まれず、での使用は事実上である。

薬効群の中での位置づけ

治療で使う外用薬を「殺虫効果の確実性」と「鎮痒効果」の2軸で並べると、クロタミトンの特殊さがわかる。

薬剤 殺虫効果 鎮痒効果 日本の適応上の位置づけ
(国内はフェノトリン) 確実(Na⁺) 乏しい に第一選択として承認
確実(Cl⁻チャネル活性化) 乏しい に承認・保険適用
クロタミトン 機序不明・不確実 TRPV4を介して確か は適応外(保険審査上は認められている)1

⭐ クロタミトンを「弱い」のように理解しない。 としての格が低いのではなく、そもそも狙っている標的が違う薬である。

機序

flowchart TD
    A["クロタミトンが皮膚の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sensory nerve ending'>知覚神経終末</span><br>近傍のTRPV4チャネルへ作用"] --> B["適用中はTRPV4を<br>強く抑制する"]
    B --> C["抑制作用により<br>掻痒シグナルの伝達が減弱する"]
    C --> D["TRPV4選択的作動薬<br>(GSK1016790A)誘発性の<br>掻痒行動が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='animal testing'>動物実験</span>で抑制される"]
    B --> H["洗い流し(washout)後は<br>チャネル孔が拡張し<br>大きなリバウンド電流が生じる"]
    E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scabies mite (Sarcoptes scabiei)'>ヒゼンダニ</span>に対する<br>直接的な殺虫効果"] --> F["作用機序は今も未解明"]
    F --> G["添付文書上の効能・効果に<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='scabies'>疥癬</span>は含まれない"]

💡 「掻痒を止める」と「虫を殺す」は別のである。 TRPV4を介した鎮痒効果は近年の分子研究で同定されたのに対し2、寄生虫滅殺作用そのものの分子標的は依然として特定されていない。この非対称性が、次の「適応」節で説明する日本の承認範囲の狭さに直結する。

薬物動態

項目 値・特徴
外用()
系統的なヒトでのデータは乏しく、全身動態は十分に確立されていない
代謝・排泄 明確なデータの記載は乏しい
剤形の特徴 基剤で、と異なり長時間の接触時間を厳密に規定した用法にはなっていない

適応

領域 使いどころ
日本の添付文書上の効能・効果 湿疹、じん麻疹、、皮膚そう痒症、小児ストロフルス(の記載は無い)3
での実際の使用 。日本学会のガイドラインは体重15 kg以上の患者・15 kg未満の小児・妊婦に対する外用薬としてC1(行うことを考慮してもよいが十分な根拠が無い)に位置づけ、保険適用外だが保険審査上は認められているとする1
の 英国のガイドラインは10%を1日2〜3回用いることを弱い推奨(Grade 1C)としている4

⚠️ 「に使われている薬=に承認された薬」ではない。 クロタミトンは日本でも欧米でも、そのものへの適応を持たないまま長く使われてきた薬である。

用法・用量

  • 日本の添付文書上の用法・用量は「通常症状により適量を1日数回患部に塗布または塗擦する」という一般的な規定にとどまり、治療としての固有の用法は定められていない3
  • のに対しては1日2〜3回の塗布が目安として用いられる4
  • ⚠️ 炎症症状が強い浸出性の皮膚炎には、まず適切な(薬など)で炎症を軽減してから使う。 かゆみが残る場合にクロタミトンを追加するという順序で考える

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者3
  • 眼・眼周囲・粘膜には使用しない。内服してはならない3
  • 妊婦・高齢者では大量又は長期にわたる広範囲の使用を避ける。小児では広範囲の部位に使用しない3
  • 炎症症状が強い浸出性の皮膚炎にはまず適切なを用い、その炎症が軽減した後もかゆみが残る場合に使用する3
  • ⚠️ に対する殺虫効果は保証されていない。 クロタミトン単独をの唯一の治療薬として選ぶのではなく、フェノトリンやなど殺虫効果が確立した薬剤と組み合わせる、またはの対症療法として位置づける

副作用

頻度 内容
高頻度(5%以上) 皮膚の刺激感(熱感・ひりひり感等)、接触性皮膚炎(発赤等)3
頻度不明 掻痒、発疹、湿疹、紅斑、、過敏症3

まとめ

  • クロタミトンは、殺虫効果の機序が未解明な一方で、皮膚のTRPV4チャネルを介した鎮痒効果が近年同定された、他の抗寄生虫外用薬とは性格の異なる薬である。
  • 日本の添付文書上の効能・効果は湿疹・じん麻疹・皮膚そう痒症などにとどまり、の記載は無い。での使用は適応外(保険審査上は認められている)である。
  • クロタミトンはTRPV4を適用中は強く抑制し、洗い流し後にはチャネル孔の拡張による大きなリバウンド電流を生じるという時間・状態依存の反応を示す。この抑制作用が掻痒シグナルの減弱につながると考えられている。
  • 診療では、体重15 kg以上・15 kg未満の小児・妊婦に対する外用薬としてC1(弱い推奨)に位置づけられ、への対症療法としても用いられる。
  • 禁忌は本剤成分への過敏症のみだが、眼・粘膜への使用と内服は避け、広範囲・長期の使用は妊婦・高齢者・小児で控える。

出典

  1. 1.疥癬診療ガイドライン(第3版追補)(日本皮膚科学会疥癬診療ガイドライン策定委員会・2018)表2「患者ごとの疥癬治療薬」が、体重15 kg以上ではフェノトリン外用とイベルメクチン内服をともに推奨度A、イオウ剤外用・クロタミトン外用・安息香酸ベンジル外用をC1とし、生後2か月以上で15 kg未満の小児・妊婦ではフェノトリン外用・イオウ剤外用・クロタミトン外用がC1であること、表1の注記でクロタミトンが保険適用外(保険審査上は認められている)であることを確認した閲覧 2026-09-05
  2. 2.Transient receptor potential vanilloid 4 (TRPV4) channel as a target of crotamiton and its bimodal effects(Pflügers Archiv - European Journal of Physiology(Kittaka H, et al.)・2017)クロタミトンがTRPV4チャネルを標的とし、適用中は強く抑制する一方、洗い流し(washout)後にはチャネル孔の拡張により大きな電流(リバウンド)が生じるという時間・状態依存の作用を持つこと、TRPV4選択的作動薬(GSK1016790A)誘発性の掻痒行動をマウスで抑制したことを確認した閲覧 2026-09-05
  3. 3.オイラックスクリーム10% 電子添文(2023年10月改訂・第1版)(医薬品医療機器総合機構(PMDA)・2023)日本のクロタミトンクリーム10%(オイラックスクリーム10%)の効能・効果が「湿疹、じん麻疹、神経皮膚炎、皮膚そう痒症、小児ストロフルス」で疥癬の記載は無いこと、禁忌が本剤の成分に対し過敏症の既往歴のある患者のみであること、重要な基本的注意として眼・眼周囲・粘膜には使用せず内服もしないこと、妊婦・高齢者では大量又は長期にわたる広範囲の使用を避け小児では広範囲の部位に使用しないこと、副作用として5%以上に皮膚の刺激感(熱感・ひりひり感等)・接触性皮膚炎(発赤等)が生じ、頻度不明で掻痒・発疹・湿疹・紅斑・血管浮腫・過敏症があることを確認した閲覧 2026-09-05
  4. 4.British Association for Sexual Health and HIV National Guideline on the Management of Scabies in adults 2025(British Association for Sexual Health and HIV (BASHH)・2025)治療後の掻痒そのものへの対処として、クロタミトン10%クリームを1日2〜3回、または保湿剤を用いることを弱い推奨(Grade 1C)としていることを確認した閲覧 2026-09-05