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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

タラロミセス症

Talaromycosis

別名
ペニシリウム症PenicilliosisPenicillium marneffei infection
臓器系
感染症
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 4/10:接合菌症(フィコミセス症)。アスペルギルス属とペニシリウム属
鑑別疾患
ヒストプラズマ症
関連疾患
HIV感染症・AIDS
治療薬
アンフォテリシンBイトラコナゾール
原因微生物
Talaromyces marneffei
症状
発熱体重減少丘疹肝腫大脾腫

🧠 全体像:タラロミセス症は、東南アジア・南アジアという地理的境界の中でだけ成立する指標疾患である。原因菌のTalaromyces marneffei(旧Penicillium marneffei)は環境中の分生子を吸入しても正常な細胞性免疫があれば排除されるが、感染でが高度に減少すると内で増殖し、のままへ播種する。流行地滞在歴と感染状況の2つを確認して初めて診断にたどり着く病気であり、流行地外ではまず疑われない。

病原体

Talaromyces marneffeiはの二形性真菌で、25℃(環境温度)では多核のとして分枝しながら伸長し、37℃(宿主体温)では一核の酵母細胞へ転換して分裂によって増殖する。かつてPenicillium marneffeiと呼ばれていたが、2011年のによりTalaromyces属へ再分類された1。

病態生理

flowchart TD
    A["Talaromyces marneffei 分生子の吸入<br>(東南アジア・南アジアの流行地)"] --> B{"宿主の細胞性免疫"}
    B -->|"高度<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cell-mediated immunodeficiency'>細胞性免疫不全</span><br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human immunodeficiency virus'>HIV</span>感染・CD4高度低下)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alveolar macrophages'>肺胞マクロファージ</span>内で<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='yeast form'>酵母形</span>へ転換し増殖"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='reticuloendothelial system, RES'>網内系</span>(肝・脾・リンパ節)・<br>皮膚・骨への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Hematogenous Spread'>血行性播種</span>"]
    D --> E["発熱・体重減少・肝脾腫・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='umbilicated papule'>臍窩状丘疹</span>(播種性talaromycosis)"]
    B -->|"免疫正常"| F["通常は発症しない"]

環境(土壌、竹ネズミの巣穴周辺など)中の分生子を吸入することで感染し、ヒト-ヒト感染はない。流行地は東南アジア・南アジアの熱帯・亜熱帯地域(タイ、ベトナム、中国南部など)に限局する1。

疫学

  • 年間約17,300例が診断されるで、2022年半ばまでに34か国で288,000例以上が報告されている1。
  • 患者におけるは地域差が大きく、中国広東省で9.5〜18.8%、広西チワン族自治区で16.1%に達する。
  • 致死率も地域により8〜40%と幅がある(ベトナム28.6〜33%、中国広東省14.0〜25.1%など)1。

臨床像

病態 特徴
播種性talaromycosis(陽性) 発熱(87.1〜98%)と体重減少(29.0〜100%)が最も高頻度。皮膚病変は35.6〜81%にみられ、中心部に壊死窩を伴う典型的なは0〜38.8%と報告差が大きい。は最大51.7%、脾腫は最大54.6%1
(陰性) 陰性患者では関節炎・骨髄炎などのの割合が高い(約46.7%)1

⚠️ はや他の全身性真菌症(Histoplasma症など)と紛らわしい。 流行地滞在歴と感染状況の確認が診断の起点になる1。

⚠️ 陰性患者、とくに小児は重症化しやすい。 陰性小児10例の研究では・を各80%、を70%に合併し死亡率は80%、別の陰性小児11例の研究でも死亡率は36.36%だった——いずれも小規模研究だが、陽性例より予後が悪い集団として見逃されやすい2。

診断

  • 確定診断の標準は培養(Sabouraud dextrose寒天、25℃で・赤色色素、37℃でへの転換を確認)1。
  • として抗Mp1pを用いる検査は感度86%・特異度100%と報告されている1。
  • 骨髄・皮膚病変・リンパ節の生検検体での組織診断も有用。

治療

病期 治療
初期治療(重症・播種性) 0.6〜0.7 mg/kg/日(では3〜5 mg/kg/日)を2週間投与1
維持療法 を数週間〜数か月投与1

⚠️ は選択肢にならない。 検討された189株すべてがに対し 8 μg/mL超で、臨床自体は未確定である2。

流行地でCD4高度低下の患者には再発予防目的の投与が行われることがあり、根本的な予防はによるCD4数の回復である1。

鑑別

と発熱・肝脾腫を来す点でなど他の全身性真菌症と鑑別を要する。流行地(東南アジア・南アジア)滞在歴の有無が鑑別の起点として重要である1。

まとめ

  • タラロミセス症は旧Penicillium marneffeiによる全身性真菌症で、東南アジア・南アジアに地域限定的に流行する。
  • 感染によるCD4高度低下が主要な背景で、指標疾患の一つ。年間約17,300例、致死率8〜40%。
  • 発熱・体重減少・・肝脾腫が特徴的な臨床像。陰性患者、とくに小児はを伴い重症化しやすい。
  • 初期治療は、維持療法は。⚠️ は無効。
  • 根本的な予防はの・治療によるCD4数回復。

出典

  1. 1.An Overlooked and Underrated Endemic Mycosis—Talaromycosis and the Pathogenic Fungus Talaromyces marneffei(Clinical Microbiology Reviews・2023)Penicillium marneffeiは、ミトコンドリアゲノム配列やrRNA ITS領域・RPB1遺伝子などのDNAマーカーに基づく分子系統解析(Samson et al., 2011)によりPenicillium属から分離され、Talaromyces marneffeiとして再分類された。本症(talaromycosis)は東南アジア・南アジアの熱帯・亜熱帯地域に流行する侵襲性真菌症で、年間約17,300例が診断され、2022年半ばまでに34か国で288,000例以上が報告されている。HIV患者における有病率は中国広東省で9.5〜18.8%、広西チワン族自治区で16.1%。致死率は地域により8〜40%(ベトナム28.6〜33%、中国広東省14.0〜25.1%など)。HIV陽性例の臨床像として発熱(87.1〜98%)、体重減少(29.0〜100%)が高頻度で、皮膚病変は35.6〜81%(うち中心壊死を伴う臍窩状丘疹は0〜38.8%)、肝腫大は最大51.7%、脾腫は最大54.6%と報告により幅がある。37℃では分裂により増殖する一核酵母形、25℃では分枝する多核菌糸形をとる二形性真菌である。初期治療はアンフォテリシンB(0.6〜0.7 mg/kg/日、リポソーム製剤では3〜5 mg/kg/日)を2週間、その後イトラコナゾールによる維持療法へ移行する。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Talaromyces marneffei, Coccidioides species, and Paracoccidioides species—a systematic review to inform the World Health Organization priority list of fungal pathogens(Medical Mycology・2024)HIV陰性小児10例の研究では血球貪食症候群8/10(80%)、急性呼吸窮迫症候群8/10(80%)、播種性血管内凝固症候群7/10(70%)を合併し死亡率は8/10(80%)、別のHIV陰性小児11例の研究では死亡率4/11(36.36%)と報告されている。検討された分離株189株すべてがミカファンギンに対しMIC 8 μg/ml超で、臨床ブレイクポイントは未確定とされる。閲覧 2026-09-07