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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 先天性疾患

ムコ多糖症

Mucopolysaccharidosis

別名
MPS
臓器系
内分泌・代謝運動器小児
科目
PediatricsBiochemistry
トピック
小児科 2-10:先天代謝異常を疑う状況と初期評価生化学 14/1:細胞外マトリックス
上位概念
ライソゾーム病
症状
亀背発達退行

🧠 全体像の中でも「蓄積する(GAG)の種類」で臨床像がきれいに枝分かれする一群である。GAGを分解する酵素のどれか一つが欠損すると、のいずれかが全身の結合組織に蓄積し、骨・関節・角膜・心臓弁・気道を少しずつ変形させていく。型を見分ける核心は2点——があるかどうか(Hurler症候群やMorquio症候群にはあるが、同じくが蓄積する型でありながらHunter症候群〈II型〉だけは典型的ではない、という型をまたいだ例外がある)と、があるかどうかが蓄積する型ほど強く、主体で蓄積するMorquio症候群では知能が保たれる)である。治療は共通の限界をそのまま受け継ぎ、は全身病変には効くが血液脳関門を越えられずには届かない

病態:どのGAGが蓄積するかで地図を作る

は、GAGを段階的に分解する一連の酵素のうち、どれか一つが遺伝的に欠損することで生じる。分解できなくなったGAGが全身の結合組織・軟骨・角膜・心臓弁・脳に蓄積し、進行性に組織を変形させる。

flowchart TD
    A["GAG分解酵素の遺伝的欠損(型により酵素が異なる)"] --> B{"蓄積するGAGは?"}
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatan sulfate'>デルマタン硫酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heparan sulfate'>ヘパラン硫酸</span>"| C["Hurler症候群(MPS I重症型)<br>Hunter症候群(MPS II)など"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heparan sulfate'>ヘパラン硫酸</span>のみ"| D["Sanfilippo症候群(MPS III)"]
    B -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='keratan sulfate'>ケラタン硫酸</span>・コンドロイチン-6-硫酸"| E["Morquio症候群(MPS IV)"]
    C --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='corneal opacity'>角膜混濁</span>+多発性異骨症+中枢神経障害"]
    D --> G["中枢神経障害が突出し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone lesions'>骨病変</span>は軽い"]
    E --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bone lesions'>骨病変</span>が主体、知能は保たれる"]
    F --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enzyme replacement therapy (ERT)'>酵素補充療法</span>:全身病変には有効"]
    G --> I
    H --> I
    I --> J["血液脳関門を越えられず<span class='jp-term jp-term-diagram' title='central nervous system manifestations'>中枢神経症状</span>には無効"]

「どのGAGが蓄積するか」が「どこがやられるか」を決める。 は中枢神経系に多く分布するため、が蓄積する型(MPS I・II・III)ほど知的障害・発達退行が前面に出やすい。一方、は角膜と骨に多く、とコンドロイチン-6-硫酸が蓄積するMorquio症候群(MPS IV)は中枢神経障害を欠き、骨格異形成が主症状になる1

多発性異骨症:共通の骨格所見

蓄積したGAGは軟骨・の正常な形成を妨げ、多発性異骨症と呼ばれる特徴的な骨格異形成を来す。全身の骨に及ぶ進行性の骨格変化で、MPS I重症型では全例に、でも85%超にみられる2。MPS IIでも同様の骨格異形成(J字形変形・オール型肋骨・脊柱など)を来す3

  • 頭蓋:蓋、のJ字形変形
  • 脊柱:胸移行部の(椎体の変形を伴う)
  • 肋骨:近位が細く遠位が広がる「オール型肋骨」
  • 四肢:短い骨、(鉤爪状の手)

⚠️ MPS IIでは、J字形変形・オール型肋骨・脊柱を含む多発性異骨症が、身体所見と画像評価の両方で診断の手がかりになる3

角膜混濁が型を分ける

の有無は、ベッドサイドで型を絞り込める数少ない所見である。

主に蓄積するGAG 遺伝形式 知能
Hurler症候群(MPS I重症型) あり(全例) 進行性に重度低下
Hunter症候群(MPS II) まれ( X連鎖劣性(男児のみ発症) 型により正常〜重度低下
Morquio症候群(MPS IV) ・コンドロイチン-6-硫酸 あり(約50%) 保たれる

Hurler症候群とHunter症候群の対比が診断の軸になる。 両者はともにが蓄積し、・多発性異骨症・肝脾腫という共通の臨床像をとるが、MPS Iと対照的に、Hunter症候群ではは時にみられるにすぎず典型的な所見ではない4。加えてHunter症候群はX連鎖劣性のため男児にのみ発症する(Hurler症候群は3の有無という一点で、だけからでも型の絞り込みが始められる。

💡 Morquio症候群(MPS IV)はとコンドロイチン-6-硫酸が蓄積するため、蓄積が主に角膜と骨に生じ、中枢神経系にはほとんど及ばない。そのため知能は発症時には正常であることが多く、骨格異形成(による不安定性、)が臨床像の主体になる1

診断

、多発性異骨症、肝脾腫、といった身体所見に加え、発達退行の有無を確認する(前述のとおり型によって出現の有無が大きく異なる)。診断は尿中GAG分析でのスクリーニング後、白血球または線維芽細胞での酵素活性測定、で確定する。

治療:届く範囲と届かない範囲

全般に共通する治療の限界が、にもそのまま当てはまる。

  • 全身の臓器病変(肝脾腫、、心機能)には効果があるが、血液脳関門を通過できないための進行を止められない23
  • MPS I重症型(Hurler症候群)では、を変えうる唯一の治療アプローチとされる2。ドナー由来細胞が中枢神経系へし酵素を供給しうるためで、発症早期(診断確定後速やかに)の施行が転帰を左右する。

⚠️ をしているからも止まる」と考えない。 全身病変が改善していても、が蓄積する型(MPS I・II・III)では中枢神経病変が並行して進行しうる。への効果が実証されているのはであり、とは適応が異なる2

まとめ

  • は、GAG分解酵素の欠損によりのいずれかが蓄積するの一群で、蓄積するGAGの種類が臨床像を決める。
  • 全身の骨に及ぶ多発性異骨症(蓋、オール型肋骨、)はほぼ全ての型に共通する所見である。
  • の有無が型の絞り込みに役立ち、Hurler症候群(MPS I重症型、あり)とHunter症候群(MPS II、X連鎖でありながら)が対照的な代表例になる。
  • とコンドロイチン-6-硫酸が蓄積するMorquio症候群(MPS IV)は知能が保たれ、骨格異形成が主体となる。
  • は全身病変には有効だが血液脳関門を越えられずには無効で、MPS I重症型ではだけがの経過を変えうる。

出典

  1. 1.Mucopolysaccharidosis Type I(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2025)MPS Iの重症型(Hurler症候群)は乳幼児期から進行性の知的障害を来し通常10年以内に死亡する一方、軽症型(Scheie症候群・Hurler-Scheie症候群)は神経症状がほぼない場合もあり第2〜3十年代または正常寿命まで生存しうること(Clinical Description節)、原因酵素α-L-イズロニダーゼの欠損によりデルマタン硫酸・ヘパラン硫酸の分解が止まり蓄積すること(Molecular Pathogenesis節)、角膜混濁は重症型で全例に、軽症型でも約82%に認められること(Ophthalmologic節)、全身の骨に及ぶ進行性の骨格異形成(多発性異骨症)が両型とも全例にみられること(Skeletal節)、造血幹細胞移植だけがMPS Iの神経認知障害の自然経過を変える治療法であり、酵素補充療法は血液脳関門を通過しないため中枢神経病変への効果は期待できないこと(Targeted Therapies節)を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Mucopolysaccharidosis Type II(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)MPS II(Hunter症候群)はX連鎖劣性遺伝で男性にのみ発症すること(Etiology・Epidemiology節)、原因酵素イズロン酸-2-スルファターゼの欠損によりヘパラン硫酸・デルマタン硫酸が蓄積すること(Introduction・Pathophysiology節)、多発性異骨症としてJ字形トルコ鞍変形・オール型肋骨・脊椎後弯などを来すこと(History and Physical・Evaluation節)、静注酵素補充療法は全身症状を改善させるが血液脳関門を通過できず中枢神経症状にはほとんど効果がないこと(Treatment/Management節)を確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Mucopolysaccharidosis Type II(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2026)MPS Iと対照的に、MPS IIでは角膜混濁は時にみられるにすぎず典型的な所見ではない(In contrast to MPS I, corneal clouding occurs occasionally and is not a typical feature of MPS II)こと(Clinical Description・Eye節)を確認した閲覧 2026-08-12
  4. 4.Mucopolysaccharidosis Type IVA(GeneReviews (University of Washington, Seattle)・2021)MPS IVA(Morquio A症候群)は原因酵素N-アセチルガラクトサミン-6-スルファターゼの欠損によりケラタン硫酸とコンドロイチン-6-硫酸が蓄積すること(Pathophysiology節)、蓄積は主に角膜と骨に生じ角膜混濁と骨格異形成という特徴的所見を来すこと(Pathophysiology節)、知能は発症時には正常であることが多いこと(Clinical Description・Summary節)、角膜混濁は1〜65歳の患者の50%に認められる最も頻度の高い眼科的所見であること(Eye節)を確認した閲覧 2026-08-11