病態生理学

病態生理学 · 2-2

消化管:炎症性腸疾患

GI system: inflammatory bowel diseases

応用トピック
炎症性腸疾患Crohn病の外科的側面潰瘍性大腸炎の外科的側面消化管疾患 症例1
疾患
中毒性巨大結腸症潰瘍性大腸炎
症状
テネスムス

🧠 UC と CD を対比で覚える: UC は「大腸の粘膜を主体にに侵す(血性下痢)」、CD は「口〜肛門のどこでも・に飛び石状(、瘻孔)」。両者とも+遺伝+免疫の異常。急性重症UCでは炎症が壁深部へ及ぶことがあり、穿孔やを見逃さない。

炎症性腸疾患

因子 詳細
IL-23経路、、自然免疫など多数の感受性遺伝子が関与する
腸内抗原への免疫応答が適切にせず、慢性炎症が持続する
多様性やの変化とは関連するが、だけを原因とは断定できない
環境因子 喫煙、食事、薬剤曝露などが遺伝・免疫・菌叢と相互作用する

💡 喫煙は同じ環境因子でもUCとCDで逆方向に働く: では発症・・術後再発のリスクを上げるが、では発症リスクが下がる方向に関連する。ただし喫煙自体の害の方が大きいため、UCの治療として喫煙を勧めることはしない。

潰瘍性大腸炎(UC)

  • に限局、直腸をよく侵す。数週続く血性下痢(→貧血)、増悪と。
  • 臨床:
  • 腸管外:
  • 診断:
    • 4週超の下痢
    • 内視鏡
    • 生検(、萎縮)
  • 急性合併症:
    • :(典型的には径 >6 cm)と全身毒性を伴う救急病態。⚠️ ・・オピオイドはをさらに抑制し、あるいは徴候を隠蔽して悪化に気づくのを遅らせるため中止する。固定死亡率で判断せず、穿孔・腹膜炎・臓器障害なら直ちにを検討する
  • 慢性:
    • 狭窄
    • 大腸癌リスク↑:・病変範囲・炎症で上昇する。症状出現から8年後に病変範囲の確認とdysplasiaの除外のため初回の内視鏡を行い(直腸に限局し近位に炎症の既往が無い例は、以降は一般の大腸癌検診へ戻る)、以降はリスク層別で繰り返す——高リスク(50歳以下で大腸癌を発症した第1度近親者、狭窄またはdysplasia、PSC、高度の活動性炎症を伴う広範大腸炎)なら1年後、なら2〜3年後、それ以外は5年後。合併例はより高リスクとして扱い、PSC診断時から・範囲・によらず毎年する。はに行うのが望ましい(は炎症とdysplasiaの区別が難しい)1

クローン病(CD)

  • で、・大腸が好発部位。間欠的増悪+寛解。
  • 病態: NOD2などの、喫煙を含む環境因子、・菌叢・免疫応答の相互作用により、やIL-23経路を含む炎症が持続する。特定曝露の固定倍率やの検出率だけで個人の発症を説明しない。
  • 症状(特徴):
    • 体重減少/吸収不良()
    • 遷延非血性下痢+疝痛(→RLQ痛)
    • 疲労
    • 発熱
  • 💡 診断: を含む・生検で粘膜病変を評価し、小腸・合併症は、MRまたはー、は骨盤などを目的別に使う。は炎症の検出・治療反応の追跡に有用だが、感染やでも上昇するため単独で確定診断はしない。血清抗体単独での確定・除外や予後判定をしない。
  • DDx:

IBD の治療

⭐ : 症状改善だけでは足りない。に加え、・などの正常化、最終的には内視鏡的治癒()までを目標に据え、症状が軽くても炎症所見が残っていれば治療を強化する2。副腎皮質ステロイドは寛解導入に限定し、⚠️ 維持療法には使わない(長期使用の害が利益を上回るため)。

⚠️ 生物学的製剤・阻害薬の開始前には、とB型肝炎のスクリーニング(既感染からの再活性化リスク)に加え、感染歴・ワクチン接種状況・血算・肝腎機能を確認する。

  • :
  • :
    • 軽症〜中等症の病変では回腸放出型で寛解導入する3。
    • ⚠️ はの寛解導入・維持のいずれにも有効性が乏しく、UCのように中心には据えない。 2025は軽症〜中等症ので経口を寛解導入にも維持にも用いないよう強く推奨し、は症候性の軽症結腸型に限って考慮するとしている3。
    • 中等症〜重症・予後不良因子(若年発症、広範病変、深い潰瘍、瘻孔・狭窄など穿通/、肛門周囲病変など)を持つ例では、チオプリンなど従来治療の無効を確認してから移る古典的な「step-up」に固執せず、、、IL-12/23・IL-23阻害薬、阻害薬などを早期から選択する3。
    • 膿瘍、線維性狭窄、閉塞、難治性瘻孔ではドレナージ・内視鏡・を組み合わせる。

過敏性腸症候群

💡 はなし=腸と脳の相互作用の障害で、大腸癌リスクを上げない。 症状や炎症所見がなければRome基準に沿って積極的に診断し、全例を無制限な除外検査へ進めない。

まとめ

項目 (UC) (CD)
範囲 に限局し、直腸からに侵す 口〜肛門のどこでも。・大腸が好発で、飛び石状
炎症の深さ 粘膜主体(急性重症例では深部へ及ぶことがある) で、瘻孔・狭窄を作る
典型的な症状 血性下痢、、 遷延する非血性下痢、痛、体重減少・吸収不良
喫煙 発症リスクが下がる方向に関連(治療として勧めない) 発症・・術後再発のリスクを上げる
5-ASA 軽症〜中等症の中心 寛解導入にも維持にも中心に据えない
注意する合併症 、大腸癌(症状出現8年後から) 瘻孔・膿瘍・狭窄、肛門周囲病変
  • 治療は目標達成型で、症状だけでなく・の正常化と内視鏡的治癒までを目標にする。副腎皮質ステロイドは寛解導入に限り、維持には使わない。
  • 生物学的製剤・阻害薬の前にはとB型肝炎をスクリーニングする。
  • はの無い腸と脳の相互作用の障害で、大腸癌リスクを上げない。が低ければの可能性は低い。

出典

  1. 1.ECCO Guidelines on Inflammatory Bowel Disease and Malignancies(Journal of Crohn's and Colitis(European Crohn's and Colitis Organisation)・2023)エラスムス大学のリポジトリ(pure.eur.nl)にある誌上版PDFで確認した。Statement 2.1は全IBD患者で症状出現から8年後に病変範囲の評価とdysplasiaの除外のためスクリーニング大腸内視鏡を行うとし、2.2は直腸に限局し近位に炎症の既往が無い例と小腸に限局する例では追加のサーベイランスは不要で一般の大腸癌検診に従うとする。2.3はPSC合併例では病勢・範囲・罹病期間によらずPSC診断時から毎年サーベイランス大腸内視鏡を行うとする。2.4は高リスク(50歳以下で大腸癌を発症した第1度近親者、大腸狭窄またはdysplasia、PSC、高度の活動性炎症を伴う広範大腸炎)なら次回を1年後、中間リスクなら2〜3年後、どちらにも当たらなければ5年後とする。2.5はサーベイランスは寛解期に行うのが望ましいとする閲覧 2026-09-24
  2. 2.Crohn's disease management: translating STRIDE-II for UK clinical practice(Therapeutic Advances in Gastroenterology・2024)STRIDE-IIが目標達成型治療(treat-to-target)の中間目標としてCRP正常化と便中カルプロテクチン100〜250 µg/gへの低下を掲げ、最終的には内視鏡的治癒(粘膜治癒)を目標とすること閲覧 2026-08-14
  3. 3.ACG Clinical Guideline: Management of Crohn's Disease in Adults(American College of Gastroenterology・2025)誌上版の全文(journals.lww.com の2025年6月号掲載ページをWayback Machineの保存版で取得)で確認した。推奨4は軽症〜中等症の活動期クローン病で経口メサラジンを寛解導入にも維持にも用いないことを強く推奨し(中等度のエビデンス)、Key concept 40 はスルファサラジンを症候性の軽症結腸型に限って考慮するとしていること。推奨5は軽症〜中等症の回盲部クローン病の寛解導入に回腸放出型ブデソニド9 mg/日を強く推奨すること。病勢進行の高リスク因子として若年での診断・初診時の広範な腸病変・回腸/回結腸病変・肛門周囲病変や重度の直腸病変・診断時の腸管外症状・穿通型/狭窄型を挙げ、広範病変と深い潰瘍も腸管合併症への進行の危険因子とすること。PROFILE試験を踏まえ、新たに診断された活動期クローン病ではトップダウン治療を標準治療と考えるべきとしていること閲覧 2026-08-14
  4. 4.ECCO-ESGAR Guideline for Diagnostic Assessment in IBD Part 1: Initial diagnosis, monitoring of known IBD, detection of complications(European Crohn's and Colitis Organisation / European Society of Gastrointestinal and Abdominal Radiology・2019)便中カルプロテクチンが下部消化管症状患者でのIBDと過敏性腸症候群の鑑別、および既知IBDでの活動性モニタリングに用いられること閲覧 2026-08-14