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Disease Atlas · 免疫・膠原病 · 疾患

Still肺病変

Still disease-associated lung disease

別名
AOSD-LDsJIA-LD
臓器系
免疫・膠原病呼吸器
科目
Internal MedicinePulmonology and Thoracic SurgeryPediatrics
トピック
内科学 S-05:間質性肺疾患呼吸器内科 39:原因が明らかな間質性肺疾患小児科 3-32:若年性特発性関節炎
上位概念
成人発症Still病
合併症
急性呼吸窮迫症候群(ARDS)
関連疾患
器質化肺炎肺胞蛋白症
治療薬
プレドニゾロンメトトレキサートシクロスポリンAアナキンラトシリズマブカナキヌマブ
原因薬剤
トシリズマブ
症状
咳息切れ
検査値
フェリチン血清IL-18DLCO
画像所見
すりガラス陰影クレイジーペイビングパターン小葉間隔壁肥厚

🧠 全体像:Still肺病変(AOSD-LD/sJIA-LD)は、・に伴って生じる、肺実質を主体とする病変の総称である。単一の病理像ではなく、・・様パターンなど複数の像を取りうるのが最大の特徴で1、⚠️ ・IL-6阻害薬(とくに)の投与中に薬剤誘発性の様反応として発症しうる点が臨床上とりわけ重要である2。頻度は稀だが、Still病の重症度を示す顕著なマーカーであり死亡率が大きく上がる3。

疫学と臨床像

イタリアのGIRRCSコホート(AOSD患者147例)では、診断時点で12.25%(18例)に肺実質病変を認めた3。既報を含めると頻度はおよそ5〜12%とされる1。

⚠️ と画像上の重症度が乖離する。 肺病変を有する患者の多くは軽度の頻呼吸・呼吸困難にとどまるが3、一部は(ARDS)へ進行し、既報では40%がに至り83%が診断後1年以内に合併症を来す1。

⭐ 肺病変を持つ患者には特徴的な背景がある。 GIRRCSコホートでは非肺病変群に比べ高齢(53.6歳 対 44.0歳)で、筋痛・リンパ節腫脹・・腹痛の頻度が高く、で高齢と全身型スコアの高さ(とくにスコア7以上)が独立した予測因子だった3。💡 つまり肺病変は「全身型が強い患者」に起こりやすい。

画像所見

単一のパターンに収まらない。既報を整理すると、次の5つの重複しうる所見に分けられる1。

所見 備考
末梢性肺陰影 成人(AOSD-LD)で最も高頻度
辺縁性の 小児(sJIA-LD)で最も高頻度
クレイジーペイビングパターン 様の像に対応する
陰影
すりガラス陰影

GIRRCSコホートの所見では、が44.4%と最多で、気管支影22.2%・すりガラス陰影16.7%・クレイジーペイビング16.7%・多葉性末梢11.1%が続いた3。

スクリーニング

2024年の/PReS勧告は、・遷延する咳・の有無を、とDLCOでスクリーニングし、症状があればを撮るという方針を示している4。著明な上昇・IL-18高値・が肺病変と相関するとの報告もある1。

flowchart TD
    A["Still病の診断確定"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='digital clubbing'>ばち指</span>・遷延する咳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='shortness of breath / breathlessness'>息切れ</span>をスクリーニング"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulse oximetry'>パルスオキシメトリ</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diffusing capacity of the lung for carbon monoxide'>DLCO</span>を測定"]
    C --> D{"症状または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Labs'>検査値</span>異常があるか"}
    D -->|"あり"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='high-resolution CT'>高分解能CT</span>を撮影"]
    D -->|"なし"| F["定期的なスクリーニングを継続"]
    E --> G{"肺病変を認めるか"}
    G -->|"あり"| H["全身型スコアが高いか、<br>IL-1/IL-6阻害薬投与中かを確認"]

薬剤との関連——「隠れた」PAPが起こりうる

⚠️ ・IL-6阻害薬(とくに)の投与中に、様の肺病変が出現した報告がある。 AOSDにおける初めてのPAP合併例は、開始6か月後に発症した——65歳女性が・メトトレキサートで寛解したのちステロイド減量でし、メトトレキサートをへ変更して寛解したが、その6か月後に軽度の咳と労作時が出現し、胸部CTのクレイジーペイビングパターン・の化・血清抗GM-抗体陽性(115 U/mL)からPAPと診断された2。💡 を中止したが、AOSDもPAPも悪化しなかった——著者らは、関節リウマチにを投与した患者の0.6%にパラドキシカル反応が報告されているフランスのレジストリを踏まえ、AOSD(sJIAの成人型)でも抗GM-抗体が生じた可能性を推測している2。IL-1またはIL-6阻害薬に曝露された若年のsJIA患者でも、多くがPAPパターンをとる肺病変が近年報告されている2。

⚠️⚠️ それでも「肺病変があるからIL-1/IL-6阻害薬を使わない」という判断はしない。 2024年の/PReS勧告13は「現時点のデータでは、Still肺病変の危険因子の存在や肺病変の発症は、・IL-6阻害薬の禁忌とみなすべきではない」と明記している4。有効な薬を止めても多くの患者で改善せず、むしろを伴う重いの危険と、代替となる長期高用量ステロイドの負担のほうが大きい、というのが理由である4。

治療

⚠️ 薬剤誘発性のPAP様反応が疑われる場合は、原因薬の中止と代替薬への切り替えを検討する個別対応になる。 上記の誘発例では中止後もは悪化しなかった2。

予後

⚠️ 肺病変を有するAOSD患者の死亡率は、有さない患者より大きく高い。 GIRRCSコホートでは肺病変群38.9%・非肺病変群10.1%で有意差があり(p=0.004)、死因はのコントロール不良が最多(5例)、次いで・感染症だった。そのものによる死亡は無かった3。⭐ 肺病変はAOSDの重症度を示す顕著なマーカーである1。

まとめ

  • Still肺病変は・全身型JIAに伴う肺実質病変の総称で、末梢性肺陰影・・クレイジーペイビング・陰影・すりガラス陰影という重複しうる複数のパターンを取る。
  • 頻度は5〜12%だが、高齢・全身型スコアの高さを持つ患者に起こりやすく、死亡率を大きく押し上げる(38.9%対10.1%)。
  • スクリーニングは・咳・の有無を・で確認し、症状があれば。
  • ⚠️ IL-1/IL-6阻害薬(とくに)投与中に、様の薬剤誘発性反応として発症しうる(抗GM-抗体陽性の症例報告がある)。
  • ⚠️⚠️ それでも肺病変の存在自体はIL-1/IL-6阻害薬の禁忌ではない——/PReS勧告13が明記している。
  • 治療はステロイドを基本に、不応例でメトトレキサート・、難治例で生物学的製剤を考慮するが、確立した治療戦略は無い。

出典

  1. 1.Rare, rarer, lung involvement in adult-onset Still's disease: A mini-review(Frontiers in Medicine・2022)成人発症Still病における肺病変が既報の5〜12%に認められ、患者の大部分は当初軽度の呼吸困難のみを訴えるが、40%が急性呼吸窮迫症候群(ARDS)へ進行し83%が診断後1年以内に合併症を来すこと、HRCT所見が5つの重複しうるパターン(AOSD-LDで最多の末梢性肺陰影、sJIA-LDで最多の辺縁性隔壁肥厚、クレイジーペイビング、気管支周囲陰影、すりガラス陰影)に整理されること、ばち指を伴う所見が複数の報告にあり拡散能(DLCO)低下も報告されていること、著明なフェリチン上昇・IL-18高値・白血球増多が肺病変と相関すること、sJIA-LDの危険因子としてアナフィラキシー様反応がHLA-DRB1*15との関連とともに同定されていること、難治性・生命を脅かす肺実質病変ではアナキンラ・トシリズマブなどの生物学的製剤が有望と考えられているが確立していないこと、治療は初期にプレドニゾロン0.5〜1.0 mg/kg、ステロイド不応例にメトトレキサートやカルシニューリン阻害薬、難治例にトシリズマブ・アナキンラ・カナキヌマブが用いられること、肺病変がAOSD重症度の顕著なマーカーであることを、PMC9522967の本文(HTML)で確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Development of Pulmonary Alveolar Proteinosis in a Patient With Adult-Onset Still Disease Treated With Tocilizumab(The Journal of Rheumatology・2023)トシリズマブ投与中の成人発症Still病患者が抗GM-CSF抗体陽性の肺胞蛋白症(PAP)を発症し、乳白色の気管支肺胞洗浄液で診断された、AOSDにおけるPAPの初の報告であること、65歳女性が発熱・典型的皮疹・肝機能障害・リンパ節腫脹・咽頭痛・関節痛でAOSDと診断され当初胸部CTに異常が無くプレドニゾロン30 mg/日とメトトレキサート10 mg/週で寛解したが、プレドニゾロンを12.5 mg/日へ減量した6か月後に再燃しメトトレキサートを静注トシリズマブへ変更したところ寛解したこと、トシリズマブ開始6か月後に軽度の咳と労作時息切れが出現し胸部CTでクレイジーペイビングパターン、気管支肺胞洗浄液の乳白色化、血清抗GM-CSF抗体陽性(115 U/mL)からPAPと診断されたこと、トシリズマブを中止したがAOSD・PAPともに増悪しなかったこと、フランスのレジストリでは関節リウマチにトシリズマブを投与した患者の0.6%にパラドキシカル反応が報告されておりAOSDというsJIAの成人型でも抗GM-CSF抗体が生じた可能性を著者らが推測していること、IL-1またはIL-6阻害薬に曝露された若年のsJIA患者でも肺病変(多くはPAP)が近年報告されていることを、Unpaywallで取得した全文PDFで確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.Parenchymal lung disease in adult onset Still's disease: an emergent marker of disease severity—characterisation and predictive factors from Gruppo Italiano di Ricerca in Reumatologia Clinica e Sperimentale (GIRRCS) cohort of patients(Arthritis Research & Therapy・2020)イタリアのGIRRCSコホート147例の成人発症Still病(AOSD)患者を対象とした後方視的研究で、診断時に肺実質病変(PLD)を有していたのは18例(12.25%)であったこと、PLD群は非PLD群に比べ有意に高齢(53.6±14.7歳 対 44.0±16.1歳、p=0.017)で、筋痛(88.9%対61.2%、p=0.033)・リンパ節腫脹(77.8%対51.2%、p=0.028)・胸膜炎(55.5%対14.7%、p<0.001)・腹痛(44.4%対9.3%、p=0.001)の頻度が高かったこと、呼吸器症状は軽度の頻呼吸・呼吸困難にとどまり臨床症状と画像上の病変の重症度が乖離していたこと、CT所見で末梢性浸潤影が44.4%と最多で、気管支血管周囲浸潤影22.2%・すりガラス陰影16.7%・クレイジーペイビング16.7%・多葉性の末梢隔壁肥厚11.1%が続いたこと、多変量解析で高齢(OR 1.04、95%CI 1.01-1.08、p=0.044)と全身型スコア高値(OR 2.08、95%CI 1.50-2.88、p<0.001。全身型スコア7以上でOR 23.31、p<0.001)がPLDの独立した予測因子であったこと、PLD群の死亡率が非PLD群より有意に高く(38.9%対10.1%、p=0.004)生存率も有意に低下したこと(p<0.001)、死因はマクロファージ活性化症候群のコントロール不良が5例・多臓器不全が1例・感染症が1例でARDSによる死亡は無かったこと、PLD群の27.8%が生物学的製剤を使用していたことを、PMC7310010の本文(HTML)で確認した。閲覧 2026-09-07
  4. 4.EULAR/PReS recommendations for the diagnosis and management of Still's disease, comprising systemic juvenile idiopathic arthritis and adult-onset Still's disease(European Alliance of Associations for Rheumatology / Paediatric Rheumatology European Society・2024)全身型若年性特発性関節炎と成人発症Still病を単一疾患「Still病」として扱う2024年のEULAR/PReS勧告が、肺病変(Still肺病変)が近年注目されているとし、ばち指・遷延する咳・息切れの有無とパルスオキシメトリ・DLCOでスクリーニングし症状があれば高分解能CTを撮ることを述べていること、勧告13が「現時点のデータでは、Still肺病変の危険因子の存在や肺病変の発症は、IL-1阻害薬・IL-6阻害薬の禁忌とみなすべきではない」と明記していることを、PMC全文(PMC11672000)で確認した。閲覧 2026-09-07