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Drug Atlas · B7 Vasodilators / 血管拡張薬 · 必修

アンブリセンタン

ambrisentan

分類
Vasodilators / 血管拡張薬
商品名(日本)
ヴォリブリス
科目
Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators
承認適応
肺高血圧症
禁忌疾患
肝硬変特発性肺線維症
副作用
末梢浮腫頭痛
影響検査値
ヘモグロビン
相互作用
シクロスポリン

🧠 全体像と同じ(ERA)だが、ETA受容体を選択的に遮断する点が違う。ETB受容体(内皮側でNO・放出を担う)を残すというは理論的には魅力的だが、実際の安全性プロファイルはと大きくは変わらず、肝機能モニタリングは同様に必要になる。むしろを特徴づけるのは、ETA選択性そのものより「CYP3A4を誘導しない」という上の違いと、で疾患進行を悪化させることが試験で示され、米国添付文書では禁忌に明記されたという臨床上の教訓である。

薬効群の中での位置づけ

同じERAでも、ETA/ETB両方を遮断するか、ETAだけを選択的に遮断するかで2つのに分かれる。

薬剤 肝毒性モニタリング CYP3A4への影響
ETA選択的 必要(投与前後の定期検査) 誘導しない
ETA/ETB非選択的 必要(毎月の定期検査) +他剤誘導(相互作用が広範)
ETA/ETB非選択的(を高めた設計) 添付文書上は「必要に応じて」に緩和 誘導しない(ただし強いCYP3A4誘導剤とは

「ETA選択的」という設計は、理論上はETB受容体を介したNO・放出というな血管拡張機構を温存できるはずだった。 しかし実臨床での有効性・安全性は非選択的ERAと大きくは変わらず、の頻度はむしろ目立つ。ERAを選ぶ実務上の決め手はそのものより、CYP3A4誘導の有無(相互作用の広さ)と適応外での安全性データ(での有害性など)になる。

機序

flowchart TD
    A["血管内皮・肺血管で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelin-1'>エンドセリン-1</span>が過剰産生される<br>(PAHの血管障害で亢進)"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>のETA受容体に結合→血管収縮・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle proliferation'>平滑筋増殖</span>"]
    A --> C["内皮のETB受容体に結合→NO・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prostacyclin (PGI2)'>プロスタサイクリン</span>放出<br>(血管拡張的に働く<span class='jp-term jp-term-diagram' title='counteract mechanism'>代償機構</span>)"]
    D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ambrisentan'>アンブリセンタン</span>がETA受容体を選択的に拮抗"] -.->|"遮断"| B
    D -.->|"温存(狙って遮断しない)"| C
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>↑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular remodeling'>血管リモデリング</span>"]
    D --> F["血管拡張+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle proliferation'>平滑筋増殖</span>の抑制→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>↓"]

💡 ETB受容体は内皮側では血管拡張的に働く一方、平滑筋側にも一部発現して血管収縮に寄与する。 「ETBを温存すればな血管拡張が残る」という選択性の理屈が理論ほど単純にならないのはこのためで、有効性・・肝機能のいずれでもとの決定的な差は確立されていない。

薬物動態

項目 値・特徴
代謝 主にCYP3A4、一部CYP2C19・CYP3A5で代謝される
他剤への影響 阻害・誘導しないのような・広範な相互作用は生じにくい)
との相互作用 併用でのAUCが約2倍に上昇するため、併用時は用量上限(成人・50kg以上の小児は1日5mg、50kg未満は1日2.5mg)を設定する1

⚠️ 「CYP3A4を誘導しない」ことが上の最大の利点。 のようにで血中濃度がに低下したり、・ワルファリンなど他のCYP3A4基質の効果を弱めたりする心配が少ない。ただし相互作用がゼロになるわけではなく、のように自身の血中濃度を押し上げる薬剤にはで対応する。

適応

領域 使いどころ
)との初期併用療法に組み込まれる2

用法・用量

成人は通常として1回5mgを1日1回、から開始する。症状に応じて増量を行い、1日10mgを超えない範囲で調整する。8歳以上の小児は体重に応じて1日2.5〜10mgを投与する1併用時は用量上限(成人・体重50kg以上の小児で1日5mg、50kg未満で1日2.5mg)を超えない1。実際の増量スケジュールは肝機能・・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌肝硬変など重度の肝障害、妊婦または妊娠している可能性のある女性、本剤成分に対する過敏症の既往1
  • ⚠️ 投与開始前および投与中は肝を実施する。 ERA全体に共通するのリスクを踏まえたである1
  • ⚠️ には使用しない。 で、投与群は群より疾患進行(死亡・呼吸器入院・肺機能悪化)のリスクが高く、有効性を示せないまま中間解析で早期中止となった3米国添付文書ではこの結果を受け「を伴うWHO第3群のを含む)」が妊娠と並ぶ禁忌に明記されている4。日本の添付文書では禁忌ではなく重要な基本的注意にとどまり、肺の線維化を伴うPAHでは呼吸器科医に相談のうえ慎重に検討するという書きぶりになる1——同じ試験結果でも国ごとに上の強さが違う点まで含めて押さえる
  • そのものの薬物治療は)が担う。第3群PH(肺疾患・低酸素関連PH)にPAH治療薬を無批判に転用してはならないという原則の代表例である2
  • が生じやすく、心不全の既往がある患者では悪化に注意する
  • 妊娠可能な女性では確実な避妊が必須(催奇形性のリスク)

副作用

頻度 内容
高頻度(10%未満だが目立つ) 頭痛、鼻閉
重大な副作用 貧血(7.6%、ヘモグロビン低下)、心不全(1.5%)、(頻度不明)、(頻度不明)1

まとめ

  • ETA受容体を選択的に遮断する。ETB受容体を温存する設計だが、有効性・安全性の面で非選択的ERA()との決定的な差は確立されていない。
  • 上の特徴は「CYP3A4を誘導しない」こと。のような・広範な相互作用は少ないが、併用時は自身の血中濃度上昇に注意し用量上限を守る。
  • 適応はPAHのみ。には使用しない——ARTEMIS-試験で疾患進行の悪化が示され、米国添付文書では禁忌、日本の添付文書では重要な基本的注意として慎重投与を求める記載になっている41
  • 禁忌は重度肝障害・妊娠。が生じやすく、貧血・心不全にも注意する。
  • 投与開始前・投与中の肝は他のERAと同様に必須。

出典

  1. 1.ヴォリブリス錠2.5mg 添付文書(2024年8月改訂)(グラクソ・スミスクライン株式会社(医薬品医療機器総合機構 掲載)・2024)効能・効果(肺動脈性肺高血圧症)、用法・用量(成人5mgを1日1回経口投与から開始し、忍容性に応じ1日10mgまで増量。8歳以上の小児は体重別に2.5〜10mg)、禁忌(重度の肝障害、妊婦、成分過敏症)、警告(投与前後の肝機能検査の実施)、相互作用(シクロスポリン併用でアンブリセンタンのAUCが約2倍に上昇するため用量上限を設定)、代謝(主にCYP3A4、一部CYP2C19・CYP3A5で代謝され、他剤の代謝酵素を阻害・誘導しない)、重大な副作用(貧血7.6%、心不全1.5%、体液貯留、間質性肺炎)、その他の副作用(末梢性浮腫10%未満)を確認した。また重要な基本的注意8.4に「特発性肺線維症(IPF)を対象とした海外臨床試験において、本剤投与によりIPFの病態増悪リスクの増加の可能性が示されている。肺の線維化を伴う肺動脈性肺高血圧症の患者に本剤を投与する際は、肺線維症の治療に精通した呼吸器科医に相談するなど、本剤投与によるリスクとベネフィットを考慮した上で、投与の可否を慎重に検討すること」と記載され、IPFが禁忌には含まれていないことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Treatment of Idiopathic Pulmonary Fibrosis With Ambrisentan: A Parallel, Randomized Trial (ARTEMIS-IPF)(Raghu G, et al.; Annals of Internal Medicine・2013)特発性肺線維症(IPF)患者にアンブリセンタンを投与した無作為化プラセボ対照試験で、疾患進行(死亡・呼吸器入院・肺機能の悪化)のリスクがプラセボ群より高く、中間解析で早期中止となったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.LETAIRIS (ambrisentan) tablets, for oral use — US Prescribing Information(2025年4月改訂)(Gilead Sciences, Inc.(DailyMed, U.S. National Library of Medicine 掲載)・2025)米国添付文書の禁忌(CONTRAINDICATIONS)が「妊娠」と「特発性肺線維症(肺高血圧症を伴うWHO第3群のIPFを含む)」の2項目であり、IPFが明示的に禁忌とされていることを確認した閲覧 2026-08-10
  4. 4.2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension(European Society of Cardiology / European Respiratory Society・2022)エンドセリン受容体拮抗薬(ERA)がPDE5阻害薬との初期併用療法の柱の一つであり、第3群PH(ILDを含む肺疾患関連PH)にPAH治療薬を無批判に転用しないことを確認した閲覧 2026-08-10