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Drug Atlas · B2 Anticoagulants / 抗凝固薬

ダナパロイド

danaparoid

分類
Anticoagulants / 抗凝固薬
商品名(EU)
Orgaran
科目
Internal Medicine
トピック
L-62: Thrombocytopenias
承認適応
ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)深部静脈血栓症肺血栓塞栓症
禁忌疾患
出血性脳卒中(急性期)糖尿病性網膜症

🧠 全体像:ダナパロイドは、ブタ腸粘膜由来の・・の混合物からなる低分子ヘパリノイドで、(HIT)に対する非ヘパリン系抗凝固薬の一つである。「ヘパリンを含まない」という組成そのものが治療根拠であり、・()とはが異なり、抗Xa因子活性を主体とする点でに近い。ヘパリン抗体とのは低いがゼロではない(血清学的に約3%)ため、可能なら投与前にを確認するという運用が実務上の要点になる。

薬効群の中での位置づけ

項目 ダナパロイド
分類 ヘパリノイド(抗Xa/抗IIa比>20:1) 合成抗Xa因子選択的阻害薬
静注・皮下注 静注 皮下注
主に (腎障害でも使いやすい)
モニタリング ルーチンのは不適、必要時はアッセイ1 ルーチン不要
ヘパリン抗体との まれ(血清学的に約3.2%)2 なし なし

⭐ ASH 2018年ガイドラインは、この5剤(・・ダナパロイド・・)のいずれかを第一選択に立てていない。 条件付き推奨・非常に低い確実性で並列に示唆されるにとどまり、選択は施設の経験・腎機能・出血リスクで決める3。

機序

flowchart TD
    A["ダナパロイド(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heparan sulfate'>ヘパラン硫酸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermatan sulfate'>デルマタン硫酸</span>・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='chondroitin sulfate'>コンドロイチン硫酸</span>の混合物)を静注・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous administration'>皮下投与</span>"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='antithrombin'>アンチトロンビン</span>(AT)に結合"]
    B --> C["活性化<span class='jp-term jp-term-diagram' title='factor Xa'>第Xa因子</span>を選択的に阻害<br>(抗Xa/抗IIa比 >20:1)"]
    A --> D["ヘパリンコファクターIIを介し<br>トロンビンも一部阻害"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombin generation'>トロンビン生成</span>が抑制される"]
    D --> E
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet activation'>血小板活性化</span>の連鎖が止まり<br>新規<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>を抑制"]

💡 ヘパリンと構造が異なるため、多くのヘパリン起因性血小板減少(HIT)抗体とはしない。 ただし「がまったく無い」わけではなく、投与前の血清学的検査でが陽性だった症例の一部は臨床的にも(の再低下・新規血栓症)を示した2。

薬物動態

項目 値・特徴
・
(皮下) ほぼ100%1
ピーク到達 後約4〜5時間1
半減期 :約25時間、:約7時間1
主に(はほぼ関与しない)
時 半減期が延長(正常25時間 対 29〜35時間)。重度では2回目以降の減量を要することがある1
モニタリング ルーチンの(・・トロンビン時間)は不適で、必要な場合はの発色性基質アッセイ(標準曲線はダナパロイドで作成)を用いる1
中和 は無効。緊急時はで血漿抗Xa値を下げうる1

適応

領域 使いどころ
血液・血栓症 急性期HITの治療、HIT既往患者への1。・の治療にも用いられる

⚠️ HITでは、ヘパリンを中止した直後に非ヘパリン系抗凝固薬を治療量で開始することが強い推奨だが、5剤のうちどれを選ぶかは条件付き推奨にとどまる3。ダナパロイドはが主体である点が、例での選択に影響しうる。

用法・用量

体重・現行/既往HITの別・血栓症の有無で細かく用量設定されるが、代表例は以下のとおり(詳細は添付文書のTable 2)1。

  • 現行HIT・予防(体重55〜90kg):750単位を1日2〜3回(7〜10日間)。急速な予防域到達が必要なら初回に1250単位のを追加できる。
  • 確立したまたは肺塞栓(体重55〜90kg):2250〜2500単位のの後、400単位/時(4時間)→300単位/時(4時間)→150〜200単位/時(5〜7日間)で持続静注、または皮下2000単位を1日2回(4〜7日間)で維持する。
  • :血漿抗Xa値をモニタリングし、蓄積が疑われれば減量または一時する1。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤による/血栓症の既往、重度未治療の高血圧、・出血性、急性期の、制御不能な活動性出血、本剤成分(を含む)への過敏症1
  • ⚠️ ヘパリン抗体とのはまれだが起こりうる。 可能な限り投与前にを除外することが推奨され、確認できない場合でも臨床経過を注意深く追う12
  • ⚠️ で中和できない。 ・出血時はが唯一の緊急対応手段となる1
  • ・との併用ではのリスクがあり、最終投与から12時間はカテーテル操作を行わず、麻酔手技後2時間は次回投与を控える1
  • 重度・・の既往がある患者では慎重投与とする1

副作用

頻度 内容
高頻度 注射部位反応、
重篤・まれ 大出血(治療エピソードの8.1%)2、含有による(喘息患者で頻度が高い)1

まとめ

  • ダナパロイドはブタ腸粘膜由来の・・混合物からなる低分子ヘパリノイドで、抗Xa/抗IIa比がヘパリンより20倍超高い。
  • HITの治療・予防に用いる非ヘパリン系抗凝固薬の一つで、ASH 2018ガイドラインは他4剤(・・・)と並び条件付きで示唆する——特定の1剤が第一選択ではない。
  • ⚠️ ヘパリン抗体とのは低いが約3%は臨床的にもを示すため、可能なら投与前に確認する。
  • 主にで、重度では蓄積に注意しでモニタリングする。で中和できない点がヘパリンとの重要な違い。
  • 禁忌は活動性出血・急性期・などで、との併用には手技のタイミング調整を要する。

出典

  1. 1.ORGARAN (danaparoid sodium injection) — Product Monograph(Health Canada(Aspen Pharmacare Canada Inc. 添付文書、2018年2月承認)・2018)ダナパロイドナトリウムがブタ腸粘膜由来の非ヘパリン系低分子硫酸化グリコサミノグリカン(ヘパラン硫酸約80%+高親和性ヘパラン硫酸約4%・デルマタン硫酸8〜16%・コンドロイチン硫酸8.5%未満の混合物)でありヘパリンやヘパリン断片を含まないこと、抗第Xa因子/抗第IIa因子活性比がヘパリンより20倍超高くアンチトロンビン(AT)を介した抗Xa活性とAT・ヘパリンコファクターIIを介した抗トロンビン活性を持つこと、皮下投与後の絶対的生体利用率がほぼ100%でピーク血漿抗Xa活性到達までの時間が約4〜5時間であること、抗Xa活性の消失半減期が約25時間・トロンビン生成阻害活性の半減期が約7時間であること、主に腎排泄され重度腎機能障害患者では抗Xa活性の半減期が延長すること(腎機能正常者25時間に対し腎機能障害患者29〜35時間)、適応が急性期HITの治療とHIT既往患者への予防であること、禁忌に本剤による血小板減少症/血栓症の既往・重度未治療高血圧・糖尿病性/出血性網膜症・急性期の出血性脳卒中・制御不能な活動性出血・本剤成分(亜硫酸塩を含む)への過敏症を含むこと、プロタミンは中和薬にならないが緊急時には血漿交換で血漿抗Xa値を効果的に下げられること、体重55〜90kgの現行HIT患者へのDVT予防では750単位を1日2〜3回皮下投与し急速な予防域到達には初回1250単位の静注ボーラスを併用できること、ヘパリン起因性血小板減少抗体との交差反応性はまれだが起こりうるため可能な限り投与前に交差反応性を除外することが推奨されることを確認した閲覧 2026-09-06
  2. 2.Heparin-induced thrombocytopenia (HIT): a report of 1,478 clinical outcomes of patients treated with danaparoid (Orgaran) from 1982 to mid-2004(Thrombosis and Haemostasis・2006)1982年から2004年半ばまでにダナパロイドで治療されたHIT患者1,418例・1,478治療エピソードの症例報告を解析し、生存率が83.8%、新規血栓症の発生が治療エピソードの9.7%、大出血が8.1%、治療反応不良(新規/進行性血栓症・血小板数の持続低下/新規低下・治療中の切断術・追跡不能のいずれか)が16.4%であったこと、投与前に血清学的な交差反応性が陽性であった36例中23例・新規イベント時に追加検査した32例中22例で臨床的交差反応性(血小板数の持続/新規低下および/または新規/進行性血栓症)が血清学的に確認され合計45例(3.2%)であったこと、これらの臨床転帰が直接トロンビン阻害薬を用いた報告と概ね同等であったことを確認した閲覧 2026-09-06
  3. 3.American Society of Hematology 2018 guidelines for management of venous thromboembolism: heparin-induced thrombocytopenia(American Society of Hematology・2018)PMCの全文で推奨の文言と強さを確認した。推奨3.1は急性HIT(血栓の有無を問わない)でヘパリンを中止し非ヘパリン抗凝固薬を開始することを強い推奨とし、薬剤の選択については「アルガトロバン、ビバリルジン、ダナパロイド、フォンダパリヌクス、または直接経口抗凝固薬(DOAC)」を条件付き推奨・非常に低い確実性で示唆するにとどめ、5剤のいずれかを第一選択に立ててはいないこと、重症・高出血リスク・緊急処置の可能性がある患者では作用時間の短いアルガトロバンまたはビバリルジンが好まれうるとの但し書きがあることを確認した閲覧 2026-09-06