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Disease Atlas · 内分泌・代謝 · 疾患

糖尿病性筋梗塞

Diabetic myonecrosis

別名
糖尿病性筋壊死diabetic muscle infarctionDMI
臓器系
内分泌・代謝運動器
科目
Translational Medicine and PathophysiologyInternal Medicine
トピック
病態生理学 1-10:糖尿病の細小血管合併症内科学 L-23:糖尿病の細小血管・大血管合併症
鑑別疾患
深部静脈血栓症糖尿病性筋萎縮軟部肉腫
症状
大腿部痛腫脹筋痛
検査値
クレアチンキナーゼHbA1c

🧠 全体像:(diabetic muscle infarction:DMI、diabetic myonecrosisとも呼ばれる)は、進行した糖尿病に生じる筋肉そのものの梗塞である。1965年の初報以来200例に満たない稀な合併症だが1、の鑑別に必ず挙がる疾患であり2、覚え方の軸は3つ——①が長く、腎症をはじめとするを伴う患者に多い、②外傷なく急性〜亜急性に大腿部が腫れて痛む(が最多)、③⚠️ 生検・はむしろ回復を遅らせるため、診断が付けば安静・鎮痛・という保存的治療にとどめる。再発しやすいことも重要な特徴である1。

誰に起きるか

項目 内容
平均発症年齢 44.6歳(1型35.9歳・2型52.2歳)1
性別 女性がやや多い(54%)1
糖尿病の型 1型・2型のいずれでも起こる1
平均 1型18.9年・2型11.0年と長い1
合併症 65.8%が2つ以上のを有し、最多は腎症(75%)1

⭐ 「進行した糖尿病」という前提が診断の手掛かりになる。 が長く、腎症・・神経障害などのをすでに持つ患者に多い1。この点は、逆にが良好な患者に起こりやすいと対照的である。

症状——急性〜亜急性の腫瘤様の疼痛・腫脹

⭐ 外傷も発熱もないのに、患部が急に腫れて痛む。 患者は外傷や発熱の既往なく急性〜亜急性に発症する疼痛と腫脹を訴え、大腿部が最多(71.2%)で下腿(15.3%)がこれに続く1。

罹患筋は群(・・・)がを占め、腫脹はな腫瘤として現れることが多い1。

診断——MRIが第一選択、生検は避ける

flowchart TD
    A["進行した糖尿病患者の<br>急性〜亜急性の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thigh pain'>大腿部痛</span>・腫脹"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein thrombosis, DVT'>深部静脈血栓症</span>を<br>超音波で除外"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='magnetic resonance imaging'>MRI</span>で評価"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T2 hyperintensity'>T2高信号</span>・T1等〜低信号<br>筋膜周囲/筋周囲の浮腫か"}
    D -->|"典型的"| E["生検を行わず<br>保存的治療へ"]
    D -->|"非典型・治療反応不良"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='muscle biopsy'>筋生検</span>を検討"]

⭐ が画像検査の第一選択である。 典型像はでの高信号、での等〜低信号で、筋膜周囲・筋周囲・皮下の浮腫を伴う(は76.8%の症例でみられる)1。

⚠️ が正常でも否定しない。 平均値は709.7 IU/Lだが、実際には約68%の症例では正常範囲にとどまる。「筋肉の梗塞なのにが上がらない」ことは珍しくない1。

⭐ は必ず除外する。 は本症のレビューで83例中82例(98.8%)がで陰性となっており、の中でルーチンに除外すべき対象である1。膿瘍や壊死性腫瘍(軟部肉腫など)とは、超音波でプローブ圧迫時に内部の液体がされる像や明らかな域を欠く点で鑑別しうるとされる。蜂窩織炎にされた症例報告もあり、であることの見極めが重要になる1。

⚠️⚠️ は確定診断に有用だが、通常は行わない。 生検には手技に伴う合併症のリスクがあるうえ、本レビューでは生検を行った症例の症状消失までの期間(平均60.8日)が行わなかった症例(平均29.5日)より有意に長かった。生検は臨床像がな場合や、適切な治療にもかかわらず改善しない場合に限って検討する1。

鑑別診断

鑑別には(本症自身がの鑑別に挙がる関係でもある2)、、膿瘍、蜂窩織炎、軟部肉腫を含む壊死性腫瘍が挙がる1。

⚠️ 「糖尿病患者の下肢の腫脹・疼痛」で思考を止めない。 蜂窩織炎とされた報告があるように、な経過や画像所見では感染症・腫瘍性病変との鑑別を意識的に行う1。

治療——保存的治療が原則

⭐ 安静・鎮痛・厳格なが治療の基本である。 外科的介入は一般に推奨されない1。

治療法ごとの症状消失までの平均日数は次のとおりで、()を用いた支持療法が最短だった。

治療 症状消失までの平均日数
+支持療法 28.5日
安静のみ 41.7日
76.5日
外科的介入 68.7〜81.6日

(数値は本文と同一出典による1)

⚠️ ・外科的介入は、かえって回復を遅らせうる。 このレビューでは群・外科的介入群は療法群に比べ症状消失までの期間が有意に長かった1。

予後——再発しやすい

⭐ 本症は再発率が高いことで知られる。 本レビューでの再発率は34.9%(先行研究では45%と報告)で、再発例の61.4%は初発と異なる部位に生じた1。⚠️ 同じ部位が再び腫れなくても、再発を否定する材料にはならない。

まとめ

  • (DMI、diabetic myonecrosis)は進行した糖尿病(が長くを伴う)に生じる急性〜亜急性の筋梗塞で、に最多。外傷・発熱なく腫脹・疼痛が急性発症する。
  • ⚠️ が第一選択(・T1等〜低信号、筋膜周囲/筋周囲の浮腫)。は約7割が正常範囲にとどまるため正常でも否定しない。
  • はほぼ全例で超音波陰性となり除外を要する。膿瘍・軟部肉腫・蜂窩織炎との鑑別も要る。
  • ⚠️⚠️ はと回復遅延(生検群60.8日 対 非生検群29.5日)のため通常は避け、非典型例・治療抵抗例に限る。
  • 治療は安静・鎮痛・が原則で外科的介入は避ける。療法が最短の回復(平均28.5日)と関連した。
  • 再発率が高く(34.9〜45%)、再発は初発と異なる部位に起こることが多い。

出典

  1. 1.Diabetic muscle infarction: a systematic review(BMJ Open Diabetes Research & Care(Horton WB, Taylor JS, Ragland TJ, Subauste AR)・2015)全文を取得して確認した(PMC4410119)。糖尿病性筋梗塞(diabetic muscle infarction:DMI、diabetic myonecrosisとも呼ばれる)が血糖コントロール不良な糖尿病に伴うまれな微小血管性合併症で、1965年のAngervallとStenerによる初報以来45年余りで200例未満しか報告されていないこと、1型・2型どちらの糖尿病でも起こりうること、罹病期間が長く腎症・網膜症・神経障害などの合併症を伴う患者に多いこと、系統的レビューが1965年から2014年7月までの文献検索で126例の初発エピソードと44例の再発(計170エピソード)を解析したこと、平均発症年齢は44.6歳(1型35.9歳・2型52.2歳)で女性が54%を占めること、1型での平均罹病期間18.9年・2型で11.0年と長いこと、117例中77例(65.8%)が糖尿病合併症を2つ以上有し最も多い合併症は腎症(75%)であったこと、症状は外傷や発熱の既往なく急性〜亜急性に発症する患部の疼痛と腫脹で大腿部の疼痛・腫脹が最多(71.2%)で下腿(15.3%)が続くこと、罹患筋は大腿四頭筋(外側広筋・内側広筋・中間広筋・大腿直筋)が上位を占めること、MRIが画像検査の第一選択でT2強調像で高信号・T1強調像で等〜低信号を呈し筋膜周囲・筋周囲・皮下の浮腫を伴うこと(T2高信号76.8%)、クレアチンキナーゼは平均709.7 IU/Lだが約68%の症例では正常範囲にとどまること、深部静脈血栓症は83例中82例(98.8%)で超音波検査により除外されたこと、膿瘍や壊死性腫瘍とは異なり超音波でプローブ圧迫時の内部液体の攪拌像や無エコー域を欠くことで鑑別しうること、蜂窩織炎と誤診された症例報告があること、確定診断には筋生検が有用だが合併症リスクと症状改善までの期間延長(生検施行例で平均60.8日 対 非施行例29.5日)のため通常は推奨されず典型例では回避し非典型例や治療反応不良例に限るべきとされていること、治療は安静・鎮痛・厳格な血糖管理が基本で外科的介入は推奨されないこと、症状消失までの平均日数はNSAID療法群28.5日、安静群41.7日、理学療法群76.5日、外科的介入群68.7〜81.6日で外科的介入と理学療法はNSAID療法に比べ有意に長かったこと、DMIは再発しやすく本レビューでの再発率は34.9%(先行研究では45%)でそのうち61.4%は初発と異なる部位に生じたことを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Diabetic Amyotrophy(StatPearls (NCBI Bookshelf)(Diaz LA, Gupta V)・2023)糖尿病性筋萎縮(腰仙部神経根神経叢ニューロパチー)の鑑別診断として、糖尿病性ニューロパチーの他の病型・神経根圧迫・糖尿病性筋梗塞・骨盤内に浸潤する悪性腫瘍・慢性炎症性脱髄性多発根ニューロパチー・血管炎・サルコイドーシス・感染症・放射線照射後や術後の合併症が挙がっていることを確認した。閲覧 2026-09-07