薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B36 Targeted cancer therapy / 分子標的薬 · 必修

テクリスタマブ

teclistamab

分類
Targeted cancer therapy / 分子標的薬Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(日本)
テクベイリ
商品名(EU)
Tecvayli
科目
Pharmacology
トピック
B36: Drugs used in cancer treatment VI (Large molecule signal transduction inhibitors. Immunostimulant anticancer drugs)
承認適応
多発性骨髄腫
副作用
発熱低血圧錯乱注射部位反応
影響検査値
C反応性蛋白(CRP)好中球減少
原因となる疾患
免疫エフェクター細胞関連神経毒性症候群

🧠 全体像は、に初めて承認されたBCMA×CD3である。片手でのBCMAを、もう片手でT細胞のCD3を掴み、患者自身の循環T細胞をその場で腫瘍細胞のそばへ物理的に橋渡しするという発想は、B細胞ALLで先行する(CD19×CD3)と同じを骨髄腫へ持ち込んだものと理解できる。CAR-Tのような製造期間を要さず既製品としてすぐ開始できる一方、CAR-Tほど長期の効果持続は期待しにくく、効果を維持するために継続的な投与を要する点が最大の対比になる。

薬効群の中での位置づけ

再発・難治性の新規免疫療法は、標的(BCMA/GPRC5D)と式(CAR-T/)の2軸で整理できる。

標的 代表薬 特徴
BCMA CAR-T(細胞) イデカブタゲン ビクルユーセルシルタカブタゲン オートルユーセル 1回投与、体内でクローン増殖
BCMA 既製品、(週1回〜4週毎)
GPRC5D トアルクエタマブ 皮膚・爪・味覚関連の特有副作用

同じBCMA標的のであるとは、抗体骨格・の柔軟性で差が出る。 は週1回投与を基本とし、一定の持続後に2週間隔へ移行できる1のに対し、はより長い(4週毎)まで拡張された用法を持つ。一方、CAR-T(イデカブタゲン ビクルユーセル、シルタカブタゲン オートルユーセル)は1回投与で効果を持続させる設計であり、「継続投与を要する既製品」と「1回投与で改造したT細胞を使う」という対比がBCMA標的薬全体を貫く軸になる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='teclistamab'>テクリスタマブ</span>が循環中のT細胞のCD3と<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='myeloma cell'>骨髄腫細胞</span>のBCMAを同時に結合"] --> B["T細胞と腫瘍細胞が<br>物理的に近接(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunological synapse'>免疫シナプス</span>様構造)"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='T-cell receptor (TCR)'>T細胞受容体</span>を介さない<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='polyclonal'>多クローン性</span>のT細胞活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perforin'>パーフォリン</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='granzyme'>グランザイム</span>による<br>腫瘍細胞の直接傷害"]
    C --> E["活性化T細胞から大量の<br>サイトカイン放出(IL-6・IFN-γなど)"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='CRS'>サイトカイン放出症候群</span>"]
    E --> G["血液脳関門を越えた<br>サイトカインの中枢神経系への影響"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ICANS'>神経毒性</span>"]

💡 なぜ初回投与を漸増ステップアップにするのか。 は初回からを投与すると重症CRSのリスクが高いため、少量(0.06mg/kg)から開始し、数日おきに0.3mg/kg、1.5mg/kgへ段階的に増量する2。この間は入院下でCRSの出現をモニタリングしながら進めることが多く、いったんに達して安定すれば、外来での週1回(または条件を満たせば2週毎)のに移行できる。

適応

再発・難治性の。承認当初は・免疫調節薬・抗CD38モノクローナル抗体を含む4レジメン以上のを持つ患者が対象であった3。MajesTEC-1試験の対象もトリプルクラス曝露済みの重度前治療例であった2

用法・用量

で、CAR-Tのような製造期間を要さず既製品としてすぐ開始できる。CRSリスクを抑えるため、(0.06mg/kg→0.3mg/kg→1.5mg/kg)で開始し、その後は1.5mg/kgを週1回する期へ移行する2。一定期間以上のが持続した患者では、2週間隔投与への切り替えが可能である1。ステップアップ期は入院下でCRSモニタリングを行うことが多い。実際の用量・間隔は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • ⚠️ 期に最も出現しやすい。発熱低血圧・低酸素血症など。重症度に応じてステロイド・で対応する
  • ⚠️ 性(ICANSを含む)・振戦・・けいれんなど。重症例は・ステロイドで管理する
  • 好中球減少を含む血球減少、易感染性
  • 投与中断後の再開時は再びCRSリスクが上がるため、をやり直すことがある
  • 注射部位反応は高頻度だが多くは軽症

副作用

頻度 内容
高頻度 発熱注射部位反応好中球減少を含む血球減少、
注意 に伴う低血圧CRP上昇、などの性、肺炎などの感染症
重篤・まれ 重症CRS、Grade 3以上の性、

まとめ

  • のBCMA(B-cell maturation antigen)とT細胞のCD3を橋渡しするに初めて承認されたBCMA標的のである。
  • CRSリスクを抑えるため(0.06→0.3→1.5mg/kg)で開始し、その後は週1回(条件を満たせば2週毎)のを継続する。
  • はMajesTEC-1試験コホートA全体(165例)で63%・以上39%2、承認の根拠となった添付文書の有効性評価集団(4ライン以上のを持つ適応該当110例)で61.8%・以上28.2%3データカットの違いではなく母集団の違いなので、ひとつの幅としてまとめない。
  • CAR-Tのような製造期間を要さない既製品として、より早期に治療を開始できる点が最大の利点。
  • 同じBCMA標的のとはの柔軟性で、標的の異なるトアルクエタマブとは副作用プロファイル(皮膚・爪・味覚系がない代わりにCRSがより前景に立つ)で対比される。

出典

  1. 1.Teclistamab in Relapsed or Refractory Multiple Myeloma(New England Journal of Medicine・2022)9か国から集めたトリプルクラス曝露済みの再発・難治性骨髄腫165例を対象とした第1/2相MajesTEC-1試験で、漸増ステップアップ投与(0.06→0.3mg/kg)の後に週1回1.5mg/kg皮下投与とし、奏効率63%(完全奏効以上39%)、奏効期間中央値18.4か月を示した。閲覧 2026-08-10
  2. 2.FDA Approval Summary: Teclistamab-A Bispecific CD3 T-Cell Engager for Patients with Relapsed or Refractory Multiple Myeloma(The Oncologist / U.S. Food and Drug Administration・2024)2022年10月、プロテアソーム阻害薬・免疫調節薬・抗CD38モノクローナル抗体を含む4レジメン以上の前治療歴を持つ再発・難治性骨髄腫を適応として迅速承認された。承認の根拠となった添付文書の有効性評価集団は適応に該当する110例で、奏効率61.8%(95%CI 52.1〜70.9)・完全奏効以上28.2%であった。これはMajesTEC-1試験コホートA全体165例の奏効率63%とは母集団が異なる数値である。閲覧 2026-08-10
  3. 3.TECVAYLI® (teclistamab-cqyv) biweekly dosing approved by the U.S. FDA for the treatment of patients with relapsed or refractory multiple myeloma(Janssen (Johnson & Johnson)・2023)2023年、週1回の維持投与で一定期間以上の奏効が持続した患者を対象に、2週間隔投与へ切り替える用法が追加承認された。閲覧 2026-08-10