疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

気管支胸膜瘻

Bronchopleural fistula

別名
BPF
臓器系
呼吸器
科目
Internal MedicinePulmonology and Thoracic Surgery
トピック
内科学 L-18:胸水呼吸器内科 43:胸水
鑑別疾患
気胸
合併症
胸水(膿胸)急性呼吸窮迫症候群敗血症
症状
呼吸困難低血圧皮下気腫発熱喀痰
画像所見
気液面縦隔気腫
元疾患
肺膿瘍

🧠 全体像:(BPF)を理解する一点は⭐ 「気道とという、本来隔てられているはずの2つの腔がつながってしまう」ことである。空気は気道からへ一方的に漏れ続け、逆ににたまった感染性の液体は気道へ逆流しうる。この「隔壁の喪失」という単純なが、のような数分単位の急性像にも、のような数週単位の亜急性像にもなりうる幅の広さを生む1。⚠️ もっとも重要な臨床の型は、・後のであるが、の壊死進展からも同じ瘻孔ができる——原因は違っても、できあがる病態は同じ「気道—の交通」である2。

定義と病態

は、気管支(・葉・区域)との間にできる瘻孔(洞管)で、胸部外科の重篤な術後合併症として最もよく知られる1。

⭐ 急性型と亜急性・慢性型は成り立ちが違う。 急性型は外科的そのもの(気管支断端の裂開)に起因し、突然のや肺のによる窒息という数分〜数時間単位で生命を脅かす経過をとりうる。一方、亜急性・慢性型は感染に関連し、発熱・・感といった数日〜数週かけて進行する経過をとる1。

flowchart TD
    A["気管支断端の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='anastomotic leak'>縫合不全</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung resection'>肺切除</span>後)<br>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung abscess'>肺膿瘍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='necrotizing pneumonia'>壊死性肺炎</span>の胸膜への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='perforation (penetration)'>穿破</span>"]
    A --> B["気道と<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleural cavity'>胸膜腔</span>がつながる<br>=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchopleural fistula'>気管支胸膜瘻</span>"]
    B --> C["急性型:空気が一方的に漏れる"]
    B --> D["亜急性・慢性型:感染が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleural cavity'>胸膜腔</span>にとどまる"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tension pneumothorax'>緊張性気胸</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous emphysema'>皮下気腫</span>・<br>肺の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immersion'>浸水</span>による窒息"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empyema'>膿胸</span>・発熱・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cachexia'>悪液質</span>"]
    E --> G["数分〜数時間で生命を脅かす"]
    F --> H["数日〜数週かけて進行する"]

原因と危険因子

⭐ もっとも典型的な状況は・後である。 は後4.5〜20%、後0.5〜1%で、術後1〜30日に多くほぼ3か月以内に発症する1。

危険因子の分類 具体例
手術・解剖学的要因 右・右下葉切除、気管支断端径25mm超、過度なリンパ節郭清
患者要因 高齢(60歳超)、、喫煙、副腎皮質ステロイド使用、糖尿病
治療関連 、長期、気管支カフによる損傷
感染症 結核(発展途上国のBPFの69.2%が結核関連)、緑膿菌、黄色ブドウ球菌、アスペルギルス

1

⚠️ 原因は手術だけではない。 ・による、も原因になり、が抗菌薬治療に反応しない場合には・への進展・制御不能な喀血が外科的切除の急性適応となる(外科手術は死亡率が最大11%に達しうるため最終手段として温存される)2。

臨床像

⭐ 臨床像は「の」から「亜急性の症状」まで連続的に変動する1。

病型 主な症状
急性 突然の呼吸困難、低血圧、、膿性喀痰、気道・
亜急性 発熱、、感、

1

⚠️ 留置中の患者では、持続的なだけが唯一の徴候のことがある。 症状が乏しくても、ドレーンからのが続いていればBPFを疑う1。

診断

血液検査は・上昇にとどまり特異的なマーカーはない1。

  • 胸部CT:の出現・変化、気胸、を評価する
  • :造影剤の注入で瘻孔を直接可視化できる
  • :気管支断端・瘻孔の直視に加え、結核など感染症の除外、による小瘻孔の位置確認に用いる。による評価は感度83%・特異度100%と報告されている1

治療

初期対応

⭐ ・・栄養サポートが治療の出発点である。 抗菌薬はグラム陽性菌・グラム陰性菌・嫌気性菌をカバーするを選択する1。

人工呼吸管理

⚠️ そのものが瘻孔からのを悪化させうる。 平均気道圧をできる限り下げ、最小限のPEEP・低いピーク圧を維持することが必須で、選択的片肺挿管や高頻度ジェット換気(HFJV)がを回避しを減らす手段として使われる。ガス交換が保てない場合はが代替手段になる1。

気管支鏡的閉鎖と外科的修復

瘻孔径 主な選択肢
5mm未満 気管支鏡的閉鎖(、硬化、エタノール・ポリドカノール・テトラサイクリン注入、)が低侵襲・低コストの第一選択
〜8mm程度 Amplatzerデバイス(有効率96%、最大18か月持続)、被覆金属、コイル
が必要な例 気管支断端の閉鎖+血管付き筋弁被覆。VATSが標準だが、稀にを要する

1

💡 外科手術は必ずしも第一選択にならない。 後のBPF患者の多くは、に耐えられるほど全身状態が良くないため、気管支鏡的治療が実質的な主軸になる1。

合併症と予後

⭐ 死亡率は18〜67%と報告により幅が大きく、発症の遅速が予後を左右する。 遅発性BPF(術後3か月以降)は94%、早期BPF(術後1か月以内)は45%と、遅く発症するほど死亡率が高い。大きなを伴う例も小さいより死亡率が高い1。

主な死因は()につながる、から敗血症への進展、そしてである1。後はBPFと2〜16%で合併し、両者が共存する例では60〜80%でBPFを伴い死亡率21〜71%に達する1。

まとめ

  • (BPF)は気道との間にできる異常な交通で、後(4.5〜20%)・後(0.5〜1%)の重篤な術後合併症として最も典型的だが、の壊死進展など感染由来でも生じる。
  • 急性型は外科的に起因し・という数分〜数時間単位の危機的経過を、亜急性・慢性型は感染に関連し発熱・という数日〜数週の経過をとる。
  • 危険因子は右・右下葉切除、気管支断端径25mm超、高齢・・喫煙・糖尿病・など。
  • 診断は・・(は感度83%・特異度100%)による。
  • 治療は・・栄養サポートを初期対応とし、換気管理では低い気道内圧の維持が要点。瘻孔が小さければ気管支鏡的閉鎖(Amplatzerデバイスは有効率96%)、はに耐えられる例に限られる。
  • 死亡率は18〜67%と高く、遅発性BPF(94%)は早期BPF(45%)より予後不良。主な死因はからの、からの敗血症、。

出典

  1. 1.Bronchopleural Fistula(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)気管支胸膜瘻(BPF)が気管支(主幹・葉・区域気管支)と胸膜腔の間に生じる瘻孔で胸部外科の重篤な術後合併症であること、急性型は外科的縫合不全に起因し緊張性気胸や肺の浸水による窒息など生命を脅かしうる一方、亜急性・慢性型は感染に関連すること、発生率が肺全摘後4.5〜20%・肺葉切除後0.5〜1%で術後1〜30日に多くほぼ3か月以内に発症すること、危険因子が右肺全摘・右下葉切除、糖尿病、化学放射線療法、気管支断端径25mm超、高齢(60歳超)・低栄養・喫煙・副腎皮質ステロイド使用であること、原因として外科的合併症のほか肺膿瘍・壊死性肺炎などの感染による壊死、自然気胸、化学療法、放射線療法、結核(発展途上国のBPFの69.2%が結核関連)が挙げられること、臨床像が突然の呼吸困難・低血圧・皮下気腫・膿性喀痰・気道/縦隔偏位を呈する急性型から、発熱・悪液質・全身倦怠感・膿性痰を呈する亜急性型まで幅があり胸腔ドレーンからの持続的気漏が唯一の徴候のこともあること、診断が胸部CT(気液面の出現・変化、気胸、縦隔気腫)・CT気管支造影・気管支鏡検査(瘻孔の直視、感染症の除外、バルーン閉塞での瘻孔位置確認、カプノグラフィが感度83%・特異度100%)からなること、治療が胸腔ドレナージ・グラム陽性/陰性/嫌気性菌をカバーする広域抗菌薬・栄養サポートを初期対応とし人工呼吸管理では平均気道圧と最小限のPEEP・低ピーク圧の維持や高頻度ジェット換気・ECMOが選択肢になること、瘻孔が5mm未満なら気管支鏡的閉鎖(フィブリン糊・グルタルアルデヒド硬化鉛散弾・エタノール等の注入)が第一選択となりうる一方、8mm程度まではAmplatzerデバイス(有効率96%、最大18か月持続)・被覆ステント・血管造影コイルが用いられ、外科的修復は気管支断端の再縫合閉鎖に血管付き筋弁被覆を併用しVATSまたは開胸で行うこと、死亡率が18〜67%と報告により幅広く遅発性BPFでは94%と早期BPFの45%より高いこと、主な死因が誤嚥性肺炎・ARDS・緊張性気胸であることを確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Lung abscess: the non-conservative management: a narrative review(Journal of Thoracic Disease・2024)肺膿瘍が抗菌薬治療に反応しない場合に気管支胸膜瘻・膿胸への進展・制御不能な喀血が外科的切除の急性適応となること、外科手術は死亡率が最大11%に達しうるため最終手段として温存されることを確認した。閲覧 2026-09-07