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Symptoms · Published

皮下気腫

Subcutaneous emphysema

別名
皮下気腫症
臓器系
呼吸器全身
科目
Traumatology and OrthopedicsSurgery
トピック
外傷学 13:外傷性血胸・気胸の診断と治療外科学 B/07:食道損傷
関連疾患
Boerhaave症候群気管支胸膜瘻食道穿孔

🧠 全体像:は、空気が肺胞・気道・消化管など本来空気の無い場所から漏れ出し、に沿ってを伝って皮下組織へ広がった所見である1。触診でのとして気づかれることが多く、⚠️ 所見自体は多くの場合良性で自然軽快するが、「皮下に空気がある」ことは「どこかもっと深い場所にも空気が漏れている」ことの目印にすぎない1。気胸・・という原因側の重症度がそのものの重症度とは独立して評価されるべき所見である。

定義と用語の整理

患者は「皮膚がプチプチする」「触るとパリパリ音がする」と訴えることがあるが、実際には触診で確認する所見であり、患者本人がという言葉を使うことはまれである。診察者が皮膚を圧迫したときに空気が組織間を移動するとして触れる。

顔面・頸部・胸部・腹部へ広がりうるが、唇には及ばないという特徴があり、これはとの鑑別点になる。声帯が圧迫されれば発声の変化、眼瞼に及べば開瞼困難を来しうる1。

病態生理

flowchart TD
    A["肺胞・気道・消化管などから空気が漏出"] --> B["肺胞内・血管周囲間隙に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pressure gradient'>圧較差</span>が生じる"]
    B --> C["張力の最も低い皮下腔から順に空気が貯留"]
    C --> D["圧が上がると隣接する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fascial plane'>筋膜面</span>を伝って拡大"]
    D --> E["頸部・胸部・腹部の皮下へ広がる"]
    E --> F{"拡大の速さと範囲"}
    F -->|"緩徐・限局"| G["自然軽快が多い"]
    F -->|"急速・広範"| H["胸壁拡張制限・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway compression'>気道圧迫</span>の危険"]

空気はに沿ってという連続した通路を伝わるため、発生源から離れた部位(頸部の損傷が縦隔を経てに達するなど)にも広がりうる1。⭐ 「がどこにあるか」は「空気の発生源がどこか」を直接指し示さない。 触れた部位だけを見て原因を絞り込まず、経路全体(気道・肺・食道・消化管・皮膚損傷)を検討する。

⚠️ 見逃してはいけないこと

⚠️ 急速に拡大するは、を含む深部の圧上昇を疑う。 自体は良性でも、その発生源がであれば数分単位で致死的になる。・血圧低下・(合併時は目立たないことがある)を同時に確認し、臨床的に強く疑うなら画像を待たずに減圧する。

⚠️ 胸痛・嘔吐後のは、()を鑑別に入れる。 (嘔吐・胸痛・)が揃うのはまれで、受診時に触知できないことも多い2。触れないことをもって否定しない。

⚠️ 症状に不釣り合いな激しい疼痛を伴うは、を最優先で除外する。 ではとがほぼ常に存在し、外科的介入は早いほど転帰が良い——コンサルトを遅らせてはならない3。一方で、の原因の大半はではないことも同時に踏まえ、外傷歴・気道操作歴・食道症状の有無で急いで絞り込む。

鑑別の進め方

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subcutaneous emphysema'>皮下気腫</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crepitus'>握雪感</span>)を確認"] --> B{"血行動態が不安定か・<br>呼吸窮迫があるか"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tension pneumothorax'>緊張性気胸</span>を臨床診断で疑い<br>画像を待たず減圧"]
    B -->|"いいえ"| D{"症状に不釣り合いな激痛か"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='necrotizing soft tissue infection'>壊死性軟部組織感染症</span>を最優先で除外<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='surgical consultation'>外科コンサルト</span>を急ぐ"]
    D -->|"いいえ"| F{"外傷・気道操作の既往か"}
    F -->|"あり"| G["気胸・気管損傷として評価<br>胸部X線/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>"]
    F -->|"なし・嘔吐/胸痛が先行"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Boerhaave syndrome'>Boerhaave症候群</span>を疑い<br>造影CTへ"]

所見への対応

そのものへの介入は、原因の重症度に応じて分かれる。原因を制御できれば通常10日以内に自然消退するため、軽微で症状の無い例は観察でよい1。高濃度酸素投与は組織中の窒素のを早め、消退を助ける補助的手段になる1。

⚠️ 急速に拡大し胸壁の拡張や気道を圧迫する例では、自体への処置が必要になる。 下の小切開やドレーン留置で皮下腔の圧を下げる方法が用いられるが、これは対症的な減圧であり、原因(気胸・気道損傷・)そのものの治療に代わるものではない1。

まとめ

  • は空気が肺胞・気道・消化管などから漏出しに沿ってを伝って皮下へ広がった所見で、触診のとして気づかれる。
  • 所見自体は多くが良性・自然軽快するが、その存在はより深部の病態(気胸・・)の目印であり、原因側の重症度で評価する。
  • 急速拡大・ならを、嘔吐後の胸痛を伴えばを、症状に不釣り合いな激痛を伴えばを最優先で除外する。
  • 軽微な例は観察・高濃度酸素で経過をみるが、胸壁拡張制限やを伴う急速拡大例では切開・ドレナージによる減圧が必要になりうる。いずれも原因そのものの治療に取って代わるものではない。

出典

  1. 1.Subcutaneous Emphysema(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)皮下気腫が肺胞内・血管周囲間隙の圧較差に沿って空気が筋膜面を伝って頸部・胸部・腹部へ広がる現象であり最も張力の低い皮下腔から順に貯留すること、原因が外傷・気管切開・人工呼吸中のバロトラウマ・食道損傷・気腫性肺胞の自然破裂・喘息発作・分娩時のいきみ・ガス産生菌による壊死性感染など多岐にわたること、最も一般的な所見が触診での握雪感であり顔面・頸部・胸腹部の腫脹、重症例では声帯圧迫による発声変化や眼瞼閉鎖、まれに胸壁の拡張制限や気道圧迫による呼吸・循環虚脱を来しうること、大半は非致死性で自然軽快し高濃度酸素投与が窒素の洗い出しを早めること、原因が制御されれば通常10日以内に消退すること、急速に拡大し胸壁拡張を妨げる例や気管圧迫を伴う例では両側鎖骨下2 cm切開による減圧やドレーン留置が必要になりうること、皮下気腫自体が軽微でも気胸・縦隔気腫・食道穿孔などより深部の病態を示唆しうることを確認した閲覧 2026-08-28
  2. 2.Boerhaave Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)Boerhaave症候群でMackler三徴(嘔吐・胸痛・皮下気腫)が揃うことはまれで受診時に触知できないことが多いこと、皮下気腫は破裂部から縦隔を経て皮下へ空気が広がった結果であることを確認した閲覧 2026-08-28
  3. 3.Necrotizing Fasciitis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)壊死性軟部組織感染症では皮下気腫と握雪感がほぼ常に存在すること、症状に不釣り合いな激しい疼痛が非壊死性感染症より高頻度にみられ皮膚の圧痛が症状に不釣り合いに強いこと、外科的介入が早いほど転帰が良く外科コンサルトを待たせてはならないことを確認した閲覧 2026-08-28