内科学

内科学 · L-18

胸水

Pleural effusion

前提:病態
胸膜・心膜の病理
前提:正常
微小循環とスターリングの力胸部:胸膜と肺
疾患
気管支胸膜瘻胸水再膨張性肺水腫
症状
乾性咳嗽

🧠 全体像:胸水はへの異常な液体貯留である。最初に超音波で量・隔壁・安全な穿刺経路を確認し、原因不明の片側胸水などではを行う。/は単独ではなくで分類し、感染性胸水はpH・画像・膿性状からドレナージ適応を判断する。

成因と主な原因

分類 機序 主な原因
または 心不全、肝硬変、ネフローゼ、
症・透過性亢進、 肺炎・、悪性腫瘍、結核、肺塞栓、自己免疫疾患、膵疾患、外傷
特殊 血液・リンパ・尿など 、、

症状・身体所見

  • 呼吸困難、、。原因疾患の発熱、体重減少、浮腫などを伴う。
  • 患側胸郭運動低下、低下、、。
  • は炎症を示すが、大量胸水の部位では聞こえにくい。
  • 大量胸水は縦隔を対側へ押す。患側へ偏位する場合は・を考える。

画像

検査 役割
胸部X線 、、大量時の
胸部超音波 少量胸水、隔壁、、をベッドサイド評価。処置ガイドの中心
胸部CT 肺実質、・結節、、縦隔、悪性・感染徴候を評価

診断的胸腔穿刺

原因不明の片側胸水、感染・悪性・・疑いなどで行う。明らかな両側心不全性胸水が利尿に反応する場合は、非典型所見がなければ直ちに穿刺しないことがある。

ライト基準

次の1つ以上を満たせばである。

  1. 胸水蛋白/血清蛋白 >0.5
  2. 胸水/血清 >0.6
  3. 胸水が血清の 2/3 を超える

利尿後の心不全性胸水は偽になり得るため、臨床像、、などで補う。「胸水蛋白 >2.9 g/dL」という単独値では分類しない。

⚠️ はの約25%をと誤分類し、その多くが利尿薬使用中である。 提唱者のLight自身が、を来す疾患が臨床的に疑われるのに基準を「わずかな差で」満たす場合には血清−胸水の較差を見るべきだとしている1。利尿薬治療下では、48時間おきにすると胸水蛋白が43%、胸水が67%上昇して偽になる(水分だけが胸腔から抜けるため濃縮される)2。

補助指標 を支持する値 実測の性能
血清−較差 >1.2 g/dL 心不全による857例中が29%を誤分類し、そのうち80.5%を正しくへ戻せた
血清−胸水蛋白較差 >3.1 g/dL 同じ誤分類例の62%をへ戻せた(アルブミン較差より劣る)
胸水 ≥1,500 pg/mL で心不全性を支持 感度94%、特異度91%

出典は上表いずれも同一の総説による2。「で=局所病変」と即断せず、利尿薬を使っているかを必ず確認する。

検体項目

  • 胸水蛋白・と同時採血、pH、ブドウ糖、細胞数・分画。
  • ・好気/、必要に応じへ接種。
  • 細胞診、結核検査、トリグリセリド、、などを病態別に追加。
  • 外観は参考にするが、透明・・だけで原因を確定しない。

肺炎随伴胸水・膿胸

明らかな膿、/培養陽性、胸水pH ≤7.20 はを強く示す。pH 7.21〜7.39でも高値、低ブドウ糖、発熱持続、量が多い、造影CTの胸膜増強、超音波隔壁があればとしてを検討する。抗菌薬に加えを用い、残存には+DNaseやを専門チームで評価する。

💡 pH 7.20は崖ではなく坂である。 胸水pHのドレナージ必要性に対する尤度比は連続的で、pH ≤7.00 で15.80(95%CI 7.04〜35.45)、pH >7.40 で0.13(95%CI 0.04〜0.41)と滑らかに変わる。尤度比は exp[-7.168×(実測pH − 7.207)] という連続式で近似でき、7.20で二値化するより多くの情報が得られる3。pH 7.19と7.21を別物として扱わず、(膿性、隔壁、発熱持続)と合わせて読む。

💡 とDNaseは「併用でのみ」効く。 MIST2試験(210例、2×2要因デザイン)では、+DNase併用が7日目の胸水陰影を有意に縮小し(−29.5%対−17.2%、差−7.9%、95%CI −13.4〜−2.4、P=0.005)、3か月時の外科紹介率を16%から4%へ(0.17、95%CI 0.03〜0.87)下げ、入院期間を6.7日短縮した。一方 単独・DNase単独はいずれもと差がなく、DNase単独はむしろ外科紹介率を上げた(3.56、95%CI 1.30〜9.75)4。片方だけを入れる選択肢は無い。

安全な胸腔穿刺

  • 原則としてに行い、血管束を避けてから穿刺する。
  • を400〜500 mLに固定しない。症状と圧変化を見ながら緩徐にし、胸痛、持続する咳、呼吸困難、低血圧が出れば中止する5。
  • 一般に1回1.5 L程度を上限の目安とし、急速・無制限によるを避ける。やによる急速は避け、手動またはで引く5。

原因別治療

flowchart TD
    A["胸水を超音波で確認"] --> B["原因・穿刺適応を判断"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thoracocentesis'>胸腔穿刺</span>+<span class='jp-term jp-term-diagram' title='light&#39;s criteria'>ライト基準</span>"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transudate'>漏出性</span>:全身原因を治療"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='exudate'>滲出性</span>:感染・悪性・TBなどを検索"]
    E --> F["ドレナージ・生検・IPCを病態別に選択"]

心不全では利尿と基礎治療、感染では抗菌薬+適切なドレナージ、では肺再膨張性・予後・患者希望に応じまたはを選ぶ。細胞診陰性でもが高ければまたはを検討する。

まとめ

  • /は単独でなくで判定する。ただしの約25%(多くは利尿薬使用中)がと誤分類されるので、アルブミン較差 >1.2 g/dL・で補正する。
  • 超音波は少量胸水の検出と安全な穿刺・ドレナージの中心である。
  • 感染性胸水はpH、膿・培養、画像を統合し、必要なら抗菌薬だけでなく早期する。pH 7.20は連続的な尤度比の目安で、線維素溶解は+DNaseの併用でのみ有効である。

関連ノート

出典

  1. 1.The Light criteria: the beginning and why they are useful 40 years later(Clinics in Chest Medicine・2013)ライト基準は漏出性と滲出性を分ける出発点として有用だが、漏出性のおよそ25%を滲出性と誤分類し、その多くが利尿薬使用中の患者であること、漏出性を来す疾患が疑われるのにライト基準がわずかな差で滲出性を示す場合は血清−胸水の蛋白較差を確認すべきことを確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Cardiac related pleural effusions: a narrative review(Journal of Thoracic Disease・2024)利尿薬治療下では48時間ごとの胸腔穿刺で胸水蛋白が43%、胸水LDHが67%上昇して偽滲出性を生むこと、血清−胸水アルブミン較差 1.2 g/dL超または血清−胸水蛋白較差 3.1 g/dL超なら漏出性へ再分類できること、心不全による漏出性胸水857例のうちライト基準が29%を誤分類し、そのうち80.5%がアルブミン較差で正しく漏出性と判定できた(蛋白較差では62%)こと、胸水NT-proBNP 1,500 pg/mL以上は心不全性胸水に対し感度94%・特異度91%であることを全文で確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.Multilevel and continuous pleural fluid pH likelihood ratios for draining parapneumonic effusions(Respiration・2005)胸水pHのドレナージ必要性に対する尤度比は連続的で、pH 7.00以下で15.80(95%CI 7.04〜35.45)、pH 7.40超で0.13(95%CI 0.04〜0.41)であり、pHの尤度比が exp[-7.168×(実測pH − 7.207)] という連続式で表せること、連続尤度比が二値化(7.20を境にする)より統計的にも臨床的にも多くの情報を与えることを確認した。閲覧 2026-08-25
  4. 4.Intrapleural use of tissue plasminogen activator and DNase in pleural infection(New England Journal of Medicine・2011)MIST2試験。胸腔内tPA+DNase併用は7日目の胸水陰影を有意に縮小し(−29.5%対プラセボ−17.2%、差−7.9%、95%CI −13.4〜−2.4、P=0.005)、3か月時の外科紹介率を16%から4%へ(オッズ比0.17)、入院期間を6.7日短縮した一方、tPA単独・DNase単独はいずれもプラセボと差がなく、DNase単独はむしろ外科紹介率を上げた(オッズ比3.56)ことを確認した。閲覧 2026-08-25
  5. 5.British Thoracic Society Clinical Statement on pleural procedures(British Thoracic Society・2023)治療的胸腔穿刺では排液量を400〜500 mLに固定せず、壁吸引・真空ボトルによる急速排液を避けて手動または重力で緩徐に排液すること、胸部圧迫感・胸痛・持続する咳・呼吸困難が出現すればそれより少量でも直ちに中止すること、1回1.5 L程度を実務上の安全域の目安とするが固定的な絶対上限ではないことを確認した。閲覧 2026-08-11