内科学

内科学 · L-17

肺炎

Pneumonia

前提:病態
下気道感染を起こす細菌(一覧)とその診断非定型肺炎を起こす起因体とその診断
疾患
器質化肺炎市中肺炎薬剤性肺障害

🧠 全体像:肺炎は肺胞・・間質の感染性炎症で、診断は急性呼吸器症状と新規を統合する。診療では感染場所、重症度、ウイルス検査、リスク、を整理し、培養採取を必要な症例に絞って、地域の耐性状況に合うを遅らせない。

分類

分類 定義・主な特徴
医療施設外で発症。肺炎球菌、インフルエンザ、SARS-CoV-2、H. influenzae、Mycoplasmaなど
入院48時間以降に発症し、入院時に潜伏していなかった肺炎
48時間以降に発症
肺炎 好中球減少、移植、、などで病原体範囲とが異なる

「典型/非典型」は症状や画像だけで病原体を正確に分けられないため、抗菌薬選択をこのだけで決めない。放射線・薬剤性のとも区別する。

⚠️ 「医療ケア関連肺炎(HCAP)」という分類は2019年に廃止された。 2005年の/ガイドラインは、介護施設入所、過去90日以内の2日以上の入院、在宅、透析、在宅創傷ケア、家族の耐性菌保菌などを持つ患者をHCAPとしての対象にしていた。しかしその後の研究で、これらの因子は多くの環境で耐性菌の高い保有率を予測せず、バンコマイシンやの過剰使用だけが増えることが示された。/ 2019年版はHCAPという分類を抗菌薬選択の根拠に使うことを強い推奨で廃止し、・緑膿菌の経験的カバーは「地域で検証されたリスク因子がある場合に限る」へ置き換えた1。旧教科書にはまだHCAPが載っているので、名前を見たら「廃止された枠組み」と判断する。

臨床像

  • 発熱、悪寒、咳、、呼吸困難、、頻呼吸。
  • 高齢者・免疫不全では発熱やが乏しく、食欲低下、転倒、せん妄のみのことがある。
  • 低酸素血症、低血圧、意識変容、呼吸数増加、乏尿、乳酸上昇は重症化の徴候である。

診断

flowchart TD
    A["急性咳・発熱・呼吸困難"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vital sign'>バイタルサイン</span>・SpO₂・診察"]
    B --> C["胸部X線または熟練者による<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lung ultrasound'>肺超音波</span>"]
    C --> D{"新規浸潤影と臨床像が整合?"}
    D -->|"はい"| E["CAP/HAP・重症度・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='resistance risk'>耐性リスク</span>評価"]
    D -->|"不明"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography'>CT</span>または<span class='jp-term jp-term-diagram' title='alternative diagnosis'>代替診断</span>を検討"]
    E --> G["必要な培養・ウイルス検査後に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='empiric therapy'>経験的治療</span>"]
  • 胸部X線は、、間質影、胸水を評価する。適切な技能がある施設ではも診断代替となる。
  • はX線陰性でも疑いが強い、閉塞・膿瘍・塞栓・腫瘍を疑う、反応不良・再発時に用いる。
  • 血液培養・は重症CAP、/緑膿菌リスク、経験的を使用する症例などで優先する。
  • でインフルエンザ、SARS-CoV-2、その他を評価する。重症・疫学に応じ尿中肺炎球菌/抗原を追加する。
  • 低値だけで、画像上CAPがある患者の初期抗菌薬を一律中止しない。/ 2019年版は、臨床的に疑われ画像で確認されたCAPでは初回値によらず経験的抗菌薬を開始することを強い推奨としている。入院CAPではウイルス性と細菌性を判別できる閾値が同定できなかった1。

重症度と治療場所

は混乱、尿素 >7 mmol/L、呼吸数 ≥30/分、低血圧(収縮期 <90 mmHg または拡張期 ≤60 mmHg)、65歳以上を各1点とする簡便なリスク指標である。導出研究では30日死亡率が0点で0.7%、1点で3.2%、2点で3%、3点で17%、4点で41.5%、5点で57%と層別された2。ただし年齢の影響が大きく、治療場所は、臓器障害、社会背景を含め判断する。入院適応の判断にはよりも()を優先するのが/ 2019年版の推奨で1、判断にはを要するショック、人工呼吸を要する呼吸不全などの重症CAP基準を用いる。

💡 は「軽症を家に帰してよいか」に強く、は「重症を見落とさないか」に強い。 は5項目で暗算でき救急外来の初期判断に向くが、若年で併存症の重い患者を低リスクに見せる。は年齢・併存症・を含む20項目で低リスク群の同定精度が高い代わりに手計算では回らない。どちらのスコアも「に入れるか」の判断には設計されていない。

CAPの経験的抗菌薬

場面 代表的な考え方
外来・併存症なし アモキシシリンまたはドキシサイクリン。マクロライド単剤は地域の肺炎球菌耐性が低い場合のみ
外来・併存症あり アモキシシリン/または一部+マクロライド/ドキシサイクリン、または呼吸器キノロン単剤
入院・非重症 βラクタム+マクロライド、または呼吸器キノロン
入院・重症 βラクタム+マクロライド、またはβラクタム+呼吸器キノロン3

・用量は腎肝機能、アレルギー、QT、薬物相互作用、地域に合わせる。過去の/緑膿菌分離や最近の入院・など、のあるリスクがある場合のみ経験的カバーを追加し、培養で早期する。HAP/VAPは別の院内耐性菌プロトコルに従う。

ウイルス陽性・治療期間・ステロイド

  • インフルエンザでは入院・重症・高リスク例になどを早期投与し、発症48時間を超えていても治療する。
  • 2025年更新では、併存症のない外来CAPでウイルス陽性なら、臨床・画像とリスクを踏まえ経験的抗菌薬を行わない選択を条件付きで提示する4。一方、重症例や細菌感染を否定できない入院例では安易に省略しない。
  • (体温、脈拍、呼吸、血圧、酸素化、摂食、意識)を確認し、非重症で3日以内に改善する外来例は最短3日を含む短期治療を検討できる。重症、合併症、特定病原体では延長する。
  • 全身ステロイドは非重症入院CAPにルーチン投与しない。重症CAPでは利益・害を評価して条件付きで検討し、難治性など他適応は別に扱う5。

⚠️ このウイルス陽性CAPの推奨は学会間で決着していない。 はの2025年更新を承認せず、10推奨のうち2件——併存症のある外来のウイルス陽性例と、非重症入院のウイルス陽性例に一律で抗菌薬を投与するという推奨——に不同意を表明した6。「/ガイドライン」と一括りにできるのは2019年版までで、2025年更新は単独の文書である。

⚠️ 重症CAPのステロイドは2023年のCAPE COD試験で立場が変わった。 / 2019年版はCAPへの全身ステロイドを「用いないことを推奨」し、難治性に限って考慮するとしていた1。入室を要する重症CAP 795例のCAPE COD試験では、200 mg/日の早期投与が28日死亡を11.9%から6.2%へ(絶対差−5.6ポイント、95%CI −9.6〜−1.7、P=0.006)下げ、挿管(29.5%→18.0%)と導入(25.0%→15.3%)も減らした7。これを受けてSCCMの2024年更新は重症CAPへのステロイドを推奨に転じたが、薬剤・用量・期間は一律に特定できないとしている5。非重症CAPとインフルエンザ肺炎は対象外である。

合併症と反応不良

・、、、敗血症、心血管イベントを監視する。48〜72時間で改善しなければ、耐性・、誤嚥、閉塞性腫瘍、結核、PE、心不全、、、を再評価する。

まとめ

  • 肺炎は症状と新規浸潤影で診断し、感染場所・重症度・を分けて考える。
  • 抗菌薬は地域耐性と宿主背景に合わせ、と臨床反応で狭域化・短期化する。
  • ウイルス陽性でもリスクを評価し、ステロイドは非重症CAPへルーチン投与しない(重症CAPではCAPE COD以降、推奨に転じた)。
  • HCAPという分類は2019年に廃止され、・緑膿菌のカバーは地域で検証されたリスク因子でのみ判断する。

関連ノート

出典

  1. 1.Diagnosis and Treatment of Adults with Community-acquired Pneumonia. An Official Clinical Practice Guideline of the American Thoracic Society and Infectious Diseases Society of America(American Thoracic Society / Infectious Diseases Society of America・2019)医療ケア関連肺炎(HCAP)という分類の使用を強い推奨で廃止し、MRSA・緑膿菌の経験的カバーは地域で検証されたリスク因子がある場合に限ると定めたこと、画像で確認されたCAPでは初回血清プロカルシトニン値によらず経験的抗菌薬を開始すべきこと(強い推奨)、入院適応の判断にはCURB-65よりも肺炎重症度指数(PSI)を優先すること、マクロライド単剤の外来推奨が2007年版の強い推奨から耐性率に応じた条件付き推奨へ格下げされたこと、全身ステロイドのルーチン使用を推奨せず難治性敗血症性ショックでのみ考慮することを全文で確認した。閲覧 2026-08-25
  2. 2.Defining community acquired pneumonia severity on presentation to hospital: an international derivation and validation study(Thorax・2003)CURB-65の導出研究。混乱・尿素7 mmol/L超・呼吸数30/分以上・収縮期血圧90 mmHg未満または拡張期血圧60 mmHg以下・65歳以上を各1点とする6段階スコアで、30日死亡率が0点0.7%、1点3.2%、2点3%、3点17%、4点41.5%、5点57%と層別されたことを確認した。閲覧 2026-08-25
  3. 3.ERS/ESICM/ESCMID/ALAT guidelines for the management of severe community-acquired pneumonia(European Respiratory Society / European Society of Intensive Care Medicine / European Society of Clinical Microbiology and Infectious Diseases / Latin American Thoracic Association・2023)重症CAPの診断、経験的抗菌薬、臓器支持、補助療法に関する欧州の推奨を確認した。閲覧 2026-08-20
  4. 4.Diagnosis and Management of Community-acquired Pneumonia: An Official American Thoracic Society Clinical Practice Guideline(American Thoracic Society・2026)ウイルス陽性CAPへの経験的抗菌薬(併存症なし外来は非投与、併存症あり外来・入院は投与)、重症CAPへの全身性ステロイド(インフルエンザ肺炎を除く)、非重症例の抗菌薬期間(最低3日を確保した5日未満)を確認した。閲覧 2026-08-03
  5. 5.2024 Focused Update: Guidelines on Use of Corticosteroids in Sepsis, Acute Respiratory Distress Syndrome, and Community-Acquired Pneumonia(Society of Critical Care Medicine・2024)入院を要する重症CAPへの全身性ステロイドを推奨する一方、薬剤・用量・期間は一律に特定できないことを確認した。閲覧 2026-08-20
  6. 6.Infectious Diseases Society of America (IDSA) Position Statement: Why IDSA Did Not Endorse the Community-Acquired Pneumonia Guidelines 2025 Update(Infectious Diseases Society of America・2026)IDSAがATS 2025更新の10推奨中2件(併存症あり外来のウイルス陽性例、非重症入院のウイルス陽性例への一律抗菌薬投与)に不同意で承認を保留したことを確認した。閲覧 2026-08-03
  7. 7.Hydrocortisone in Severe Community-Acquired Pneumonia(New England Journal of Medicine・2023)CAPE COD試験。ICU入室を要する重症CAP 795例で、ヒドロコルチゾン200 mg/日の早期投与が28日死亡を11.9%から6.2%へ下げ(絶対差−5.6ポイント、95%CI −9.6〜−1.7、P=0.006)、挿管(29.5%→18.0%、HR 0.59)と昇圧薬導入(25.0%→15.3%、HR 0.59)も減らしたことを確認した。閲覧 2026-08-25