微生物学

微生物学 · 5/34

非定型肺炎を起こす起因体とその診断

Causative agents causing atypical pneumonia and their diagnosis

応用トピック
肺炎肺炎、年齢別の主要原因菌肺炎
微生物
Legionella pneumophilaMycoplasma pneumoniaeRespiratory syncytial virus

🧠 「非定型肺炎」という名前は、典型的な肺炎球菌性肺炎と違い、喀痰を伴わないで発症し、グラム染色や通常培養で原因菌を捉えにくいことに由来する。 喀痰が使えない以上、血液・尿・などの検体からの血清学的検査(・)が診断の中心になる。

非定型肺炎の原因体

病原体 分類 特記事項
Coxiella burnetii 細菌() の原因体。培養には施設を要し日常診断には用いない1
Mycoplasma pneumoniae 細菌(細胞壁を欠く) 別名Eaton agent。率は地域差が大きく、欧州・米国0〜15%に対しアジアでは90〜100%に達する2
Chlamydia pneumoniae / C. psittaci 細菌() かつてChlamydophila pneumoniaeと呼ばれたが、分類学的にChlamydophila属とChlamydiaを一貫して区別できないため単一属Chlamydiaへ戻された3
Legionella pneumophila 細菌(細胞内寄生) は血清群1しか検出できない(北米の症例の約80〜90%を占めるが、他血清群・他菌種は見逃されうる)4
RSV(respiratory syncytial virus, RSウイルス、3/28) ウイルス 乳児における非定型肺炎の最頻原因(#1)

治療

  • マクロライド系・キノロン系が主体(細胞壁を欠く病原体・に対する薬剤選択の合理性は1/19・1/20を参照)。

検体採取

  • 血液
  • 尿
  • 液
  • 液(挿管患者の場合)
  • 副鼻腔穿刺液

⚠️ 喀痰は使用できない。 非定型肺炎の咳嗽はであり、培養に足る喀痰そのものが得られないため。

診断:血清学的手法

  • ELISA、(immunofluorescence assay, )を用いて原因体を同定する。

まとめ

  • 非定型肺炎は喀痰を伴わないで発症するため、ではなく血液・尿・などからの血清学的検査が診断の中心になる。
  • 代表的な原因体はCoxiella burnetii(培養に施設を要する)・Mycoplasma pneumoniae(Eaton agent、率に地域差)・Chlamydia pneumoniae/psittaci(かつてChlamydophila属とされた)・Legionella pneumophila(尿中抗原は血清群1のみ検出)の細菌群と、乳児で最頻のRSウイルス。
  • 治療の第一選択はマクロライド系・。
  • 診断は・による血清学的検査が中心となる。

出典

  1. 1.Diagnosis and management of Q fever--United States, 2013: recommendations from CDC and the Q Fever Working Group(Centers for Disease Control and Prevention / MMWR Recommendations and Reports・2013)Coxiella burnetiiの培養はBSL-3施設を要するため日常診断には推奨されない。慢性Q熱の治療はドキシサイクリン+ヒドロキシクロロキンの長期併用(心内膜炎で18〜24か月以上)を要し、急性Q熱の非定型肺炎とは管理が大きく異なる。閲覧 2026-08-26
  2. 2.Mycoplasma pneumoniae: Current Knowledge on Macrolide Resistance and Treatment(Frontiers in Microbiology・2016)マクロライド耐性 Mycoplasma pneumoniae は15年かけて世界的に拡大し、有病率は欧州・米国で0〜15%、イスラエルで約30%、アジアでは90〜100%に達する。耐性は23S rRNAの点突然変異による高度耐性で、発熱・咳嗽の遷延や入院期間の延長を伴うため、テトラサイクリン系やレボフロキサシンへの変更を要することがある。閲覧 2026-08-26
  3. 3.Emendation of the family Chlamydiaceae: proposal of a single genus, Chlamydia, to include all currently recognized species(Systematic and Applied Microbiology・2015)16S rRNAの相同性カットオフでもゲノム類似度でもChlamydiaとChlamydophilaの2属を一貫して分けられず、宿主嗜好性・組織指向性のような表現型上の区別も無いため、Chlamydiaceae科の全菌種を単一属Chlamydiaに戻すことが提案された(Chlamydophila pneumoniae → Chlamydia pneumoniae)。閲覧 2026-08-26
  4. 4.Pneumococcal and Legionella Urinary Antigen Tests in Community-acquired Pneumonia: Prospective Evaluation of Indications for Testing(Clinical Infectious Diseases・2019)レジオネラ尿中抗原検査が検出する可溶性抗原はLegionella pneumophila血清群1に限られる。この血清群は北米における既知のレジオネラ症の約80〜90%を占めるが、他の血清群・他菌種(L. longbeachaeなど)による感染は同検査で検出できない。閲覧 2026-08-26