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Drug Atlas · B7 Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体 · 必修

セレキシパグ

selexipag

分類
Prostacyclin analogs / プロスタサイクリン誘導体
商品名(日本)
ウプトラビ
科目
Pharmacology
トピック
B7: Ca++-channel blockers and other vasodilators
承認適応
肺高血圧症
禁忌疾患
肝硬変
副作用
低血圧頭痛顔面紅潮網膜出血
相互作用
ゲムフィブロジル
対象疾患
慢性血栓塞栓性肺高血圧症

🧠 全体像は「」に分類されるが、とは化学構造がまったく違う。これらがそのものをした構造の薬であるのに対し、構造でIP受容体だけを選択的に刺激するよう設計されたであり、しかもとして体内でに変換されて効く。この「別の化学骨格でIP受容体を狙う」という発想のおかげでだけで薬効を発揮でき、加えて他のにはないへの適応も持つ。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 化学構造 PAH以外の適応
(内因性物質そのもの) 持続静注のみ なし
類似薬 静注・皮下注・吸入 はPH-ILDにも承認
選択的IP受容体作動薬 経口のみ CTEPH不適応・術後残存/再発)1

」から「IP受容体だけを狙う低分子」への発想転換が、という利便性を生んだ。 はいずれも骨格を保っているため代謝が速く非が基本になるのに対し、は全く異なる化学骨格を持つため経口で安定したを実現できる。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='selexipag'>セレキシパグ</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='prodrugs'>プロドラッグ</span>)を経口摂取"] --> B["肝臓で加水分解され<span class='jp-term jp-term-diagram' title='active metabolite'>活性代謝物</span>MRE-269に変換"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>・血小板のIP受容体を選択的に刺激"]
    C --> D["Gs蛋白質を介し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>を活性化"]
    D --> E["細胞内cAMPが増加"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle relaxation'>血管平滑筋弛緩</span>→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>低下"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='platelet aggregation'>血小板凝集</span>の抑制"]

💡 「選択的」というは副作用の質を変えるところまでは至っていない。 IP受容体だけを狙うことで他の受容体(EP・FP・TPなど)を介した副作用を減らす狙いだったが、実際に生じる副作用(頭痛・下痢・悪心・顎部の不快感・など)はなど他のと質的にはよく似ている。これはIP受容体そのものを刺激すれば全身の血管・消化管平滑筋で同様の反応が起こるためで、「選択性」が効くのは受容体レベルの話であり、の副作用プロファイルまでは変えられないことを示す好例になっている。

適応

領域 使いどころ
(第1群PAH) 。GRIPHON試験で死亡・PAH増悪などのを有意に減少させた2は高リスク例の治療の柱であり、である本剤は低〜例でなどのERAとする治療強化の選択肢になる3
(第4群CTEPH) 不適応、または後に残存・再発した1

の中でCTEPHの適応を持つのはの特徴。 (sGC刺激薬)も同じくCTEPHに承認されているが、ではにCTEPHの承認はなく、だけがこの適応を持つ1

用法・用量

成人は通常として1回0.2mgを1日2回、食後から開始する。7日以上の間隔をあけて1回量として0.2mgずつ、患者ごとに可能な最大用量()まで増量する——最大用量は1回1.6mgである1

⚠️ まで増量する」という漸増方針が、他のPAHとの大きな違い。 多くのが体重や適応症で決まったに収束するのに対し、は患者ごとに副作用(頭痛・悪心・下痢・顎痛など)が許容できる範囲で個別に用量を最適化する設計になっている。実際の増量ペース・最終用量は・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:本剤成分に対する過敏症の既往、重度の肝障害、を有する1
  • ⚠️ が疑われる患者では、を含む)のにより肺水腫を誘発しうるため禁忌とされる。 これはに共通する注意点である
  • 血管拡張・の両方の作用を持つため、中の患者では出血リスクに注意する
  • 増量段階で低血圧・が生じやすく、血圧のモニタリングを行いながら漸増する

副作用

頻度 内容
高頻度 頭痛、悪心・下痢などの消化器症状、顎部の不快感、(他のと共通する症状群)
重大な副作用 低血圧(3.6%)、(0.7%)、(1.6%)、(0.3%)、甲状腺機能異常1

まとめ

  • に分類されるが、化学構造は非の選択的IP受容体作動薬。としてMRE-269に変換されて効く。
  • のみで薬効を発揮でき、のような非を必要としない。ただし副作用の質(頭痛・下痢・顎部不快感・)は他のとよく似ている——IP受容体刺激そのものが原因のため。
  • GRIPHON試験で死亡・PAH増悪などのを40%減少させた2
  • の中で唯一CTEPHの適応を持つ(不適応・術後残存/再発例)。
  • 用法・用量は患者ごとに可能なまで個別に漸増する点が他の経口PAH薬と異なる。
  • 禁忌は重度肝障害と。低血圧・に注意する。

出典

  1. 1.ウプトラビ錠0.2mg/0.4mg 添付文書(2026年2月改訂・第6版)(日本新薬株式会社(医薬品医療機器総合機構 掲載)・2026)効能・効果(肺動脈性肺高血圧症、および外科的治療不適応または治療後に残存・再発した慢性血栓塞栓性肺高血圧症〈CTEPH〉)、用法・用量(成人は1回0.2mgを1日2回食後投与から開始し、7日以上の間隔で1回量として0.2mgずつ最大耐用量まで増量、最大1回1.6mg)、禁忌(成分過敏症、重度の肝障害、肺静脈閉塞性疾患を有する肺高血圧症)、重大な副作用(低血圧3.6%、起立性低血圧0.7%、鼻出血1.6%、網膜出血0.3%、甲状腺機能異常)を確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Selexipag for the Treatment of Pulmonary Arterial Hypertension (GRIPHON trial)(Sitbon O, et al.; New England Journal of Medicine・2015)PAH患者1,156例を対象とした無作為化プラセボ対照試験(平均観察期間約1.5年)で、セレキシパグ群はプラセボ群と比べ死亡・PAH増悪などの複合エンドポイント(morbidity/mortality)の初発イベントリスクを40%減少させた(ハザード比0.60)ことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.2022 ESC/ERS Guidelines for the diagnosis and treatment of pulmonary hypertension(European Society of Cardiology / European Respiratory Society・2022)プロスタサイクリン経路薬が高リスクPAHの治療に組み込まれる代表的な薬剤群であり、経口薬は低〜中リスク例での治療強化の選択肢になることを確認した閲覧 2026-08-10