薬剤ノート一覧へ

Drug Atlas · B4 Cardiac glycosides & inotropes / 強心薬 · 必修

ミルリノン

milrinone

分類
Cardiac glycosides & inotropes / 強心薬
商品名(日本)
ミルリーラ
商品名(EU)
Corotrope
科目
Pharmacology
トピック
B4: Positive inotropic drugs
禁忌疾患
肥大型心筋症
副作用
頭痛低血圧
原因となる疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

🧠 全体像(PDE-3)を阻害してcAMPを増やすで、β受容体を経由せずにcAMP↑を実現するという一点がとの決定的な違い。心筋との両方でcAMPが増えるため、強心作用とを同時に持つ「」になる。β受容体がしている、あるいはβ遮断薬でブロックされている心不全患者でも効果を発揮できる点が臨床上の存在意義。

薬効群の中での位置づけ

区分 代表薬 標的 Caを上げる仕組み 使用場面
ジゴキシン Na/K-ATPase Na/K-ATPase阻害→細胞内Na↑→が逆転→Ca↑ ・AF(経口・慢性)
(参考) β1受容体 Gs→↑→cAMP↑→PKA↑ (静注・短期)
③PDE-3阻害薬 cAMP分解を阻害→cAMP↑→PKA↑ (静注・短期、強心血管拡張)
のCa感受性を直接↑(細胞内Ca自体は増やさない) (静注・短期、強心血管拡張)

は受容体を「刺激して」cAMPを増やし、は分解酵素を「止めて」cAMPを増やす。 出発点は違っても同じ(cAMP)に収束するため、作用のプロファイル(強心・頻脈・血管拡張)は似通う。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='milrinone'>ミルリノン</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='phosphodiesterase 3 (PDE3)'>ホスホジエステラーゼ3</span>(PDE-3)を阻害"] --> B["cAMPの分解が抑制され細胞内cAMP濃度が上昇"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiomyocyte (cardiac myocyte)'>心筋細胞</span>:PKA活性化→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='L-type calcium channel'>L型Caチャネル</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='open probability, Po'>開口確率</span>↑・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sarcoplasmic reticulum'>筋小胞体</span>からのCa放出↑"]
    C --> D["収縮力↑(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='positive inotropic effect'>陽性変力作用</span>)"]
    B --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular smooth muscle'>血管平滑筋</span>:PKA活性化→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin light chain kinase (MLCK)'>ミオシン軽鎖キナーゼ</span>活性↓"]
    E --> F["平滑筋弛緩→全身・肺血管の拡張"]
    D --> G["強心+血管拡張=「<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inodilator'>強心血管拡張薬</span>」"]
    F --> G

💡 を下げる作用が実務上の強み。 心臓手術後のや右心不全・肺高血圧を伴う病態では、(特に)の軽減がそのままになるため、作用を持たないよりが選ばれる場面がある。

薬物動態

項目 値・特徴
のみ
代謝 ほとんど代謝を受けない
排泄 が主体(未変化体)。腎機能低下でが要る
半減期 約2〜3時間(腎機能低下でさらに延長)
発現 静注後、数分〜十数分で血行動態への効果が現れる

適応

領域 使いどころ
循環器 の短期治療、特ににβ遮断薬を服用している患者や上昇を伴う病態
周術期 心臓手術後の

用法・用量

負荷投与に続けてを行う(血圧低下が懸念される場合は負荷投与を省略することもある)。腎機能に応じて速度を調整する。実際の用量は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:閉塞性と血管拡張でが増悪しうる)
  • ⚠️ での長期・経口使用は死亡率を上げることが示されており()、急性期の短期静注に限定する
  • 腎機能低下では半減期が延長するためが必要
  • 高度の低血圧ではがさらなる血圧低下を招くため慎重に導入する

副作用

頻度 内容
高頻度 低血圧頭痛
注意 頻脈、
重篤・まれ 、血小板減少(PDE-3阻害薬のクラス効果として報告される)、重度低血圧によるショックの増悪

まとめ

  • PDE-3阻害薬。cAMPの分解を止めてcAMPを増やす点で)とゴールを共有するが、β受容体を経由しない。
  • 心筋のの弛緩を同時に起こす「」で、低下が実務上の強み。
  • β遮断薬服用中の心不全患者でも効果が期待できる。
  • ・半減期2〜3時間。腎機能低下で蓄積しが要る。
  • 長期・経口使用は死亡率を上げるため、の短期静注に限定する。
  • は禁忌。高頻度副作用は低血圧・頭痛。