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Drug Atlas · B30 Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤 · 必修

ヘプタバレント抗毒素(BAT)

heptavalent botulinum antitoxin

分類
Biologics & immunomodulators / 生物学的製剤
商品名(EU)
BAT
科目
Pharmacology
トピック
B30: Immunopharmacology III (Antibodies and fusion proteins)
承認適応
ボツリヌス症
標的微生物
Clostridium botulinum
副作用
発熱皮疹関節痛血圧低下

🧠 全体像は、BabyBIGの対になる薬——1歳以上の全般に使う、ウマ由来の広域である。BabyBIGがである代わりに血清型をA・B型のみに絞った専用設計だったのに対し、BATはA〜G型全ての血清型をカバーする広域さを優先し、その代償として蛋白(ウマ血清)由来の過敏反応・のリスクを負う。この2剤の使い分けを決めるのは重症度ではなく「1歳未満のかどうか」という一点であり、成人の食餌性・創傷性、乳児以外の腸管定着型(成人症)まで、乳児型以外のほぼ全てのでBATが第一選択になる。

薬効群の中での位置づけ

由来 カバーする血清型 対象年齢
ウマ(免疫した馬由来の抗体断片、F(ab’)₂・Fab) A〜G型全て 1歳以上(以外の全年齢)
BabyBIG ヒト(免疫したドナー血漿由来のIgG) A型・B型のみ 1歳未満の

「カバーする血清型の広さ」と「安全性」はの関係にある。 BATは全血清型(A〜G)をカバーする広域さが最大の利点だが、蛋白による過敏反応・のリスクを伴う。はA型・B型がほぼ全てを占めるため、BabyBIGはこの広域さを犠牲にしての安全性を取った専用設計といえる——BATはその逆で、乳児以外では過敏反応リスクより血清型カバーの広さが優先される。

機序

flowchart TD
    A["BAT(ウマ由来抗A〜G型抗体断片)を静注"] --> B["血流中の未結合<span class='jp-term jp-term-diagram' title='botulinum toxin'>ボツリヌス毒素</span>と結合し中和"]
    B --> C["毒素が末梢神経終末のアセチルコリン放出装置へ<br>結合するのを防ぐ"]
    C --> D["新たな<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuromuscular junction (NMJ)'>神経筋接合部</span>の障害を阻止"]
    E["既に神経終末に結合・侵入した毒素"] --> F["中和されず、既存の麻痺は回復しない"]
    F --> G["新しいシナプス(発芽)形成を待つしかない"]
    H["ウマ由来の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heterologous'>異種</span>蛋白"] -.->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='immunogenicity'>免疫原性</span>が高い"| I["過敏反応・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='serum sickness'>血清病</span>のリスク"]

💡 中和できるのは循環血中の未結合毒素だけ、というはBabyBIGと共通する。 既に神経終末に取り込まれた毒素には無効であり、麻痺自体の回復は新しいシナプス形成を待つほかない。BATに固有なのは「中和」そのものの機序ではなく、抗体の由来(ウマ)が引き起こす——この一点が過敏反応・のリスクとして現れる。

適応

領域 使いどころ
感染症・救急 血清型A〜G型のいずれかへの曝露が確認または疑われる、1歳以上の症候性(食餌性・創傷性・成人腸管定着型など、以外の全病型)1

確定診断()を待たずに、臨床診断のみで投与を開始してよい。 は循環血中の未結合毒素にしか効かないため、投与が早いほど神経終末への新たな毒素結合を防げる。米国の登録研究では、症状発現から2日以内の投与群は2日超の群に比べ在院日数・ICU滞在・人工呼吸期間が明確に短かった2

用法・用量

1:10に希釈した上で緩徐にする。成人(17歳以上)は1バイアルを0.5 mL/分で開始し、を確認しながら最大2 mL/分まで漸増する。小児(1〜17歳未満)はSalisbury Ruleに基づき体重換算で成人量の20〜100%とし、乳児(1歳未満、以外の病型に限る)は成人量の10%とする1米国ではは連邦政府から緊急・無償で提供され、州・地域のとCDCへの緊急連絡を通じて入手する——通常の医薬品卸を介さないになっている3。実際の投与手順は最新の添付文書・地域のプロトコルに従う。

禁忌・注意

  • はない(添付文書の禁忌欄は「該当なし」)が、ウマ由来製剤・ウマ血清への重篤な過敏反応の既往、ウマアレルギー、喘息、などがある患者ではリスクとを慎重に評価する1
  • は設定されていない。 下記のアナフィラキシー・はいずれも「および使用上の注意」の項目であり、ではない1
  • ⚠️ アナフィラキシー・重篤な過敏反応のリスク。 投与開始後30分以内に生じることが多く、投与中は十分なモニタリングを要する
  • ⚠️ (発熱・蕁麻疹様/・筋痛・関節痛)が投与10〜21日後に遅発性に出現しうる1
  • ⚠️ にBATを代用しない。 蛋白によるアナフィラキシー・のリスクが乳児ではBabyBIGより高い。ただし乳児でも食餌性・創傷性など以外の病型ではBATが選択される

副作用

頻度 内容
即時型 血圧低下・アナフィラキシー(投与開始30分以内)
発熱皮疹(蕁麻疹様/)、筋痛、関節痛(投与10〜21日後)1
試験での実証 米国登録研究ではBAT関連の重篤な有害事象は162例中7例(4.3%)2

まとめ

  • BATはウマ由来の抗A〜G型ボツリヌスで、1歳以上の全般以外)に使う広域である。
  • 対になるBabyBIG、A・B型のみ、1歳未満専用)とは「1歳未満のかどうか」で使い分ける——広域カバーとの安全性はの関係にある。
  • 機序は循環血中の未結合毒素の中和にとどまり、既に神経終末に結合した毒素・既存の麻痺には無効。新しいシナプス形成を待つ支持療法が予後を左右する点はBabyBIGと共通。
  • 米国の登録研究では、症状発現から2日以内の早期投与が在院日数・ICU滞在・人工呼吸期間の明確な短縮と関連していた。
  • はないが、アナフィラキシー(即時型)と(投与10〜21日後の)に注意する。米国では連邦政府・州を通じた緊急供給がある。

出典

  1. 1.BAT [Botulism Antitoxin Heptavalent (A, B, C, D, E, F, G) – (Equine)] — Prescribing Information(Emergent BioSolutions Canada Inc. / U.S. Food and Drug Administration (DailyMed)・2024)適応(血清型A〜G全てへの曝露が確認または疑われる症候性ボツリヌス症、成人・小児)、用量(成人は1バイアルを0.5→最大2 mL/分で静注、小児はSalisbury Ruleに基づく体重換算で成人量の20〜100%、乳児は成人量の10%)、禁忌欄が「該当なし」であること、過敏反応・アナフィラキシー・血清病(投与10〜21日後に発熱・蕁麻疹様/斑状丘疹状皮疹・筋痛・関節痛として出現)が「警告および使用上の注意」に置かれ、本添付文書に枠組み警告の節が存在しないことを確認した閲覧 2026-08-10
  2. 2.Safety and Clinical Outcomes of an Equine-derived Heptavalent Botulinum Antitoxin Treatment for Confirmed or Suspected Botulism in the United States(Clinical Infectious Diseases・2020)米国の登録研究(2014〜2017年、162例)で、確定例のうち症状発現から2日以内にBATを投与された群は2日超で投与された群に比べ在院日数(5日 対 15.5日)・ICU滞在(4日 対 12日)・人工呼吸期間(6日 対 14.5日)が短かったこと、BAT関連の重篤な有害事象は162例中7例(4.3%)であったことを確認した閲覧 2026-08-10
  3. 3.Clinical Guidelines for Diagnosis and Treatment of Botulism, 2021(CDC (MMWR Recommendations and Reports)・2021)米国では抗毒素(乳児型を除く)が連邦政府から緊急・無償で提供され、州・地域の保健当局とCDCへの緊急連絡を通じて入手すること、臨床診断のみに基づき検査結果を待たずに投与を開始すべきであることを確認した閲覧 2026-08-10