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Drug Atlas · B5 Antiarrhythmics / 抗不整脈薬

ベルナカラント

vernakalant

分類
Antiarrhythmics / 抗不整脈薬
商品名(EU)
Brinavess
科目
Pharmacology
トピック
B5: Drugs influencing cardiac electrophysiology
禁忌疾患
大動脈弁狭窄症急性冠症候群慢性心不全
副作用
低血圧悪心
原因となる疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)

🧠 全体像:はⅢ群に分類されるが、・のような「全身のKチャネルを遮断する」薬ではなく、心房に選択的に効くという一点で他のⅢ群薬と一線を画す。この心房選択性のおかげで心室の再分極()への影響が比較的小さく、他のⅢ群薬より心室性催不整脈()のリスクが低いとされる。発症早期の心房細動を静注1回で薬理学的する、という尖った用途に特化した薬である。

薬効群の中での位置づけ

分類 代表薬 標的 との違い
Ⅲ群(非選択的) ・ 心房・心室を問わずKチャネルを遮断 心室の再分極も延ばすためQT延長・リスクが相対的に高い
Ⅲ群() 心房に多いIKur・Itoチャネル+のNaチャネル遮断 心室にはほとんど作用しないため心室性催不整脈リスクが低い
Ⅰ群 ・系 Naチャネル遮断 経口の内服で使われるのに対し、は静注のみで医療機関内での使用に限られる

⭐ 「なぜ心房だけに選択的に効くのか」の理由は2つ重なっている。 ①IKur(Kv1.5)は心房に発現し心室にはほとんど存在しないチャネルで、これを遮断すれば心房の再分極だけが延びる。②Naチャネル遮断が(心拍数が速いほど強く効く)を持つため、心房細動中の速く不規則な心房興奮ではより強く、正常な心拍数で興奮する心室にはあまり効かない。この2つの選択性が重なって「心房だけ狙い撃ち」が実現している。

💡 のにおける立ち位置:(DC)が確実だが鎮静・全身麻酔を要するのに対し、はだけで発症早期(多くは48時間以内、非心臓手術例では7日以内)のを比較的短時間でに戻せるの選択肢を提供する。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vernakalant'>ベルナカラント</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial muscle'>心房筋</span>細胞に作用"] --> B["IKur(Kv1.5、心房特異的)を遮断"]
    A --> C["Ito(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient outward potassium current'>一過性外向きK電流</span>)を遮断"]
    A --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='use-dependent (frequency-dependent)'>頻度依存性</span>にNaチャネルを遮断"]
    B --> E["心房の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='action potential duration (APD)'>活動電位持続時間</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='refractory period'>不応期</span>↑"]
    C --> E
    D --> F["速く不規則に興奮する心房組織で<br>より強くNa電流を抑制"]
    E --> G["心房細動の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='re-entry circuit'>リエントリー回路</span>を維持できなくなる"]
    F --> G
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinus rhythm'>洞調律</span>への復帰(薬理学的<span class='jp-term jp-term-diagram' title='defibrillation'>除細動</span>)"]
    B -.->|"IKurは心室にほとんど発現しない"| I["心室の再分極への影響が小さい"]
    I -.-> J["他のⅢ群薬より心室性催不整脈(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='torsades de pointes'>TdP</span>)が起きにくい"]

薬物動態

項目 値・特徴
のみ(なし)
投与法 10分かけて。しなければ15分の観察を挟んでもう1回投与できる
代謝 肝臓で代謝される(を介する経路を含む)
半減期 比較的短時間(時間単位)

適応

領域 使いどころ
心房細動 発症早期の心房細動(非手術例で7日以内、心臓手術後の例で3日以内が目安)の迅速な薬理学的

⭐ 売りは「速さ」である。 の後ろ向き比較(899例)では復帰率が76.7%・69.5%・67.3%と大差ない一方、までの時間中央値は0.25時間対2.58時間対8時間と際立って短かった。⚠️ でないなので、有効性の優劣そのものは断定できない1。なお本剤は欧州・カナダなどで承認される一方、米国ではの安全性上の懸念により未承認である1。

⚠️ は慢性・の心房細動やには有効性が乏しく、適応は発症早期の心房細動に限られる。 のは典型的をへ戻す効果が示されなかったと明記しており、むしろ心房細動へ投与した患者の一部が投与後2時間以内にへ移行すること(頻度 common)、まれにを伴うが市販後に報告されていることを挙げている2。

用法・用量

体重に基づいた用量を10分かけてする。無効なら15分の観察後にもう1回(通常は初回よりやや低用量で)投与できる。投与中は血圧・心電図を継続的にモニタリングする。他の静注(Ⅰ群・Ⅲ群)投与の前後一定時間は併用を避ける。実際の用量・観察時間は施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 禁忌:重症、発症30日以内の、 III/IV度の心不全(いずれも低血圧・リスクが高い)
  • ⚠️ 重度の徐脈・・房室ブロック(なし)、著明なQT延長、重度の低血圧(100 mmHg未満)でも回避する
  • 他の静注(Ⅰ群・Ⅲ群)の投与前後一定時間は併用を避ける(伝導抑制・低血圧がになりうる)
  • 投与中・投与後は血圧低下・徐脈の出現に注意し継続的にモニタリングする

副作用

頻度 内容
高頻度 (投与中の一過性のなど)、悪心、くしゃみ、
注意 低血圧、徐脈
重篤・まれ 重症低血圧・(禁忌に該当する背景疾患がある場合に特にリスクが高い)、

まとめ

  • Ⅲ群の中でもという特殊な位置づけ。IKur(心房特異的)・Itoの遮断とのNaチャネル遮断が重なり、心室の再分極への影響が小さい。
  • 心房選択性のおかげで他のⅢ群薬より心室性催不整脈()のリスクが低いとされる。
  • 適応は発症早期(目安7日以内、心臓手術後は3日以内)の心房細動の迅速な薬理学的に限られる。静注のみではない。
  • 重症・発症30日以内の・ III/IV度の心不全は禁忌(いずれも低血圧・リスク)。
  • 投与中・投与後は低血圧・徐脈のモニタリングが重要。他の静注との前後併用は避ける。

出典

  1. 1.Comparative effectiveness and safety of vernakalant, flecainide, and amiodarone for atrial fibrillation cardioversion in the emergency department(BMC Emergency Medicine・2026)抄録で確認した(全文は未取得)。単一救急部門の2012〜2022年の後ろ向き観察研究899例(ベルナカラント262・フレカイニド151・アミオダロン486)で、洞調律復帰率が76.7%・69.5%・67.3%、洞調律までの時間中央値がベルナカラント0.25時間に対しフレカイニド2.58時間・アミオダロン8時間であったこと、著者らが後ろ向きで無作為割付でないことを理由に比較結果を慎重に解釈すべきだと結論していること、およびベルナカラントが欧州・カナダ・一部のアジア諸国で発症早期の心房細動の薬理学的除細動に承認されている一方、FDAの安全性上の懸念により米国では未承認であることを述べている。閲覧 2026-09-05
  2. 2.Brinavess (vernakalant) EPAR product information — Summary of Product Characteristics(European Medicines Agency・2024)セクション4.4に「Vernakalant was not found to be effective in converting typical primary atrial flutter to sinus rhythm.」とあり、セクション5.1でACT II・ACT IIIに組み入れられた典型的心房粗動例で有効性が示されなかったと記載されていること、心房細動へ投与した患者では投与後2時間以内の心房粗動への移行が common な副作用として挙げられ、市販後にまれに1:1房室伝導を伴う心房粗動が報告されていることを確認した。取得したPDFは第10項「DATE OF REVISION OF THE TEXT」が空欄で初回承認2010年9月1日・直近の更新2020年6月2日の記載のみだったため、yearには文書ファイル自体の作成日(2024年11月)を採った。閲覧 2026-09-05