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Disease Atlas · 循環器 · 先天性疾患

Brugada症候群

Brugada syndrome

臓器系
循環器
科目
PediatricsInternal MedicineCardiology
トピック
小児科 1/22:小児の不整脈(徐脈・頻脈)内科学 S-04:失神の鑑別診断循環器内科 A-23:ST上昇型急性冠症候群の病態・診断
鑑別疾患
てんかん先天性QT延長症候群
続発疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)電気ストーム
治療薬
キニジン
症状
失神痙攣

🧠 全体像は、(V1・V2)に特徴的なを示す遺伝性のNaチャネル異常()で、突然のによる若年〜中年の突然死を来す。心電図パターンには3型あるが、type 1心電図だけが単独で診断的であり、type 2・3はでtype 1へ転化して初めて意味を持つ。もう一つの核心は発熱がtype 1パターンやを顕在化させる誘因になることで、ICDだけが突然死予防として確立した治療である。

病態・遺伝学

は常染色体優性の遺伝形式を主にとるが、家族内でもに幅があり、孤発例も多い。最初に同定され最も代表的なで、心筋Naチャネル(Nav1.5)のにより、活動電位のを担う内向きNa電流が減少する1

右室流出路のはもともと一過性外向きK電流(Ito)が豊富で、Na電流が減少するとこの領域だけ活動電位の第1相のnotchが増大し、が消失しやすくなる。心内膜側は影響を受けにくいため、と心内膜の間にの電位較差が生じ、これがとして心電図に現れる。この電位較差はphase 2の土台となり、を誘発する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='SCN5A gene'>SCN5A</span>変異などによるNaチャネル機能低下"] --> B["右室流出路<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epicardium'>心外膜</span>のNa電流減少"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epicardium'>心外膜</span>の活動電位notch増大・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='plateau'>プラトー</span>消失"]
    C --> D["心内膜との間に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transmural'>貫壁性</span>の電位較差"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right precordial leads'>右側胸部誘導</span>で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coved-type ST-segment elevation'>coved型ST上昇</span>(type1心電図)"]
    D --> F["phase 2<span class='jp-term jp-term-diagram' title='re-entry'>リエントリー</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='polymorphic ventricular tachycardia'>多形性心室頻拍</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ventricular fibrillation, VF'>心室細動</span>"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sudden cardiac death'>心臓突然死</span>"]
    I["発熱"] --> J["Naチャネルの<span class='jp-term jp-term-diagram' title='biological temperature dependence'>温度依存性</span>不活化が促進"]
    J --> B

⚠️ 発熱で顕在化する。 Naチャネルの多くは野生型よりが強く、体温上昇でチャネル機能がさらに低下する。無症候の変異保持者が発熱時に初めてtype1パターンや失神・VFを呈することがあり、小児では発熱性疾患の際にこの点を特に意識する。

心電図診断

診断の核心は、3つの心電図パターンのうちtype1だけが単独で診断的であるという非対称性にある2

ST部分の形態 診断的意義
Type 1 V1・V2(第2〜4肋間の配置を含む)の少なくとも1誘導で2 mm以上、これに続く陰性T波 またはクラスI)の静注後に認めれば、それだけでと診断できる21
Type 2 saddleback型のST上昇 単独では診断的でない。でtype1へ転化すれば診断が成立する
Type 3 Type 1・Type 2いずれかの形態で振幅が小さいもの 単独では診断的でない。でtype1へ転化すれば診断が成立する

⚠️ Type 2・3パターンを見ただけでと診断しない。でtype1形態への転化を確認して初めて診断的意味を持つ2

臨床像

  • 多くは無症候で、健診や他疾患の心電図検査で偶発的にtype2/3パターンが見つかることから評価が始まる。
  • 失神、痙攣様の痙攣を伴う、夜間の様呼吸、心停止からの蘇生が主な症候である。痙攣を伴う失神はてんかんされやすい。
  • 発症は成人(30〜40歳代)に多く男性優位だが、小児でも発熱を契機に失神・VFで顕在化しうる。
  • 若年歴は重要な手がかりであり、失神のでは高度徐脈・房室ブロック・QT異常と並んでBrugadaパターンの有無を確認する。
  • は、ST上昇型の心電図診断で除外すべき非虚血性ST上昇パターンの一つでもあり、急性期の胸部症状評価でSTEMIと取り違えないよう注意する。

診断・家族評価

反復する(必要ならV1・V2を第2肋間までに付け替えて記録)でのtype1パターンを確認する。type2/3のみの場合はクラスIによるでtype1への転化を確認する。診断確定後は、原因不明の若年突然死・失神の家族歴を聴取し、への心電図評価と、家系内でが判明していればを検討する。

治療

SCDの唯一の証明された有効な治療戦略はICDである2のtype1心電図があり、心停止蘇生歴またはによる失神が疑われる例が主な適応となる。

薬物治療は補助的な位置づけで、が一過性外向きK電流(Ito)を遮断する作用によりtype1パターンを抑制しうる。(短時間に繰り返すVF)の既往がある例や、ICDの適応があっても禁忌・拒否がある例、あるいは治療を要するを合併する例で有用である2

としては、Na作用を持つ薬剤(一部のなど)を避け、発熱時は速やかにで対応することをすべての患者に徹底する2。過度の飲酒や大食も一部でtype1パターンの誘因となりうるため、症例に応じて生活上の注意を共有する。

先天性QT延長症候群との違い

いずれも心筋イオンチャネルの遺伝子変異による遺伝性不整脈症候群だが、障害される電流と誘因が対照的である。

項目
主な障害電流 Na電流の減少(機能喪失) K電流の減少・Na電流の持続(など)
心電図の特徴 の延長( 480 ms以上)
代表的な誘因 発熱 運動・音刺激・・安静時(遺伝子型により異なる)
不整脈の型 ・VF
確立した治療 ICD(唯一証明された有効な治療) β遮断薬が中心、高リスク例でICD

まとめ

  • は主にによるNaで、右室流出路電位較差がとphase 2を生み、VFによる突然死を来す。
  • 3つの心電図型のうちtype1だけが単独で診断的で、type2・3はでtype1へ転化して初めて診断が成立する。
  • 発熱はNaチャネル機能をさらに低下させ、type1パターンやを顕在化させる重要な誘因である。
  • SCDの唯一の証明された有効な治療戦略はICDで、やICD不適応例などで補助的に用いる。
  • 痙攣を伴う失神で発症しうるためてんかんとされやすく、と対比すると障害電流・誘因・治療の骨格の違いが整理しやすい。

出典

  1. 1.HRS/EHRA/APHRS Expert Consensus Statement on the Diagnosis and Management of Patients with Inherited Primary Arrhythmia Syndromes(Heart Rhythm Society/European Heart Rhythm Association/Asia Pacific Heart Rhythm Society・2013)BrSはV1・V2誘導(第2〜4肋間配置を含む)の少なくとも1誘導でtype1形態のST上昇が2mm以上、自然発生またはクラスI抗不整脈薬の静注による薬物負荷試験後に認められることで診断されること、type2/3パターンは薬物負荷試験でtype1形態に転化した場合にのみ診断的意味を持つこと、SCDの唯一の証明された有効な治療戦略はICDであること、発熱の即時解熱治療を全患者の生活指導に含めること、キニジンは電気ストームの既往例やICD不適応・拒否例で有用でありうること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Brugada Syndrome(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2024)type1心電図はV1・V2の少なくとも1誘導で2mm以上のcoved型ST上昇とそれに続く陰性T波で定義されること、type2・type3パターンは自然にまたはクラスI抗不整脈薬の負荷でtype1へ転化しない限り診断的でないこと、発熱がtype1パターンや不整脈イベントを顕在化させる重要な誘因であること、原因遺伝子として最初に同定されたSCN5Aは心筋Naチャネルの機能喪失型変異であること閲覧 2026-08-11