小児科学

小児科学 · 1-22

小児の不整脈(徐脈・頻脈)

Arrhythmias in Children

前提:正常
心臓における興奮の発生と伝導刺激伝導系の発生
疾患
Brugada症候群Jervell and Lange-Nielsen症候群カテコラミン誘発性多形性心室頻拍上室性頻拍症先天性QT延長症候群

🧠 全体像: 小児不整脈では心拍数だけでなく、意識、血圧、灌流、呼吸状態から循環不全の有無を最初に判定する。は原因治療、は・アデノシン、循環不全ならが基本である。

主な不整脈

分類 心電図・特徴 主な背景
P波を伴い変動する規則的頻脈 発熱、疼痛、脱水、貧血、不安、甲状腺機能亢進
(SVT) 突然発症・停止、規則的狭QRS、P波不明瞭 AVRT、AVNRT、症候群
/細動 /不規則不整 、術後など
/細動 幅広いQRS/無秩序でQRS同定不能 心筋症、心筋炎、術後、チャネル病
P波を伴う遅い規則的 低酸素、低体温、薬物、頭蓋内圧亢進、鍛錬
房室ブロック 、脱落、P–QRS解離 先天性、術後、心筋炎、薬物

乳児では、頻呼吸、、蒼白・チアノーゼが唯一の症状になりうる。年長児では、胸痛、めまい、失神を聴取する。

💡 SVTは乳児期に最も高頻度の不整脈である。 1

💡 正常心拍数・呼吸数は年齢で大きく変わる。 14万人超のデータを統合した系統的レビューでは、心拍数中央値が出生時127/分、生後1か月ごろにピーク145/分、その後低下し2歳で113/分となり、既存の公表の間でも一致しない食い違いが多かった。年齢を明示しない「正常は◯◯回/分」という記載は小児では意味をなさない。2

遺伝性不整脈

疾患 手がかり
運動・・音刺激で失神、()、突然死家族歴
の特徴的ST上昇、発熱で誘発される失神・VF
誘発 運動・情動で/、安静時ECGが正常のこともある

⚠️ 症候群は稀にによる突然死を来す。 高リスクとされた無症候性の学童期小児(5〜12歳)を対象とした無作為化試験では、追跡中の不整脈イベントが予防的群5%、無治療対照群44%で、対照群では2例・突然死1例を認めた。3

救急アルゴリズム

flowchart TD
    A["頻脈と脈拍あり"] --> B{"低血圧・ショック・意識障害があるか"}
    B -->|"はい"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synchronized cardioversion'>同期カルディオバージョン</span>"]
    B -->|"いいえ"| D{"規則的狭QRSか"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagal stimulation (vagal maneuver)'>迷走神経刺激</span>→アデノシン急速静注"]
    D -->|"いいえ"| F["12誘導ECG・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='expert'>専門家</span>相談・原因治療"]
    G["徐脈と脈拍あり"] --> H["酸素化・換気と可逆原因を是正"]
    H --> I{"循環不全が続き心拍数60/分未満か"}
    I -->|"はい"| J["CPR・アドレナリン、適応時<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atropine'>アトロピン</span>/ペーシング"]
  • SVTのは乳児の顔面への、年長児のなどを用い、眼球圧迫はしない。で受診した成人428例の無作為化試験では、呼気後に仰臥位でを追加するが標準的なより復帰率が高かった(43%対17%)。この試験の対象は成人でありこの結果自体は小児での比較を意味しないが、手技として小児にも応用される。4
  • 小児50例・117エピソードを検討した報告では、静注アデノシンで117エピソード中90エピソード(77%)が停止し、房室回帰性頻拍・回帰性頻拍を主体とする接合部性頻拍では102エピソード中88エピソード(86%)で有効だった。5
  • 循環不全を伴う頻拍では鎮静可能なら行うが、を遅らせない。安定したはとしてと治療する。
  • 小児のは低酸素が最多で、まず有効な換気を確保する。換気後も循環不全が続き心拍数60/分未満ならCPRを開始する。

診断と長期治療

で心拍数、P–QRS関係、QRS幅、、を評価する。間欠症状には/、構造・機能には心エコー、運動誘発例にはを選ぶ。電解質、薬物、甲状腺、心筋炎を状況に応じ評価する。

💡 の値は補正式で変わりうる。 健常小児54例(5〜15歳)のを用いた検討では、・が・より延長側に偏りやすく、どの補正式を用いるかでの解釈が変わった。6

再発性SVTなどは薬物または、症候性は、心停止高リスク例はを専門科で検討する。遺伝性疾患ではだけでなく家族評価と薬剤・運動指導を行う。

まとめ

  • 循環不全の有無が治療の最初の分岐である。
  • は発熱・脱水など原因を治療し、SVTと区別する。
  • 失神、運動誘発、突然死家族歴、異常はの赤旗である。

出典

  1. 1.Treatment of supraventricular tachycardia in infants: Analysis of a large multicenter database(Early Human Development・2015)新生児集中治療室を退院した乳児2,848例を対象とした多施設レトロスペクティブ解析で、上室頻拍(SVT)が乳児で最も多い不整脈であること、院内でのSVT再発が13%、有害事象が18%に生じたこと閲覧 2026-08-27
  2. 2.Normal ranges of heart rate and respiratory rate in children from birth to 18 years of age: a systematic review of observational studies(The Lancet・2011)出生から18歳までの健常小児を対象とした69研究(心拍数データ14万3,346例、呼吸数データ3,881例)を統合した系統的レビューで、心拍数中央値が出生時127/分、生後1か月頃にピーク145/分、その後低下し2歳で113/分となること、呼吸数中央値が出生時44/分から2歳で26/分へ低下すること、既存の公表基準値の間で1パーセンタイル・99パーセンタイルを超える食い違いや中央値をまたぐ食い違いが頻繁にあったこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Radiofrequency ablation in children with asymptomatic Wolff-Parkinson-White syndrome(The New England Journal of Medicine・2004)高リスクとされた無症候性WPW症候群の小児60例(年齢5〜12歳)を予防的カテーテルアブレーション群20例と無治療対照群27例に割り付けた無作為化試験で、追跡中の不整脈イベントがアブレーション群5%・対照群44%であり、対照群で心室細動2例・突然死1例を認めたこと閲覧 2026-08-27
  4. 4.Postural modification to the standard Valsalva manoeuvre for emergency treatment of supraventricular tachycardias (REVERT): a randomised controlled trial(The Lancet(REVERT試験)・2015)上室頻拍で救急外来を受診した成人428例(各群214例)を対象とした無作為化試験で、呼気努責後に仰臥位で他動的下肢挙上を追加する改変Valsalva法が、標準的な半坐位Valsalva法と比べて1分後の洞調律復帰率が有意に高かった(43%対17%、補正後オッズ比3.7、95%CI 2.3-5.8)こと。対象は成人でありこの試験自体は小児を含まない閲覧 2026-08-27
  5. 5.Efficacy and safety of adenosine in the treatment of supraventricular tachycardia in infants and children(British Heart Journal・1989)乳児28例を含む小児50例の上室頻拍117エピソードを静注アデノシン(0.05 mg/kgから2分ごと漸増、最大0.25 mg/kg)で治療した検討で、117エピソード中90エピソード(77%)が停止したこと、房室回帰性頻拍・房室結節回帰性頻拍などの接合部性頻拍102エピソードでは88エピソード(86%)が停止したこと、心房粗動の3エピソードはいずれも停止しなかったこと閲覧 2026-08-27
  6. 6.Comparison of formulae for heart rate correction of QT interval in exercise ECGs from healthy children(Heart (British Cardiac Society)・2001)健常小児54例(5.05〜14.9歳)の運動負荷心電図を対象に、Bazett・Hodges・Fridericia・Framinghamの4種の補正式を比較した検討で、運動最高負荷時にBazett式・Hodges式がFridericia式・Framingham式より大きくQTcを延長させる方向に偏ったこと、どの補正式を用いるかでQTcの解釈が変わりうること閲覧 2026-08-27