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Disease Atlas · 循環器 · 疾患

上室性頻拍症

Supraventricular tachycardia

別名
SVT上室頻拍
臓器系
循環器
科目
CardiologyPediatrics
トピック
循環器内科 A-30:上室性不整脈循環器内科 A-34:不整脈のアブレーション治療小児科 1/22:小児の不整脈(徐脈・頻脈)
上位概念
不整脈
鑑別疾患
心房細動電気ストーム
治療薬
アデノシンベラパミルジルチアゼムエスモロール
症状
めまい胸痛失神動悸

🧠 全体像は心房またはに由来し、またはで生じる。臨床の骨格は2段構えである——①血行動態が不安定なら機序を問わず直ちに、②安定していれば整・QRS幅の狭い頻拍として→アデノシン→の順に進める。最も頻度が高いAVNRT・AVRT(を含む)はいずれもで、が回路に必須であるためアデノシンが有効という共通点を持つ。根治にはが確立している。

定義・機序

  • 機序にはがあり、にはの異なる2経路が必要である。
  • 頻拍時の心拍数はおおむね140〜250/分で、、めまい、失神、呼吸困難、不安、胸痛、心拍出量低下・血圧低下を来しうる。
起源 不整脈 特徴
SA >100/分。運動・妊娠・感情、または貧血、、甲状腺機能亢進症、発熱、疼痛が誘因
SA 稀な微小。治療はβ遮断薬、
心房 120〜240/分、異常P波、
心房 250〜350/分、誘導でF波
心房 心房細動 300〜600/分、P波消失、絶対性不整
AVNRT 140〜240/分、逆行性P波がQRS内に隠れる
AVRT/ PR短縮・ではQRS幅が狭く、では広い
  • AVNRTの典型はslow-fast型で、内のし速伝導路を逆行する。
  • AVRTは房室間の(典型的には)を介する。左側壁が最も多い。

を伝導方向で整理すると次のようになる。

回路 (antegrade:心房→心室) 逆行性(retrograde:心室→心房) 典型的なQRS
典型的なAVNRT 内の 内の速伝導路 幅が狭い。逆行性P波はQRS内または直後
AVRT(orthodromic AVRT) –His–Purkinje系 幅が狭い
(antidromic AVRT) –His–Purkinje系 幅が広く、を伴う
が回路に必須 が回路に必須でない
AVNRT、AVRT 心房細動

💡 アデノシンが効く不整脈と効かない不整脈:アデノシンは一過性にを止める薬なので、そのものが回路の一部であるAVNRT・AVRTは停止させられる。一方、・心房細動はを介さず心房内で回路が完結しているため、アデノシンは一時的な房室ブロックで心房興奮(F波・)を見やすくするだけで、不整脈自体は止まらないことが多い。

⚠️ を伴う心房細動を疑う不規則でQRS幅の広い頻拍では、する興奮をがブロックできずへ移行しうるため、アデノシン・β遮断薬・・ジゴキシンなどのを避ける。

心電図診断とアプローチ

  • P波/F波の有無と形態、の規則性、QRS幅、)の有無から発生源を絞り込む。
  • QRS幅が広い頻拍では、を伴うSVT・(VT)の鑑別が必須であり、専門医評価またはとして治療する。
  • とする場合は、まず症状時のECGを記録できるか、・失神などのの有無を確認する。発作頻度に応じてを選び、持続する規則的発作やがあれば早期にへ紹介する。
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpitations'>動悸</span>:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Anamnesis'>病歴聴取</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='physical examination'>身体診察</span>"] --> B["12誘導ECG:可能なら症状時に記録"]
  B --> C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pre-excitation'>早期興奮</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural heart disease'>器質的心疾患</span>・失神の有無"}
  C -->|"あり"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arrhythmia specialist'>不整脈専門医</span>へ紹介・詳細評価"]
  C -->|"なし"| E{"発作パターン"}
  E -->|"持続性・整"| F["SVTを疑い症状時ECG・携帯型心電図モニターで評価"]
  E -->|"不整"| G["心房細動・伝導比が変動する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial flutter'>心房粗動</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='multifocal atrial tachycardia, MAT'>多源性心房頻拍</span>を評価"]
  E -->|"短時間・稀"| H["頻度に応じた<span class='jp-term jp-term-diagram' title='event monitor'>イベントモニター</span>・経過観察"]

小児における特徴

  • 小児不整脈の評価でも、心拍数の絶対値だけでなく意識、血圧、灌流、呼吸状態から循環不全の有無を最初に判定する。
  • SVTは突然発症・突然停止、規則的な狭いQRS、不明瞭なP波が特徴で、AVRT・AVNRT・が主な背景である。
  • 乳児では、頻呼吸、、蒼白・チアノーゼが唯一の症状になりうる。年長児では、胸痛、めまい、失神を聴取する。
  • 乳児では顔面への年長児ではなどを用い、眼球圧迫は行わない。
  • で心拍数、P–QRS関係、QRS幅、を評価し、などの遺伝性不整脈(運動・・音刺激での失神、が手がかり)とSVTを鑑別する。
  • 再発性SVTには薬物療法またはカテーテルを専門科で検討する。

急性期治療

  • 血行動態が不安定なら機序の同定を待たずを行う。
  • 安定した整・QRS幅の狭い頻拍では、→アデノシン→の順に進める。
flowchart TD
  A["整・QRS幅の狭い頻拍(narrow-complex tachycardia)"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hemodynamic instability'>血行動態不安定</span>"}
  B -->|"あり"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='synchronized cardioversion'>緊急同期下カルディオバージョン</span>"]
  B -->|"なし"| D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vagal maneuver'>迷走神経手技</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Valsalva maneuver'>Valsalva法</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='carotid sinus massage'>頸動脈洞マッサージ</span>など)"]
  D --> E["アデノシン急速静注"]
  E --> F{"停止するか"}
  F -->|"なし"| G["適応を確認し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='non-dihydropyridine calcium channel blocker (non-DHP CCB)'>非ジヒドロピリジン系カルシウム拮抗薬</span>またはβ遮断薬"]
  F -->|"あり"| H["AVNRT・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='orthodromic'>順方向性</span>AVRTと判断し再発予防・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ablation'>アブレーション</span>を検討"]

アデノシンの投与法から6 mgを急速静注し、でただちにフラッシュする。1〜2分で無効なら12 mgを追加投与する(施設プロトコルにより最大2回目までの12 mg追加を許容)。AVNRT・AVRTの約90%を停止させる一方、AF誘発(一過性)、、一過性の高度徐脈・心停止感などの副作用があり、重症では回避する。

またはによるで治療する。AVNRTはで根治できる。

カテーテルアブレーション

  • では、、右室にカテーテルを留置し、からを同定して不整脈の焦点・回路を特定してからエネルギーを加える。
エネルギー 機序・温度
(RF) 500〜700 kHzの交流でイオンを振動させ加熱する。<50℃は一過性の機能消失、>50℃は永久障害、>80℃は組織の凝固・血栓塞栓のリスクとなる
冷却RF(cooled RF) 血流やカテーテル先端からので表面を冷却しつつ高出力を投入し、より大きな病変を形成する
液体の気化で冷却する。−30℃で可逆的、−60℃で不可逆的障害となる
レーザー 光エネルギーでする
flowchart TD
  A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='electrophysiological mapping'>電気生理学的マッピング</span>"] --> B["焦点/回路の同定"]
  B --> C["RF・冷凍・レーザーエネルギー"]
  C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arrhythmogenic tissue'>不整脈原性組織</span>を<span class='jp-term jp-term-diagram' title='scarring'>瘢痕化</span>"]
  D --> E["トリガー・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='re-entry circuit'>リエントリー回路</span>の消失"]

適応

  • 、心房細動。
  • AVNRT、AVRT()。

💡 AVNRTのは急性成功率が95%超・長期成功率も高く、房室ブロックのリスクは1%未満と低いため、症候性AVNRTでは薬物療法より根治的な第一選択として広く選ばれる。AVRT/でもの位置により高い成功率が期待できる。

⚠️ 合併症は死亡、脳卒中、心タンポナーデ、房室ブロック、、放射線曝露、、再発である。

まとめ

  • 性頻拍はまたはによる。AVNRT・AVRT()はが回路に必須で、アデノシンが有効な点が共通する。
  • P波/F波、の規則性、QRS幅、)の有無から発生源を絞り込み、QRS幅の広い頻拍ではVTとの鑑別を常に意識する。
  • 不安定なら機序を問わず直ちに、安定した整・QRS幅の狭い頻拍では→アデノシン→の順で治療する。を伴う不規則な広いQRS頻拍ではを避ける。
  • 小児のSVTも突然発症・停止する規則的な狭いQRS頻拍として捉え、は年齢に応じた手技(乳児は顔面、年長児は)を用いる。
  • はAVNRT・AVRT()を含む性・心室性の多様な不整脈の根治的選択肢で、で回路を同定してからRF・冷凍・レーザーエネルギーでする。