疾患ノート一覧へ

Disease Atlas · 循環器 · 疾患

心室期外収縮

Premature ventricular contraction

別名
PVC心室性期外収縮Premature ventricular complexVentricular premature beat
臓器系
循環器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 S-02:心臓の刺激生成・伝導障害
上位概念
不整脈
鑑別疾患
心室性不整脈(心室頻拍・心室細動)
合併症
頻脈誘発性心筋症
治療薬
メトプロロール
症状
動悸

🧠 全体像は、健常者のにも高頻度に見つかるきわめて一般的な不整脈で、大多数は良性である。診療の核心は「これは治療すべきPVCか」を判断する枠組みにあり、その軸は①症状の有無、②の有無、③24時間ホルターでのPVC負担(全心拍に占める割合)の3つである。この枠組みさえ持っていれば、無数にある心電図所見や肢を「経過観察でよい大多数」と「精査・治療が必要な少数」に振り分けられる。もう一つの軸はPVCそのものが心不全の原因になりうるという事実で、高い負担が続くとPVC誘発性心筋症として左室機能が低下し、PVCを抑制すれば回復する。

心電図所見と起源の推定

PVCはより早期に出現する幅広いQRS(120ms以上)で、先行するP波を欠き、その後にを乱さない完全を伴うことが典型的である1。単発だけでなく、2連発、3連発以上(と定義が重なる)、あるいはと1:1でするなど出現パターンにも意味がある。

QRSの形態から起源をある程度推定できる。起源は最も頻度の高いパターンで、誘導で高いR波、型+下方軸を呈する。RVOT起源のPVCは特発性(を伴わない)であることが多く、後述のとおりの成績が良い1。これに対し、左室起源や複数の起源から出るPVC、あるいは心筋梗塞の瘢痕を反映するPVCは、を積極的に疑わせる所見である。

臨床像

多くは無症候で、健診や他疾患の精査中に心電図・ホルターで偶発的に見つかる。症候性の場合は(「脈が飛ぶ」「ドキンとする」という訴え)が最も多く、期の後の心拍出量増加による強い拍動としてされることもある。PVCは健常者にも高頻度にみられ、見つかったこと自体が必ずしも心筋障害を意味しない——この前提を踏まえたうえで、前述の3要素で個々の患者を評価する。

「治療するかどうか」を決める枠組み

flowchart TD
    A["PVCを心電図・ホルターで発見"] --> B{"症状があるか"}
    B -->|"なし"| C{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='structural heart disease'>器質的心疾患</span>・危険な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Sign'>サイン</span>があるか"}
    B -->|"あり(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='palpitations'>動悸</span>など)"| D["症候性PVCとして評価"]
    C -->|"なし"| E["24時間ホルターでPVC負担を測定"]
    C -->|"あり"| F["基礎疾患の精査を優先"]
    E --> G{"PVC負担は高いか<br>(目安10%以上)"}
    G -->|"低い"| H["経過観察・誘因の除去"]
    G -->|"高い"| I["PVC誘発性心筋症を疑う<br>LVEF評価・抑制治療を検討"]
    D --> J{"β遮断薬で症状改善するか"}
    J -->|"する"| H
    J -->|"しない・高負担"| K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='catheter ablation'>カテーテルアブレーション</span>を検討"]

⭐ この3要素(症状・・PVC負担)のどれか1つだけでは判断できない。無症候でも負担が高ければ心筋症のリスクがあり、症候性でも負担が低ければ多くは経過観察で足りる。

危険なサイン

⚠️ 次のいずれかがあれば、単純な「良性のPVC」として済ませず精査対象とする1

意味
(心筋梗塞既往・心筋症など) PVCがの重症化・突然死のリスクを高める基盤になる
失神 PVCの背景になど血行動態的に不安定な不整脈が隠れている可能性
遺伝性不整脈症候群(など)の可能性
PVC 単一起源でないことを示し、びまん性の心筋障害やを示唆する
運動で増加するPVC 誘発性の不整脈や誘発性を疑わせ、運動負荷での観察を要する
R on T(先行T波に重なるPVC) に落ちることでの引き金になりうる1

PVC誘発性心筋症

⚠️ 高いPVC負担が続くと、それ自体が原因で左室機能が低下する——の一型としてのPVC心筋症である。PVC負担10%以上が重要な診断閾値とされる一方、6〜8%程度でもPVC抑制後に左室機能の改善を認めた報告があり、下限にはが大きい2。ある研究ではPVC負担16%・24%がそれぞれ感度79%・100%、特異度78%・87%でPVC心筋症の診断に対応し、強く疑われる例では5〜10%程度の負担でも抑制を検討しうるとされる3

💡 この関係の核心は、PVCを抑制すればLVEFが回復しうるという可逆性にある。したがって、原因不明のLVEF低下を見た際にでPVC負担を確認することは、の鑑別として重要な一手である。

治療

は前述の3要素の評価結果に応じて選ぶ。

  • 無症候・低負担:経過観察でよい。・アルコール・睡眠不足・ストレスなど増悪因子があれば是正を勧める。
  • 症候性β遮断薬など)が第一選択である1誘発性・運動誘発性のPVCは特によく反応する。
  • 高負担・PVC誘発性心筋症・薬物治療に反応しない症候性PVCが根治的選択肢となる。特にRVOT起源の特発性PVCはの成績が良く、急性成功率は98%程度、重大合併症は稀と報告されている4

まとめ

  • PVCは健常者にも高頻度にみられる一般的な不整脈で、大多数は良性である。
  • 「治療するかどうか」は①症状、②の有無、③24時間ホルターでのPVC負担、の3要素で判断する。
  • 心電図は先行P波なし・幅広いQRS・完全期が典型で、RVOT起源はLBBB型+下方軸を呈し特発性で成績が良い。
  • 、失神、、運動誘発性、R on Tは精査対象となる危険なである。
  • PVC負担が高いとの一型(PVC誘発性心筋症)としてLVEFが低下しうるが、PVCを抑制すれば回復しうる可逆的な病態である。
  • 治療は無症候・低負担なら経過観察、症候性はβ遮断薬、高負担・心機能低下例はが中心となる。

出典

  1. 1.Premature Ventricular Complex(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)PVCの心電図所見が幅広いQRS(120ms以上)・先行P波なし・完全代償性休止期であること、右室流出路起源は特発性が多くLBBB型+下方軸を呈すること、高いPVC負担が24時間で10,000拍または全心拍の10%超と定義されること、負担15%以上でアブレーションを考慮しうること、負担25%以上で心筋症リスクが上昇すること、症候性PVCの第一選択薬がβ遮断薬であること、陳旧性心筋梗塞後の頻発PVCやT波に重なるPVC(R on T)が心臓突然死のリスクを高めること閲覧 2026-08-11
  2. 2.Arrhythmia-Induced Cardiomyopathy: JACC State-of-the-Art Review(Journal of the American College of Cardiology (JACC)・2019)PVC負担10%以上がPVC心筋症を誘発しうる重要な閾値とされる一方、6〜8%程度でもPVC抑制後に左室機能の改善を認めた報告があること、原因となるPVCの消失後4〜12週間で左室機能が回復すること閲覧 2026-08-11
  3. 3.Clinical and translational insights on premature ventricular contractions and PVC-induced cardiomyopathy(Progress in Cardiovascular Diseases・2021)PVC負担16%と24%がPVC心筋症診断の感度79%・100%、特異度78%・87%に相当すること、PVC心筋症が強く疑われる例では5〜10%のPVC負担でも抑制を考慮しうること閲覧 2026-08-11
  4. 4.Similarly high success and low complication rates of catheter ablation for idiopathic premature ventricular contractions from the left and right ventricular outflow tract(Europace・2023)特発性PVCに対するカテーテルアブレーションの成績として、右室流出路起源では98%(46/47例)という高い急性成功率と重大合併症なしという低い合併症率が得られたこと(全体の成功率は82%)閲覧 2026-08-11