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Drug Atlas · B21 Bronchodilators / 気管支拡張薬 · 必修

サルブタモール

salbutamol

分類
Bronchodilators / 気管支拡張薬
商品名(日本)
サルタノールベネトリン
商品名(EU)
Ventolin
科目
Pharmacology
トピック
B21: Selective β2-stimulants and other bronchodilators
副作用
動悸振戦
影響検査値
カリウム
対象疾患
アナフィラキシー気管支喘息慢性閉塞性肺疾患

🧠 全体像)は短時間作用型(SABA)の代表で、「発作が起きたら吸って数分で楽になる」薬の原型である。効くのが速いというがそのまま最大の弱点にもなる——症状はすぐ取れても気道の炎症そのものには手を付けていないため、頓用が増えるほど「効いている」のではなく「コントロールが破綻しつつある」になる。この構造が、GINA以降の喘息治療がSABA単剤の頓用から距離を置く理由そのものである。

薬効群の中での位置づけ

の3系統に分かれ、はさらにに分かれる。

系統 代表薬 作用発現・持続 位置づけ
SABA(短時間β2) 発現約5分・持続4〜6時間 が基準薬
LABA(速効) 発現1〜3分・持続12時間 維持+MART/SMART療法でにも使える例外
LABA(遅効) 発現30〜48分・持続12時間 維持のみ。発作には使えない
短時間/長時間 /COPD維持の主力
治療域が狭く必須

「SABAは発作治療の第一選択」までは今も正しいが、「SABA単剤を頓用でよい」は既に古い。 GINA 2019年の方針転換以降、成人・思春期の喘息ではSABA単独での頓用治療そのものが推奨されなくなりには必ず(ICS)を組み合わせる——具体的には低用量ICS-を頓用する、またはSABAを使う場面ではなICSを確実に併用する、のいずれかを選ぶ。単剤の吸入器だけを渡す処方は、現行ガイドラインでは望ましい標準治療ではなくなっている。

機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='salbutamol'>サルブタモール</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway smooth muscle'>気道平滑筋</span>の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-2 receptor'>β2受容体</span>(Gs共役)に結合"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='adenylyl cyclase, AC'>アデニル酸シクラーゼ</span>活性化→cAMP↑"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='protein kinase A (PKA)'>プロテインキナーゼA</span>(PKA)活性化"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='myosin light chain kinase (MLCK)'>ミオシン軽鎖キナーゼ</span>(MLCK)阻害"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway smooth muscle relaxation'>気道平滑筋弛緩</span>→気管支拡張"]
    B --> F["肥満細胞からのメディエーター遊離抑制"]
    B --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='mucociliary clearance'>線毛運動</span>亢進→<span class='jp-term jp-term-diagram' title='airway clearance'>気道クリアランス</span>改善"]
    B --> H["骨格筋<span class='jp-term jp-term-diagram' title='beta-2 receptor'>β2受容体</span>刺激→振戦"]
    B --> I["Na+/K+-ATPase活性化→細胞内へK+シフト"]
    I --> J["低K血症"]

💡 平滑筋を「緩める」薬の共通回路。 で、最終的にcAMP↑→PKA活性化という同じ経路を使う。この経路はだけでなく骨格筋(振戦の原因)・肝臓()・骨格筋細胞膜のNa+/K+-ATPase(低K血症の原因)にも及ぶため、「効きすぎ」の副作用は気道以外の場所に出る。

薬物動態

項目 値・特徴
主な 吸入()。経口・静注もあるが全身性副作用が出やすく吸入が原則
発現・ピーク 吸入で約5分に発現、15〜30分でピーク
持続 約4〜6時間
代謝 肝で
排泄 腎(代謝物・一部未変化体)
半減期 約2.7〜5時間

吸入という経路自体がを作っている。 気道局所に届く量は少量で足りるのに対し、に回る量がの副作用を決める。経口や静注では同じ効果を得るのにより多くの薬物が全身を巡るため、吸入に比べて頻脈・振戦・低K血症が出やすい。

適応

領域 使いどころ
急性発作の吸入(第一選択)。ただし現行ガイドラインではSABA単独の頓用は推奨されず、ICSとの併用が前提
COPD 時の吸入。(SAMA)との併用が標準
運動15〜20分前の予防吸入
アナフィラキシー 持続するへの補助治療。第一選択はあくまでアドレナリンで、単独ではアナフィラキシーの・循環障害は治療できない
電解質異常 適応外だが吸入により細胞内へK+をシフトさせるとして使われることがある

用法・用量

吸入(に100〜200 μg(1〜2吸入)を頓用し、反応不十分なら20分間隔で追加する。:2.5〜5 mgを、重症増悪では連続吸入も検討する。実際の用量は年齢・重症度・製剤で変わるため、施設のプロトコル・添付文書で確認する。

禁忌・注意

  • 注意のある患者では慎重投与。甲状腺機能亢進症では交感神経症状の増悪に注意
  • ⚠️ 高用量・頻回使用時の 重症喘息発作ですると、代償性のとともにが起こりうる。呼吸窮迫の悪化と誤認してさらに投与量を増やす悪循環を避ける
  • など)はを拮抗し効果を減弱・を招くため、喘息患者には基本的に避ける

副作用

頻度 内容
高頻度 振戦、頻脈・
注意 カリウム低下(低K血症)、頭痛、軽度の高血糖
重篤・まれ 高用量反復使用での、不整脈

まとめ

  • SABAの代表薬。→cAMP↑→PKA→MLCK阻害という経路でを弛緩させる。
  • 吸入経路が全身性副作用を抑える鍵。経口・静注は同じ効果でも副作用が出やすい。
  • 発作治療の第一選択だが、GINA以降はSABA単独頓用が推奨されなくなり、ICSとの併用が前提になった。
  • の予防吸入、アナフィラキシーでの補助(第一選択はアドレナリン)にも使われる。
  • 副作用は振戦・頻脈・低K血症とcAMP経路の波及で説明できる。高用量反復ではに注意。
  • の補助治療(細胞内シフト)という適応外の使い方も臨床で重要。