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Disease Atlas · 循環器 · 先天性疾患

心房中隔欠損

Atrial septal defect

別名
ASD心房中隔欠損症
臓器系
循環器小児
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Cardiology, Heart Surgery, Angiology, Vascular SurgeryPediatrics
トピック
発生学 12.6:心血管系:臨床循環器内科 A-14:心房・心室中隔欠損と先天性心疾患小児科 3-54:非チアノーゼ性先天性心疾患
上位概念
先天性心疾患(非チアノーゼ性・チアノーゼ性)
続発疾患
肺高血圧症心房細動脳梗塞
症状
労作時呼吸困難動悸失神
画像所見
心陰影

🧠 全体像:は「小児期にはほぼ無症状、成人期になって初めて牙をむく」左→右短絡である。欠損を通る血流量そのものより、右房・右室が何十年もかけてにさらされ続けることが本体で、不整脈・肺高血圧・は欠損が見つかってから起こるのではなく、見つからないまま何十年も放置された結果として現れる。・に比べて短絡のが小さいぶん進行はゆっくりだが、それは「無害」を意味しない。

病型

を中心としたの発生(・・房室・静脈洞角の複数組織が関わる)のどこが欠けるかで4型に分かれる1。

病型 欠損の位置・機序 特徴
領域で・の重なりが不足する、最多の型 単独で起こることが多く、rimが十分ならカテーテル閉鎖の主な対象
房室に近い下部の欠損 しばしばの形成異常を伴い、(AVSD)の一部として扱われることが多い
または下大静脈の流入部に近い中隔欠損 の一部が右房系へ還流する部分還流異常を合併しやすい
型 の壁が欠損し左房と交通する まれ。など他の異常を伴うことがある

⭐ 4型はいずれも周囲に十分な組織のを残すかどうかでカテーテル的デバイス閉鎖の可否が決まる。はrimが確保されやすいのに対し、型・静脈洞型・型は隣接構造(・大静脈・)に近く、外科的閉鎖が中心となる1。

病態

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='interatrial septum'>心房中隔</span>の欠損"] --> B["左房から右房への左→右短絡<br>(右室の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diastolic function'>拡張能</span>が高くコンプライアンスが大きいため)"]
    B --> C["右房・右室の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='volume overload'>容量負荷</span>"]
    C --> D["数十年かけて右房・右室が拡大"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atrial arrhythmia'>心房性不整脈</span>(心房細動・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='flutter'>粗動</span>)"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary blood flow'>肺血流</span>増加が持続すると<br>肺<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vascular remodeling'>血管リモデリング</span>"]
    F --> G["肺高血圧(まれ)"]
    B --> H["深部静脈血栓などが一時的に<br>右→左へ通過"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='paradoxical embolism'>奇異性塞栓</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>など)"]

はわずかにを上回るが、右室は左室よりコンプライアンスが大きいため、この小さなだけで持続的な左→右短絡が生じる。短絡量そのものより、右房・右室が長年そのを受け続けることが臨床像を決める1。

💡 ・では短絡のが体血圧レベルと大きいためが早く上がりやすいのに対し、の短絡は低圧系どうしの交通であるぶん、の中でも肺高血圧・Eisenmenger化への進展は相対的にゆっくりで頻度も低い。

自然閉鎖

⭐ 小さなはしうるが、大きな欠損はを期待できない。 小児200例のでは、診断時の欠損径が4〜5mmの場合56%がし外科閉鎖を要した例はなかったのに対し、10mm超では例が無く77%が外科的またはカテーテル閉鎖を要した。欠損径と診断時年齢がの独立した予測因子である2。この違いは、小さな欠損では経過観察を優先し、大きな欠損では早期から閉鎖を計画するという臨床判断の根拠になる。

症状と身体所見

時期 所見
小児期 多くは無症状。健診ので発見されることが多い
成人期 、(による)、疲労、失神。40代後半までに約7割で低下などの症状が出現する
固定性Ⅱ音分裂(呼吸相で変化しない)、肺動脈領域の
塞栓症状 によるなど

💡 「非チアノーゼ性=右→左短絡は絶対に起きない」わけではない。通常は左→右優位の短絡だが、深部静脈血栓などが一時的に右→左へ通過するとを起こしうる1。

診断

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heart murmur'>心雑音</span>・不整脈・原因不明の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>などで疑う"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transthoracic echocardiography (TTE)'>経胸壁心エコー</span>(TTE)"]
    B --> C["病型・シャント方向・右心<span class='jp-term jp-term-diagram' title='volume overload'>容量負荷</span>を評価"]
    C --> D{"カテーテル閉鎖を計画するか"}
    D -->|"はい"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transesophageal echocardiography (TEE)'>経食道心エコー</span>(TEE)または<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac chamber'>心腔</span>内心エコー(ICE)で最終評価・留置ガイド"]
    D -->|"いいえ/<span class='jp-term jp-term-diagram' title='complicated plaque'>複雑病変</span>"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cardiac MRI'>心臓MRI</span>・カテーテル検査で<br>解剖・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary vascular resistance'>肺血管抵抗</span>を精査"]

心エコーが診断の中心で、病型の鑑別・シャント方向・右室・肺高血圧の有無を評価する。デバイス閉鎖の最終適否・留置ガイド・術後評価には(TEE)または内心エコー(ICE)を用いる。心電図はで、型でを示すことが多い1。

検査 目的・所見
標準確定検査。病型・シャント方向・右房・を一度に評価する
心電図 で、型で、しばしば不完全
胸部X線 短絡が大きいほどは右房・右室の拡大を反映して増大し、肺血管陰影が増加する
の評価で右→左シャントの有無を確認する
・内心エコー デバイス閉鎖前の最終評価、留置時のガイド、術後の・デバイス位置確認

治療

⭐ 閉鎖の主要な適応は右心そのものであり、症状の有無を問わない。 のような他の文脈でも閉鎖が妥当なことがある31。

  • で周囲のrimが十分なら、解剖学的に適する限りカテーテルによるデバイス閉鎖が第一選択となる3。
  • 型・静脈洞型・型は隣接構造(・大静脈・)に近く、外科的閉鎖が中心となる1。
  • 小児で有意な短絡が持続する場合、多くは学童期以降に計画的にを行う。
  • ⚠️ 有意な上昇を伴う肺高血圧(Eisenmenger化)に至った例では閉鎖を避ける。 右→左短絡を失うと体循環への逃げ道がなくなり右心不全が急速に悪化するためで、全体に共通する原則である3。

合併症

を未治療のまま何十年も経過すると、右房・右室の慢性からが生じやすく、これがのリスクを高める。また一時的な右→左シャントを介したそのものが原因不明のの鑑別として重要である。肺高血圧・Eisenmenger化はVSD・PDAに比べてまれだが、大きな欠損を長期間放置した場合には起こりうる1。

まとめ

  • は(最多)・型・静脈洞型・型に分かれ、病型によって周囲のrimの有無からカテーテル閉鎖の可否が決まる。
  • 小児期は無症状が多く、成人期になって初めて不整脈・・として顕在化する。
  • 小さな欠損(4〜5mm)はしやすいが、10mm超はをほぼ期待できない。
  • 閉鎖の主要な適応は右心であり症状の有無を問わない。はデバイス閉鎖、それ以外は外科的閉鎖が中心となる。
  • 高度な上昇(Eisenmenger化)に至った例ではシャント閉鎖を避ける。

出典

  1. 1.Atrial Septal Defects – Clinical Manifestations, Echo Assessment, and Intervention(Clinical Medicine Insights: Cardiology・2014)心房中隔欠損が二次孔型・一次孔型・静脈洞型、まれに冠静脈洞型に分類されること、不整脈・奇異性塞栓・脳膿瘍・肺高血圧・右心不全といった病態生理学的な結果の多くが成人期になって初めて顕在化すること、閉鎖の主要な適応が症状の有無を問わない右心容量負荷であり奇異性塞栓のような他の文脈でも閉鎖が妥当なことがあること、欠損型と施設の経験が経カテーテル的閉鎖と外科的閉鎖の選択を導くことを確認した閲覧 2026-09-07
  2. 2.Predictors of spontaneous closure of isolated secundum atrial septal defect in children: a longitudinal study(Pediatrics・2006)小児200例(診断時年齢中央値5か月)の後方視的コホート研究で、孤立性二次孔型心房中隔欠損の自然閉鎖・退縮は診断時の欠損径に強く依存し、4〜5mmでは56%が自然閉鎖し外科閉鎖を要した例はなかった一方、10mm超では自然閉鎖例が無く77%が外科的またはカテーテル閉鎖を要したこと、欠損径と診断時年齢が自然閉鎖の独立した予測因子であったことを確認した閲覧 2026-09-07
  3. 3.2020 ESC Guidelines for the management of adult congenital heart disease(European Society of Cardiology (ESC)・2020)心房中隔欠損の閉鎖適応は右心容量負荷があれば症状の有無を問わないこと、解剖学的に適していればカテーテルによるデバイス閉鎖を第一選択とすること、有意な肺血管抵抗上昇を伴う肺高血圧では閉鎖を避けるべきであること閲覧 2026-09-07