小児科学

小児科学 · 3-54

非チアノーゼ性先天性心疾患

Acyanotic congenital heart disease

前提:病態
先天性心疾患
前提:正常
心血管系:心臓の中隔形成心血管系:胎児循環
疾患
心房中隔欠損先天性心疾患(非チアノーゼ性・チアノーゼ性)大動脈縮窄二尖大動脈弁肺動脈弁狭窄末梢性肺動脈狭窄
症状
易疲労感

🧠 全体像:は、左→右短絡(ASD、VSD、AVSD、PDA)と(、、)に大別する。左→右短絡では増加から心不全・肺高血圧へ進み、重症閉塞ではに伴って急速にショックとなる。

疑うきっかけと初期評価

家族歴、染色体/形態異常、、、体重増加不良、頻呼吸、哺乳時発汗、異常な拍動、上下肢のを手掛かりにする。は形態異常や高リスク妊娠で行い、出生後は診察、スクリーニング、心電図、胸部X線、心エコーを組み合わせる。

flowchart TD
    A["非チアノーゼ性CHD"] --> B["左→右短絡"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='obstructive lesions'>閉塞性病変</span>"]
    B --> D["ASD"]
    B --> E["VSD"]
    B --> F["AVSD"]
    B --> G["PDA"]
    C --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonic valve stenosis'>肺動脈弁狭窄</span>"]
    C --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='aortic stenosis'>大動脈弁狭窄</span>"]
    C --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='coarctation of the aorta'>大動脈縮窄</span>"]

短絡量を決める考え方

出生直後はが高いため、左→右短絡が目立たないことがある。数週かけてが低下すると、大きなVSDやAVSDでが増え、頻呼吸、哺乳時発汗、、が現れる。長期間の高度は不可逆的肺血管病変と(Eisenmenger syndrome)を来す。大きな短絡や修復されない複雑では、この進展が生後10年以内という早期に起こることもある1。

主な左→右短絡疾患

疾患 解剖・血行動態 代表的所見 治療
ASD から左→右短絡、右房・右室 固定性II音分裂、肺動脈雑音 有意短絡/ではデバイスまたは手術閉鎖
VSD 。大きさとで短絡量が決まる 胸骨左縁の全。大きな欠損では心不全 小欠損はを観察、心不全治療後に適応例で閉鎖
AVSD 心房・心室中隔と共通の形成異常 心不全、肺高血圧。と強く関連 乳児期を中心に外科修復
PDA 大動脈から肺動脈へ連続的短絡 左下の、 早産児では選択例に/、デバイス/手術閉鎖

ASDでは静脈血栓が一時的に右→左へ通過するとを起こしうる。PDAに対する薬は主に早産児の血行動態的に有意なPDAで用い、すべての児にルーチン投与しない2。

💡 率は欠損の大きさ・位置で大きく違う。 小児68例のコホート(6年以上追跡)では、の率は欠損で約3分の1、欠損で3分の2超だった3。小児200例のでは、の・退縮は欠損径に依存し、4〜5mmでは56%がした一方、10mm超では例がなく77%が外科・カテーテル閉鎖を要した4。手術・カテーテル閉鎖の適応は、左室を伴うQp/Qs比1.5以上の有意短絡と、肺高血圧の程度(・が体側の何%か)で判断する5。

閉塞性病変

大動脈縮窄

の狭窄で、重症新生児では下半身血流が動脈管に依存する。後に蒼白、、乏尿、代謝性アシドーシス、ショックを来す。

  • 右上肢と下肢の血圧差、上肢高血圧、弱い/遅いを確認する。
  • 単独では見逃しうるため、4肢血圧と上腕・大腿の脈拍触診が重要である。
  • が疑われればプロスタグランジン E1を開始し6、外科修復またはへつなぐ。新生児・乳児のでは外科修復が標準治療で、・はや年長児などで個別に選ぶ7。
  • 、、との関連がある。

肺動脈弁狭窄・大動脈弁狭窄

では右室と左上の雑音、では左室と右上から頸部へ放散する雑音を認める。は/体血流を来すためプロスタグランジン E1で安定化し、または手術を行う8。

まとめ

  • 左→右短絡は低下後に症状が顕在化し、大きな短絡では乳児心不全を来す。
  • ASDは固定性II音分裂、VSDは全、PDAはが典型である。
  • AVSDはとの関連が強く、早期の肺血管病変を防ぐため時期を逃さず修復する。
  • はだけで除外せず、上下肢血圧とを評価する。

出典

  1. 1.Eisenmenger Syndrome(StatPearls Publishing・2026)大きな左→右短絡や修復されていない複雑先天性心疾患では、Eisenmenger症候群への進展が人生最初の10年という早い時期に起こり得ることを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Patent Ductus Arteriosus in Preterm Infants(Pediatrics・2025)早産児の動脈管開存は正期産児と扱いが異なり、血行動態評価に基づく待機的管理を含めて個別化されること、正期産児・年長児では薬物閉鎖が通常有効でない点で早産児と区別することを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.The natural history of ventricular septal defects(Archives of Disease in Childhood・1999)小児68例の出生コホート(平均6年以上の追跡)で、心室中隔欠損の自然閉鎖率は欠損の位置に強く依存し、6年後の時点で膜様部欠損の約3分の1、筋性部欠損の3分の2超が自然閉鎖したこと、外科閉鎖を要した13例中12例が膜様部欠損であったことを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Predictors of spontaneous closure of isolated secundum atrial septal defect in children: a longitudinal study(Pediatrics・2006)小児200例(診断時年齢中央値5か月、範囲0か月〜13.9歳)の後方視的コホート研究で、孤立性二次孔型心房中隔欠損の自然閉鎖・退縮は診断時の欠損径に強く依存し、4〜5mmでは56%が自然閉鎖し外科閉鎖を要した例はなかった一方、10mm超では自然閉鎖例が無く77%が外科的またはカテーテル閉鎖を要したことを確認した。閲覧 2026-08-27
  5. 5.Catheter Management of Ventricular Septal Defect(StatPearls Publishing・2026)左室容量負荷を伴う血行動態的に有意な短絡(Qp/Qs比1.5以上)が心室中隔欠損の閉鎖適応となること、肺動脈収縮期圧が体血圧の50%未満かつ肺血管抵抗が体血管抵抗の3分の1未満であることが閉鎖の目安であること、肺動脈収縮期圧が体血圧の3分の2超・肺血管抵抗が体血管抵抗の3分の2超・右→左短絡(Eisenmenger化)を伴う高度肺高血圧では閉鎖を行うべきでないことを確認した。閲覧 2026-08-27
  6. 6.Acute therapy of newborns with critical congenital heart disease(Translational Pediatrics・2019)動脈管依存性大動脈縮窄を含む新生児重症先天性心疾患では、血行動態に基づく初期安定化とプロスタグランジンE1投与により、動脈管閉鎖後の急変(ショック・乏尿・代謝性アシドーシス)に対応することを確認した。閲覧 2026-08-27
  7. 7.The Society of Thoracic Surgeons Clinical Practice Guidelines on the Management of Neonates and Infants With Coarctation(The Annals of Thoracic Surgery・2024)新生児・乳児の単純型大動脈縮窄では外科修復を標準治療とし、バルーン血管形成術・ステントは再狭窄や年長児など個々の解剖・臨床状態に応じて選択することを確認したSTS臨床診療ガイドラインである。閲覧 2026-08-27
  8. 8.Indications for cardiac catheterization and intervention in pediatric cardiac disease: a scientific statement from the American Heart Association(Circulation・2011)小児先天性心疾患における経カテーテル診断・治療(大動脈縮窄のバルーン血管形成術/ステント、肺動脈弁・大動脈弁の重症狭窄へのバルーン弁形成術を含む)の適応を示したAHA科学声明であることを確認した。閲覧 2026-08-27