脳神経内科学

脳神経内科学 · G2-25

脳血管障害の分類

G2-25: Classification of cerebrovascular disorders

前提:病態
脳血管障害(低酸素・虚血・梗塞)頭蓋内出血
前提:正常
中枢神経・神経解剖:血液供給
疾患
もやもや病可逆性後頭葉白質脳症中枢神経表在性ヘモジデリン沈着症頭蓋内動脈硬化性病変動静脈奇形脳梗塞脳静脈洞血栓症脳卒中

🧠 全体像:は、による虚血、血管破綻による出血、静脈系障害、血管、血管調節・に大別できる。と画像で病型を早く分けることが、、止血、など相反する治療を選ぶ出発点になる。

基本分類

大分類 主な病態 代表例
虚血性 動脈閉塞・による局所虚血 、
出血性 内またはへの出血 、
脳静脈系障害 障害による静脈圧上昇、浮腫、
・血管症 異常血管構築、血管壁脆弱性、進行性狭窄 、、、
血管調節・ 破綻、、可逆性血管収縮 、、

と急性は多くがの頭蓋内・頭蓋外軸性出血であり、狭義の自然発症脳卒中とは分けて扱う。

虚血性脳血管障害

は機序から、血栓性、、、その他の原因、不明原因へ整理する1。その他には動脈解離、血管炎、血液凝固異常などが含まれる。

💡 この5分類(TOAST分類)は単一の原因を1つ選ぶ設計である。 その後、複数の病因が併存する患者も多いことを踏まえ、動脈硬化・・・その他の原因に解離の有無を加えた各病態について、それぞれ「原因である確からしさ」を段階評価するASCOD表現型分類が提案された2。さらに、非ラクナ型で狭窄も明らかなもないを「不明の塞栓性脳卒中(ESUS)」として抗凝固薬の効果を検証すべき独立した臨床群と位置づける考え方が提唱された3が、ESUSに対し4・5をアスピリンと比較した無作為化試験はいずれも脳卒中再発の有意な減少を示せなかった。

は、局所脳・脊髄・による一過性神経機能障害で、を伴わないものとする組織学的定義を用いる6。症状が24時間以内に消失するという時間基準だけでは定義しない。短時間で消失してものとなるため緊急評価が必要である。

出血性脳血管障害

病型 主な部位・原因 典型的な手掛かり
、、抗凝固、など 急な、頭痛、嘔吐、意識障害
多くは破裂 、、意識障害
再灌流、、塞栓性梗塞など 虚血病変内の二次性出血

静脈系・血管奇形・血管症

  • :頭痛、、痙攣、を多彩に呈し、妊娠、経口避妊薬、感染、悪性腫瘍、が背景となる。
  • :を介さず動脈から静脈へ短絡し、出血、痙攣、頭痛の原因となる。
  • :低流速ので、出血や痙攣を来しうる。
  • :系の進行性狭窄・閉塞と形成を特徴とし、虚血と出血の双方を起こす。
  • :高齢者の皮質・髄膜小血管にが沈着し、や脳表を来す。
flowchart TD
    A["急性の局在神経症状"] --> B["頭部<span class='jp-term jp-term-diagram' title='noncontrast CT'>単純CT</span>を中心に出血を除外"]
    B --> C["出血あり"]
    B --> D["明らかな出血なし"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intracerebral hemorrhage, ICH'>脳内出血</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subarachnoid hemorrhage'>くも膜下出血</span>を鑑別"]
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ischemic stroke'>虚血性脳卒中</span>を評価"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='computed tomography angiography'>CTA</span>・MRAで動脈閉塞や解離を評価"]
    F --> H["症状消失でも<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient ischemic attack'>TIA</span>として緊急評価"]
    A --> I["頭痛・痙攣・非<span class='jp-term jp-term-diagram' title='arterial'>動脈性</span>病変なら静脈系も検討"]
    I --> J["CTV・MRVで静脈洞を評価"]

初期対応の原則

発症時刻または、気道・呼吸・循環、血糖、使用を直ちに確認する。血圧は病型との適応で目標が異なるため、病型未確定の段階で急激に低下させない。画像診断と並行して脳卒中チームへ連絡する。

まとめ

  • は虚血、出血、静脈系、・血管症に分けると整理しやすい。
  • は24時間基準ではなく、を伴わない一過性虚血という組織学的定義で理解する。
  • ・は、通常の脳卒中分類とは別に扱う。
  • 同じ症状でも治療が逆方向になりうるため、早期画像で病型を確定する。

出典

  1. 1.Classification of subtype of acute ischemic stroke. Definitions for use in a multicenter clinical trial. TOAST. Trial of Org 10172 in Acute Stroke Treatment(Stroke・1993)臨床所見と補助検査結果に基づき、脳梗塞病型を主幹動脈アテローム血栓性・心原性塞栓・小血管閉塞・その他の原因による脳卒中・原因不明の脳卒中という5つの病型(各々「確実」「疑い」の確信度付き)に分類するTOAST分類を提案し、20例の評価で高い評価者間一致率を示したこと閲覧 2026-08-27
  2. 2.The ASCOD phenotyping of ischemic stroke (Updated ASCO Phenotyping)(Cerebrovascular Diseases・2013)脳梗塞患者に併存しうるA(動脈硬化)・S(小血管病)・C(心原性)・O(その他の原因)・D(動脈解離)の各病態について、原因である確信度を0(無し)〜3(存在するが無関係の可能性)・9(評価不十分)の段階で個別に評価するASCOD表現型分類を提案し、単一原因のみを割り当てるのではなく複数病因の重複を捉える設計としたこと閲覧 2026-08-27
  3. 3.Embolic strokes of undetermined source: the case for a new clinical construct(The Lancet Neurology・2014)原因不明脳梗塞(全脳梗塞の約25%)の多くは血栓塞栓性であるという知見に基づき、主幹動脈に有意な狭窄がなく心原性塞栓源も同定されない非ラクナ型脳梗塞を「塞栓源不明の塞栓性脳卒中(ESUS)」として定義し、抗凝固薬が抗血小板薬より有効な可能性があるとして無作為化試験を行うべき治療対象の臨床群であると提案したこと閲覧 2026-08-27
  4. 4.Rivaroxaban for Stroke Prevention after Embolic Stroke of Undetermined Source(The New England Journal of Medicine・2018)ESUS患者7213例をリバーロキサバン15mg/日群とアスピリン100mg/日群に無作為化した試験(NAVIGATE ESUS)で、脳卒中・全身性塞栓症の複合再発リスクに有意差はなく(年率5.1% 対 4.8%)、リバーロキサバン群で大出血が有意に多く(年率1.8% 対 0.7%)、無益性のため試験が早期中止されたこと閲覧 2026-08-27
  5. 5.Dabigatran for Prevention of Stroke after Embolic Stroke of Undetermined Source(The New England Journal of Medicine・2019)ESUS患者5390例をダビガトラン(150mgまたは110mg1日2回)群とアスピリン100mg/日群に無作為化した試験(RE-SPECT ESUS)で、脳卒中再発率に有意差はなく(年率4.1% 対 4.8%、ハザード比0.85)、ダビガトランはアスピリンに優らなかったこと閲覧 2026-08-27
  6. 6.Definition and Evaluation of Transient Ischemic Attack: A Scientific Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association/American Stroke Association(American Heart Association / American Stroke Association・2009)症状持続時間(24時間以内)による旧来の時間依存性の定義を廃し、急性梗塞を伴わない一過性の局所脳・脊髄・網膜虚血という組織診断に基づく新定義を提唱したこと閲覧 2026-08-27