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Disease Atlas · 循環器 · 先天性疾患

卵円孔開存

Patent foramen ovale

別名
PFO
臓器系
循環器神経
科目
CardiologyNeurologyPathology
トピック
循環器内科 A-14:心房・心室中隔欠損と先天性心疾患神経内科 G2-27:若年成人の脳血管障害病理学 C/106:脳血管障害(低酸素・虚血・梗塞)
鑑別疾患
心房細動
続発疾患
脳梗塞一過性脳虚血発作
治療薬
アセチルサリチル酸クロピドグレル

🧠 全体像は、成人の約4人に1人に残存する「ほぼ正常変異」に近いの交通路である。見つかること自体は異常ではなく、大多数は生涯無症状のまま経過し、健診や他疾患の精査で偶発的に指摘されるだけで終わる。臨床的な意味を持つのはただ一つ、静脈側にできた血栓が体循環(脳を含む)へ抜け出る「」の通り道になりうることで、それが実際に問題になるのは、若年ので他の原因が見つからず、を介した塞栓が疑われるときに限られる。「見つかった=原因」と即断しないことが、この主題を扱う診療の骨格である。

病態と有病率

  • には右房から左房への生理的なシャントとして機能する構造で、出生後は左房圧の上昇により機能的に閉鎖する。この解剖学的な交通が閉鎖しきらずに成人期まで残存したものがである。
  • は一般成人人口の約25%に残存する、ほぼ正常変異といってよい頻度の所見である1
  • 通常は左房圧がを上回るため交通は機能的に閉じているが、咳・などが一過性に上昇する状況でが顕在化する。

奇異性塞栓の機序

flowchart TD
    A["下肢<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deep vein'>深部静脈</span>・骨盤内静脈などの血栓"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary circulation'>肺循環</span>を経ずに右房から左房へ短絡"]
    C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patent foramen ovale, PFO'>卵円孔開存</span>という交通路の存在"] --> B
    D["咳・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='straining (at defecation)'>怒責</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Valsalva maneuver'>Valsalva手技</span>などで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='right atrial pressure'>右房圧</span>が一過性に上昇"] --> B
    B --> E["体循環(脳・網膜など)へ塞栓"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cryptogenic'>潜因性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='transient ischemic attack, TIA'>一過性脳虚血発作</span>"]
    C --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patent foramen ovale, PFO'>卵円孔開存</span>部での局所的な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='thrombus formation'>血栓形成</span>"]
    G --> E

💡 そのものは「通り道」であって「」ではない。 塞栓の由来は静脈系にできた血栓であり、はそれが動脈系へ抜けるための経路を提供しているにすぎない(一部は交通路自体での局所的なもありうる)1。したがってを伴うの診療では、下肢・骨盤内静脈血栓などそのものの検索も並行して行う

潜因性脳梗塞との関連をどう評価するか

一般人口の約25%がを持つため、患者にが見つかっても、それだけではなのか原因なのか判断できない。患者ではの頻度が対照群より高い(群50%に対し対照群15%)ことが報告されており、「である」という文脈そのものがの病的意義を引き上げる1

⚠️ 心房細動の除外が前提である。 心房細動など明確な源があれば、それが真の原因であり、にすぎない可能性が高い。長時間心電図モニタリングでを検索しないまま、を安易に「原因」とづけない。

RoPEスコアは、患者においてに因果的に関与している可能性を評価する臨床スコアで、高血圧の既往、糖尿病の既往、・TIAの既往、喫煙歴、画像上の皮質梗塞の有無、年齢を組み合わせて算出する2。血管危険因子が少なく若年であるほど、に起因する可能性が高いという考え方に基づく——高齢で血管危険因子の多い患者のは、動脈硬化性の機序による合併した所見である可能性の方が高い。構成6項目の配点・合計点ごとの起因分画はRoPEスコア側を参照する。

診断

にValsalva負荷を伴うテスト(撹拌したで作った微小を静脈から注入し、左房へのの出現を観察する)を組み合わせるのが最も感度の高い評価法である1

治療

大多数のは無症候性で治療を要さない。の原因として疑われた場合の対応は次のように分かれる。

状況 対応
(高齢、血管危険因子が多い、他の機序が明確) 危険因子管理と病型に応じた抗血栓療法。の適応にならない
若年・高リスク形態・他の原因が徹底的に除外されている カテーテルを検討
の適応基準を満たさない、または本人が希望しない 療法(など)

⚠️ カテーテル療法より再発を減らすのは、適応を絞った例に限られる。 クラスI推奨の対象は、年齢18〜60歳、PFO関連の既往があり、他の原因を徹底的に除外でき、かつ大きな瘤(中隔が右房または左房内へ10mm以上、または合計15mm以上可動)・長いトンネル型PFOといった高リスク形態を伴う例である3。この条件から外れる例(高齢、血管危険因子が多い、PFOの形態が典型的でない)ではの利益は明確でなく、一律にを勧めるものではない。

RESPECT長期試験・REDUCE試験・CLOSE試験を含む近年のでは、上記の適応を満たす患者集団において、が薬物療法単独と比較して一貫して優れた転帰を示している3

鑑別と関連病態

疾患・症候 との関係
心房細動 別のを原因と考える前に除外する必要がある
を介したが起こしうる病態
頸動脈以外のとしてを介したを評価する対象の一つ

まとめ

  • は一般成人の約25%に残存する所見で、見つかること自体は異常ではない。
  • 問題になるのは静脈系血栓が体循環へ抜けるの経路になりうる点で、臨床的意味を持つのは若年ので他の原因が見つからないときに限られる。
  • 心房細動などの源の除外が前提で、RoPEスコアはの因果的関与の評価を助ける。
  • 診断は+Valsalva負荷テストが最も感度が高い。
  • カテーテル療法より再発を減らすのは、若年・高リスク形態・他の原因が無いという適応を満たす例に限られる。

出典

  1. 1.Patent Foramen Ovale(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2022)卵円孔開存が一般成人人口の約25%に残存する所見であること、奇異性塞栓(静脈側から体循環への塞栓の導管となる)とin situ血栓形成の2つの機序で症候性となりうること、潜因性脳梗塞患者の50%に右左シャントを認めるのに対し対照群では15%であったこと、経食道心エコーが最も感度の高い診断法でありValsalva手技などの負荷を伴う造影エコーを併用すること閲覧 2026-08-12
  2. 2.Transcatheter Patent Foramen Ovale Closure(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)クラスI推奨として18〜60歳でPFO関連脳梗塞の既往があり他の脳梗塞原因を徹底的に除外できた潜因性・塞栓性脳梗塞例が経カテーテル的閉鎖術の適応となること、高リスクPFO形態として大きな右左短絡・心房中隔瘤(心房中隔平面から右房または左房内へ10mm以上、または合計15mm以上の可動)・長いトンネル型PFOが挙げられること、RESPECT長期試験・REDUCE・CLOSEを含む近年のRCTがPFO閉鎖術は薬物療法単独と比較して一貫して優れた転帰を示したこと閲覧 2026-08-12
  3. 3.Risk of Paradoxical Embolism (RoPE) Score(MDCalc)RoPEスコアが潜因性脳梗塞患者において卵円孔開存が脳梗塞に関連する可能性を評価するために、高血圧の既往・糖尿病の既往・脳梗塞またはTIAの既往・喫煙歴・画像上の皮質梗塞の有無・年齢を組み合わせて算出されること閲覧 2026-08-12