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RoPEスコア

RoPE score

別名
Risk of Paradoxical Embolism score
臓器系
循環器神経
科目
Neurology
トピック
神経内科 G2-27:若年成人の脳血管障害

🧠 全体像:RoPEスコアは、を持つ患者において、そのが本当にの原因だったのか、それとも合併しただけのなのかを推定するための0〜10点のスコアである。血管危険因子(高血圧・糖尿病・喫煙・脳卒中/TIA既往)が少なく、年齢が若く、画像上の梗塞が皮質にあるほど点数が高くなる——これは「血管危険因子が少ない若年患者のは、動脈硬化性機序では説明しにくく、を介したの関与を疑う根拠が強まる」という考え方をそのまま数値化したものである。点数が高いほどの原因である確率(起因分画)が高く、かつ再発率は低いという、直感に反して見える対応関係を持つ。

目的と適用場面

内容
目的 を伴う患者で、そのの原因である確率(PFO起因分画)を層別化する
対象 (他の原因が徹底的に除外された)と診断され、が確認された患者
使う場面 カテーテルの適応を検討する場面での、の評価
評価しないもの の形態(瘤の有無、シャント径、トンネルの長さ)、の再発リスクそのもの(起因分画が高いほど再発率はむしろ低い)

12のを統合した RoPE Study のデータ(患者3,023例)をもとに、の有無を予測する多変量モデルから導出された1

構成要素と配点

項目 基準
高血圧 既往なし 1
糖尿病 既往なし 1
脳卒中/TIA 既往なし 1
喫煙 非喫煙者 1
画像所見 皮質梗塞あり 1
年齢 18〜29歳 5
年齢 30〜39歳 4
年齢 40〜49歳 3
年齢 50〜59歳 2
年齢 60〜69歳 1
年齢 70歳以上 0

合計0〜10点1。⭐ 血管危険因子4項目(高血圧・糖尿病・喫煙・脳卒中/TIA既往)は「既往が無いこと」に1点ずつ配点される——これは「危険因子が無い患者のほど、動脈硬化以外の機序(を介した)が疑わしくなる」という考え方の裏返しである。年齢は10年刻みで最大5点まで配点され、単独の項目としては最も重みが大きい。

💡 年齢70歳以上では年齢の項目が必ず0点になる。 高齢で脳卒中の既往や血管危険因子を伴う患者は、が見つかっても、動脈硬化性の機序によるにたまたま合併したである可能性の方が高く、RoPEスコアはその臨床的直感を数値として裏づける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Cryptogenic'>潜因性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>患者に<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patent foramen ovale, PFO'>卵円孔開存</span>を認める"] --> B["高血圧・糖尿病・喫煙・脳卒中/TIA既往の有無を確認"]
    A --> C["画像上の皮質梗塞の有無を確認"]
    A --> D["年齢を確認"]
    B --> E["各項目の点数を合算(危険因子が無いほど加点)"]
    C --> E
    D --> E
    E --> F["合計0〜10点のRoPEスコア"]
    F --> G["点数が高いほど<span class='jp-term jp-term-diagram' title='patent foramen ovale, PFO'>卵円孔開存</span>が<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cerebral infarction'>脳梗塞</span>の原因である確率が高い"]
    F --> H["点数が高いほど2年以内の脳卒中/TIA再発率は低い"]

解釈:合計点とPFO起因分画・再発率

RoPEスコア PFO PFO起因分画(原因である確率) 2年以内の脳卒中/TIA再発率
0〜3点 23% 0%(0〜4%) 20%(12〜28%)
4点 35% 38%(25〜48%) 12%(6〜18%)
5点 34% 34%(21〜45%) 7%(3〜11%)
6点 47% 62%(54〜68%) 8%(4〜12%)
7点 54% 72%(66〜76%) 6%(2〜10%)
8点 67% 84%(79〜87%) 6%(2〜10%)
9〜10点 73% 88%(83〜91%) 2%(0〜4%)

(一般人口のPFOを対照率25%と仮定した場合の推定値。95%は括弧内1

⚠️ PFO起因分画が高い層ほど、脳卒中/TIA再発率は低い。 一見するとだが、これは「が原因であるは、動脈硬化性のよりも再発しにくい」という臨床像を反映している——原著者らはこの点を、の対象選択を難しくする課題として指摘している1。起因分画が高い患者ほどで「防げる再発」の絶対数自体は小さくなりうるため、スコアはの推定に用い、再発リスクそのものの評価は代替しない。

臨床応用:閉鎖術適応との関係

RoPEスコア7点以上が、の原因である可能性が高いことを示す慣用的な閾値として使われてきた2側で扱っているとおり、カテーテルのクラスI推奨は年齢18〜60歳・PFO関連の既往・他の原因の徹底的な除外・高リスク形態(大きな瘤・長いトンネル型PFO)を満たす例に限られており、RoPEスコアはこの適応判断のうち「が本当に原因かどうか」を評価する一助として位置づけられる。の詳しい適応基準・エビデンスは側を参照する。

限界と使ってはいけない場面

⚠️ RoPEスコアを構成する12のコホート以外での外部検証は行われていない。 ESC・NHS Englandの両ガイドラインが、この検証の欠如をスコアの限界として指摘している2

⚠️ では、実際にが原因のであっても、年齢による減点構造のためスコアが構造的に低くなりやすい。 70歳以上では年齢項目が必ず0点になるため、適応をRoPEスコア単独で判断すると、真にが原因である症例を見落としうる2

⚠️ 瘤の有無・シャント径・トンネルの長さなど、そのものの形態学的特徴を一切反映しない。 これらの高リスク形態は、RoPEスコアとは別にで評価する必要がある1

⚠️ 低スコアであっても、の原因である可能性を完全には否定できない。原著者ら自身が、対照群のPFOの仮定次第で低スコア層の起因分画推定値が変動しうることを注意点として述べている1

まとめ

  • RoPEスコアは、患者におけるへの因果的関与(起因分画)を推定する0〜10点のスコアである。
  • 血管危険因子(高血圧・糖尿病・喫煙・脳卒中/TIA既往)が無いこと各1点、画像上の皮質梗塞1点、年齢(18〜29歳5点〜70歳以上0点)で構成される。
  • 起因分画は0〜3点で0%、9〜10点で88%まで上昇する一方、2年再発率は0〜3点で20%から9〜10点で2%へ低下するという逆の対応関係を持つ。
  • 7点以上が関連を疑う慣用的な閾値だが、外部検証の欠如とでの構造的な低スコア化という限界があり、単独で適応を決めるものではない。

出典

  1. 1.An index to identify stroke-related vs incidental patent foramen ovale in cryptogenic stroke(Neurology(American Academy of Neurology)(Kent DM, Ruthazer R, Weimar C, et al.)・2013)RoPEスコアの原著。Table 4で高血圧の既往なし・糖尿病の既往なし・脳卒中/TIA既往なし・非喫煙者が各1点、画像上の皮質梗塞ありが1点、年齢(18〜29歳5点、30〜39歳4点、40〜49歳3点、50〜59歳2点、60〜69歳1点、70歳以上0点)で合計0〜10点と定義していること。Table 5でスコア層ごとのPFO有病率・PFO起因分画(attributable fraction)・2年以内の脳卒中/TIA再発率を報告しており、0〜3点でPFO起因分画0%(95%CI 0〜4%)・2年再発率20%、9〜10点で起因分画88%(95%CI 83〜91%)・2年再発率2%であること。Discussionで、外部検証コホートでの妥当性確認が行われていないこと、心房中隔瘤の有無やシャント径などPFOの形態学的特徴をモデルに含められなかったことを限界として述べていること閲覧 2026-08-12
  2. 2.When Should Physicians Consider Referring Elderly Patients with Suspected PFO-Related Stroke for Device Closure?(Journal of Clinical Medicine(MDPI)(Varia A, Roberts D)・2025)Introductionで、卵円孔開存が脳梗塞の原因である確率が従来RoPEスコアで判定されており、7点以上がPFO起因の可能性が高いことを示す指標として使われてきたことを確認したこと。Discussionで、ESC・NHS Englandの両ガイドラインがRoPEスコアの外的妥当性検証の欠如という限界を指摘していること、高齢患者は年齢による減点構造のため実際にPFOが原因の脳梗塞でも構造的に低いRoPEスコアになりやすく、高齢者の閉鎖術適応判断にRoPEスコア単独では不十分であることを確認したこと閲覧 2026-08-12