組織病理学

組織病理学 · H1-019

動脈の粥状硬化

Atheromatosis arteriae

描出疾患
アテローム性動脈硬化症

🧠 全体像:は、大・の内膜に、とからなる性プラークが形成される病変である。低倍率で「内膜側へ偏った隆起」、高倍率で「→→壊死性→石灰化」を追う。

標本の要点

項目 所見
臓器 大型から中型の動脈
染色 ・染色(HE)
病変部位 内膜
表層 とからなる
深部 細胞残骸、細胞外脂質、を含む壊死性
付随所見 、慢性炎症細胞、

発症機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='endothelial dysfunction'>内皮機能障害</span>と内膜への<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>蓄積"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='low-density lipoprotein'>LDL</span>の修飾・酸化"]
    B --> C["単球が内膜へ遊走"]
    C --> D["マクロファージが脂質を取り込み<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foam cells'>泡沫細胞</span>化"]
    D --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty streak'>脂肪線条</span>"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='smooth muscle cells'>平滑筋細胞</span>が内膜へ遊走・増殖"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='collagen fiber'>膠原線維</span>を産生し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fibrous cap'>線維性被膜</span>を形成"]
    D --> H["細胞死と細胞外<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipid accumulation'>脂質蓄積</span>"]
    H --> I["壊死性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lipid core'>脂質コア</span>"]
    G --> J["進行した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='atheroma'>粥腫</span>性プラーク"]
    I --> J

観察の順序

低倍率

  1. 、内膜、中膜、外膜の向きを決める。
  2. 病変が中膜ではなく、内膜からへ隆起していることを確認する。
  3. と、その深部にある淡い壊死性を分ける。
  4. プラークによると、中膜の菲薄化を評価する。

高倍率

所見 読み方
とからなり、表面は内皮に覆われる
脂質を取り込んだマクロファージで、淡く状の細胞質を示す
壊死性 細胞外脂質、壊死細胞残骸、炎症産物が混在する
標本作製で溶けた針状の抜け跡
炎症細胞 マクロファージとT細胞が被膜肩部やコア周辺に集まる
石灰化 不整な濃青紫色沈着として認める

💡 のはとである。内皮細胞は表面を覆うが、被膜の主要な構成細胞として列挙しない。

💡 不安定さを決めるのは「厚み・コア・炎症」の三つである。 破裂のとされる薄いをもつ(thin-cap fibroatheroma:TCFA)は、壊死性の上を覆う被膜の厚さが65 µm以下で、そこにマクロファージとが浸潤したものと定義される。被膜が薄くなる過程そのものが、マクロファージから放出されるによる分解と、のアポトーシスによる産生側の減少で説明される1。標本で被膜の厚さ、コアの大きさ、被膜肩部の炎症細胞を三つセットで見るのは、この定義に対応している。

💡 狭窄の強さと破裂しやすさは別の軸である。 後の697例を中央値3.4年追跡したPROSPECT研究では、3年間の主要心血管事故20.4%のうち11.6%が治療していない非から生じ、その多くはベースラインでは上軽度の狭窄(狭窄32.3%)だった。再発事故と独立して関連したのはプラーク量70%以上(5.03)、最小内腔面積4.0 mm2以下(同3.21)、でTCFAと分類されること(同3.35)である2。標本で内腔がまだ広く見えても、被膜が薄く壊死性コアが大きければ危険な病変として扱う。

プラークの転帰

変化 臨床的意味
徐々に増大 と慢性虚血を起こす
被膜破裂・びらん からへ進みうる。頻度は破裂が最多で、びらんはそれより少ないが50歳未満の女性など若年者の血栓症では目立ち、その基盤病変は病的または厚い被膜をもつである。石灰化結節は最も頻度が低い1
プラーク体積が急に増え、狭窄が悪化する。壊死性コアを拡大させる主要因でもある1
石灰化 慢性病変を示すが、石灰化量だけで破裂危険性は決まらない3
中膜 動脈瘤形成に関与する

鑑別

病変 鑑別点
石灰化が中膜にあり、内腔を狭窄する性プラークを作らない
細動脈壁のまたは過形成が主体で、を欠く
内の血栓が線維化・し、内膜内のとは分布が異なる
血管炎 血管壁の炎症・壊死が主体で、典型的なとを欠く

まとめ

  • 粥状動脈硬化は、大・の内膜に生じる性プラークである。
  • 、壊死性、、炎症細胞、石灰化を順に確認する。
  • プラークはだけでなく、破裂・・動脈瘤の基盤になる。破裂しやすさは被膜の厚さ(65 µm以下)、壊死性コアの大きさ、で決まり、石灰化の量では決まらない。
  • やとは、病変の層との有無で区別する。

出典

  1. 1.Pathophysiology of atherosclerosis plaque progression(Heart, Lung and Circulation・2013)プラーク破裂の前駆病変とされる薄い線維性被膜をもつ粥腫(TCFA)は、壊死性コアの上を覆う被膜の厚さが65 µm以下で、マクロファージとTリンパ球が浸潤したものと定義されること、被膜はマクロファージ由来のMMP放出と平滑筋細胞のアポトーシスによって薄くなること、プラーク内出血が壊死性コア拡大の主要因であることを確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.A prospective natural-history study of coronary atherosclerosis(New England Journal of Medicine・2011)急性冠症候群の697例を中央値3.4年追跡したPROSPECT研究で、3年間の主要心血管事故は20.4%、うち非責任病変由来が11.6%であり、事故を起こした非責任病変はベースラインでは血管造影上軽度(平均径狭窄32.3±20.6%)だったこと、多変量解析で再発事故と独立して関連したのはプラーク量70%以上(ハザード比5.03)・最小内腔面積4.0 mm2以下(同3.21)・血管内超音波でのthin-cap fibroatheroma分類(同3.35)だったことを確認した。閲覧 2026-08-24
  3. 3.Coronary Artery Calcification and its Progression: What Does it Really Mean?(JACC Cardiovascular Imaging・2018)冠動脈石灰化は0.5〜15.0 µmの微小石灰化として始まり3 mmを超える板状沈着へ成長すること、画像研究では斑状(spotty)石灰化が不安定プラークの予測因子とされる一方、より広汎な石灰化はむしろ安定したプラークと関連するとされており、石灰化の量そのものが破裂危険性の指標にならないことを確認した。閲覧 2026-08-24