組織病理学

組織病理学 · H1-018

アルコール関連脂肪性肝炎・肝硬変

Alcohol-associated steatosis and steatohepatitis

描出疾患
アルコール性肝疾患

🧠 全体像:化に、肝細胞の、、、胆汁うっ滞、と結節形成が加わっている。単純な「」ではなく、が肝硬変へ進んだ像として読む。

標本の要点

項目 所見
臓器 肝臓
染色 ・染色(HE)
基本病変 化、、炎症、線維化
細胞内
付随所見 胆汁うっ滞、肝細胞アポトーシス、胆管反応
進行像 で囲まれた

発症機序

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='chronic'>慢性的</span>な<span class='jp-term jp-term-diagram' title='excessive drinking'>過剰飲酒</span>"] --> B["エタノール代謝でNADH/NAD+比が上昇"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fatty acid beta-oxidation'>脂肪酸β酸化</span>を抑制・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='triglyceride'>中性脂肪</span>合成を促進"]
    C --> D["肝細胞<span class='jp-term jp-term-diagram' title='steatosis'>脂肪化</span>"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acetaldehyde'>アセトアルデヒド</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='oxidative stress'>酸化ストレス</span>・腸管由来炎症刺激"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatocellular injury'>肝細胞傷害</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ballooning degeneration'>風船様変性</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neutrophilic inflammation'>好中球性炎症</span>"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hepatic stellate cell'>肝星細胞</span>活性化"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sinusoids'>類洞</span>周囲線維化・架橋線維化"]
    H --> I["肝硬変"]

エタノール代謝では「NADが減る」より、NADHが増えてNADH/NAD+比が上昇すると捉える。これがを抑え、の蓄積を促す。

💡 飲酒量はまでしか説明しない。 1日40 gを超えて飲む人の大半はになるが、・線維化・肝硬変まで進むのはその一部にとどまる。このは遺伝的・な因子と非遺伝的因子で説明されており、飲酒量だけからこの標本のような進行像を予測することはできない1。

観察の順序

低倍率

  1. 全体に分布する多数のからを確認する。
  2. 太いがをへ区切るを探す。
  3. 隔壁内の小をとして確認する。
  4. だけでなく、炎症と線維化の広がりを評価する。

高倍率

所見 読み方
化 一つの大きな脂肪滴が核を辺縁へする
肝細胞が腫大し、淡い網状の細胞質を示す
傷害の不整な好酸性凝集物で、などからなる
傷害肝細胞の周囲へ好中球が集まるを示しうる
胆汁うっ滞 肝細胞または内に黄褐色の胆汁栓を認める
縮小し強く好酸性となった肝細胞で、Councilman小体とも呼ばれる
胆管反応 線維化部に小型胆管様構造が増える

⭐ は「+肝細胞+小葉内炎症」で捉える。だけの単純性とは区別する。

解釈上の注意

  • はアルコール関連肝障害に特異的ではなく、代謝機能障害関連、、などでもみられる。本体は8/18を主体にp62とユビキチンを含むで、慢性胆汁うっ滞や肝細胞性腫瘍でも観察される2。
  • Councilman小体もに限らず、さまざまなで生じるアポトーシス肝細胞である。
  • アルコール関連と代謝機能障害関連は形態が大きく重なるため、飲酒歴と代謝背景が必要である。2023年の多学会Delphiコンセンサスは脂肪性肝疾患(SLD)を概念として、/NASHを/MASH(/)へ改称した。心代謝リスク因子を1つ以上もちながら週140〜350 g(女性)・週210〜420 g(男性)を飲む例は、でもでもなくMetALDという中間の枠に置かれる3。旧称の/NASHは実習・試験ではまだ使われるので、両方の対応を覚えておく。
  • 胆汁うっ滞と胆管反応は進行した傷害に伴いうるが、アルコール関連肝障害の必須所見ではない。

鑑別

病変 鑑別点
代謝機能障害関連 組織像が大きく重なり、飲酒歴・代謝リスクの評価が必要
・小葉内炎症とアポトーシスを示すが、原因ウイルス検査で確認する
胆汁うっ滞性肝疾患 や胆汁うっ滞が主体で、所見との比重が異なる
若年者の様像では代謝検査を組み合わせる

まとめ

  • に、、、線維化・肝硬変が加わるため、単純性ではなくの進行像である。
  • エタノール代謝によるNADH/NAD+比上昇が脂肪蓄積を促し、と炎症が細胞傷害・線維化を進める。
  • とを同義にしない。
  • 組織像だけではアルコール関連と代謝関連を確定できず、臨床背景を統合する。

出典

  1. 1.Alcoholic liver disease(Nature Reviews Disease Primers・2018)1日40 gを超える飲酒者の大半がアルコール性脂肪肝を来す一方、より進行した病期へ進むのは一部にとどまり、この個人差は遺伝的・エピジェネティックな因子と非遺伝的因子で説明されること、断酒が全病期を通じて最良の治療であることを確認した。閲覧 2026-08-24
  2. 2.Mallory-Denk-bodies: lessons from keratin-containing hepatic inclusion bodies(Biochimica et Biophysica Acta・2008)Mallory-Denk小体はケラチン8/18を主体にp62・ユビキチンを含む封入体で、アルコール性・非アルコール性いずれの脂肪性肝炎に加えて慢性胆汁うっ滞、代謝性疾患、肝細胞性腫瘍にもみられ、特定の病因に特異的ではないことを確認した。閲覧 2026-08-24
  3. 3.A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature(Hepatology・2023)2023年の多学会Delphiコンセンサスが脂肪性肝疾患(SLD)を上位概念に据え、NAFLD/NASHをMASLD/MASHへ改称し、MASLD相当の心代謝リスク因子を1つ以上もちながら週140〜350 g(女性)・週210〜420 g(男性)の飲酒がある例をMetALDとして区別したこと、steatohepatitisという語は病態概念として残されたことを確認した。閲覧 2026-08-24