病理学

病理学 · A/11

脂肪変性(脂肪沈着/脂肪化)

Types of fatty degeneration and its organ manifestation

タグ
Mechanism / 機序High-yield / ポイント

🧠 全体像:脂肪変性は「脂肪酸→TAG→リポタンパクとして運び出す」という正常な流れのどこかが滞ることで起こる蓄積であり、原因(毒性・低酸素・・過剰供給)が違っても、行き着く先は肝細胞・心筋・腎という脂肪代謝を担う細胞への脂肪滴の沈着という共通点を持つ。

定義

  • 脂肪変性・ = 細胞内でのトリグリセリドの異常な蓄積と貯留。脂肪の合成・排出の障害を反映する。
  • 脂肪代謝を担う細胞(肝細胞、心筋、腎)が侵される。

顕微鏡所見と検出

  • 細胞質内の脂肪が核を辺縁に押しやる。
  • 形態:びまん性(毒性作用)と斑状(低酸素作用)。
  • 染色:Oil-red O、Sudan black。

脂肪蓄積のメカニズム

正常な流れ:脂肪酸 → TAG()へ → + → リポタンパクとして輸送。この流れが乱れると蓄積する:

  • 毒素(アルコール): NAD低下 → の低下。
  • 低酸素・無酸素: の低下。
  • タンパク質栄養不良: 低下 → リポタンパク輸送の低下 → TAG増加。
  • 糖尿病・肥満: 食事性脂肪・脂肪酸の供給過剰。

臓器別の所見

肝脂肪変性(脂肪肝)

  • : 脂肪の低下+リポタンパク合成の低下。経過は 脂肪変性 → 肝炎 → 肝硬変。
  • NAFLD: 2型糖尿病・肥満。インスリン抵抗性 → の障害、脂肪酸取り込み増加、低下。は概念で、のみ = NAFL(単純性)、+炎症・ = NASH。
  • ⭐ 2023年の多学会Delphiコンセンサスは、/NASHという呼称を、心血管代謝リスク因子5つのうち1つ以上を満たすことを要件とする()/MASHへ改称した。その要件を満たしつつ中等量以上(女性週140〜350 g・男性週210〜420 g)飲酒する例は、でもでもないMetALDという中間区分に置かれる。旧称の/NASHは実習・試験ではまだ広く使われるため、両方の対応を覚えておく1。
  • 形態:腫大(4〜6kg)、軟らかく黄色い肝臓、緊張した被膜(可逆的)→ の線維化 → 肝硬変(萎縮・線維化)。

ニクズク肝

  • 右心不全 → ・うっ滞 → の肝細胞が+。(が良好)の細胞は保たれる → 様のパターン。

虎斑心

  • 黄褐色のの脂肪縞。遷延性の低酸素(貧血、肺疾患)による。通常は可逆的。

びまん性心筋脂肪変化

⭐ (核を辺縁へ押しやる一つの大きな脂肪滴)と(核が中心に残る多数の小さな脂肪滴)は原因と重症度が異なる。 脂肪変性はミトコンドリアの障害を反映し、アスピリン・バルプロ酸・テトラサイクリン系薬剤による肝毒性やでみられ、重症型では肝不全に至りうる23。も、約20%が胎児のLCHAD欠損に関連するのミトコンドリア性を反映しうる4。

💡 ポイント: (1個の大きな、辺縁の核)= アルコール・()、脂肪 = 重度の(、)。 = 右心不全によるうっ血、 = 。

まとめ

  • 脂肪変性は脂肪の合成・排出の障害を反映した細胞内トリグリセリドの異常蓄積で、肝細胞・心筋・腎が代表的な標的臓器。
  • 顕微鏡ではが核を辺縁に押しやり、Oil-red O・Sudan black染色で検出する。
  • 原因はアルコール(NAD低下)、低酸素、タンパク質栄養不良(低下)、糖尿病・肥満(脂肪供給過剰)に大別される。
  • は・/NASHで生じ、脂肪変性→肝炎→肝硬変と進行しうる。
  • (右心不全によるうっ血)と(遷延性低酸素)は臓器別の代表所見。は通常可逆的だが、うっ血が長く続いたは線維化へ進みうる。

出典

  1. 1.A multisociety Delphi consensus statement on new fatty liver disease nomenclature(Hepatology・2023)2023年の多学会Delphiコンセンサス(56か国236名、4回の調査)が脂肪性肝疾患(steatotic liver disease)を各病因を包む上位概念に採用し、NAFLD/NASHをMASLD(代謝機能障害関連脂肪性肝疾患)/MASHへ改称して心代謝リスク因子5つのうち1つ以上を診断要件としたこと、代謝指標も既知の原因もない例をcryptogenic SLDとしたこと、MASLDの条件を満たしつつ週140〜350 g(女性)・週210〜420 g(男性)飲酒する例をMetALDという中間区分に置いたことを確認した。閲覧 2026-08-27
  2. 2.Inhibition of mitochondrial beta-oxidation as a mechanism of hepatotoxicity(Pharmacology & Therapeutics・1995)重度かつ遷延するミトコンドリアβ酸化の障害が微小滴性脂肪変性(microvesicular steatosis)、さらに重症型では肝不全・昏睡・死へ至ること、アスピリン・バルプロ酸・テトラサイクリン系などの薬剤や内因性物質がコエンザイムAを枯渇させミトコンドリアβ酸化酵素を阻害することでこの機序を引き起こすことを確認した。閲覧 2026-08-27
  3. 3.Relationship between unusual hepatic acyl coenzyme A profiles and the pathogenesis of Reye syndrome(Journal of Clinical Investigation・1988)Reye症候群患者の肝生検で脂肪滴とペルオキシソームの増加が認められ、短鎖・中鎖アシルCoAエステルの異常な蓄積とともに全身性のミトコンドリア障害・脂肪酸酸化障害が病態の基盤にあると考えられることを確認した。閲覧 2026-08-27
  4. 4.Fatty Liver in Pregnancy(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)妊娠急性脂肪肝(AFLP)の約20%が胎児のLCHAD(long-chain 3-hydroxyacyl-CoA dehydrogenase)欠損と関連しており、母体の肝でミトコンドリアの脂肪酸酸化が障害されることが病態に関与すると考えられていることを確認した。閲覧 2026-08-27