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Disease Atlas · 感染症 · 疾患

糞線虫症

Strongyloidiasis

臓器系
感染症消化器皮膚
科目
Medical Microbiology
トピック
微生物学 4/36:糞線虫、犬糸状虫(Dirofilaria repens)
鑑別疾患
好酸球性肺炎
続発疾患
菌血症敗血症細菌性髄膜炎
治療薬
イベルメクチンアルベンダゾール
原因薬剤
プレドニゾロン
原因微生物
Strongyloides stercoralis
症状
腹痛下痢掻痒匐行疹
検査値
血中好酸球好酸球増多

🧠 全体像:を読む軸は、原因線虫Strongyloides stercoralisが持つという特殊な生活環に尽きる。腸管内で幼虫のからへの発育までを体内で完結できるため、をしない限り数十年にわたって感染が持続する。この持続性が免疫状態と結びついたとき、・という致死率の高い転帰を生む——だからこそ、免疫抑制療法を始める前に流行地渡航歴を確認し、血清学的にスクリーニングするという実務上の一手が最も重要になる。

生活環と病態:自己感染が全ての出発点

土壌中のが皮膚を貫通し、血流→肺→気道上行→嚥下を経て小腸に定着する。腸管内で放出されたの一部は、外部環境に出ることなくそのまま感染型のへ発育し、腸壁や肛門周囲皮膚を貫通して再び血流に戻る(。生活環の詳細はStrongyloides stercoralisを参照)。宿主の免疫状態がこのサイクルの速度を規定し、病像を2つに分ける。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoinfection cycle'>自己感染サイクル</span>が持続"] --> B{"宿主の細胞性免疫は保たれているか"}
    B -->|"保たれている"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoinfection'>自己感染</span>は少数にとどまる"]
    C --> D["慢性・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='symptomless infection'>無症候性感染</span><br>(無治療なら生涯持続)"]
    B -->|"低下<br>(ステロイド・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='human T-cell leukemia virus type 1'>HTLV-1</span>合併など)"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='autoinfection cycle'>自己感染サイクル</span>が加速・暴走"]
    E --> F["大量の幼虫が全身へ播種"]
    F --> G["腸内細菌を随伴した<br>グラム陰性菌の菌血症・髄膜炎"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperinfection syndrome'>過剰感染症候群</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='disseminated strongyloidiasis'>播種性糞線虫症</span><br>高い致死率"]

臨床像:2つの病期

病期 内容
慢性・ により無治療なら生涯持続。多くは無症状か、軽度の腹痛・下痢などの消化器症状にとどまる。幼虫が皮下を移動する際に生じるlarva currens(急速に移動する掻痒性の線状皮疹()、本種にほぼ特異的)を認めることがある
・ 免疫不全を契機にが暴走。移行する幼虫は腸内細菌を随伴するため、グラム陰性菌によるの菌血症・敗血症・髄膜炎を合併しやすい1

⚠️ 過剰感染症候群・播種性糞線虫症を見逃さない

⚠️ 投与と()が二大誘因である。 は短期投与でも・の最も頻度の高い誘因になり、は重症化・の危険因子となる2。治療下でも・の致死率は約70%からほぼ100%に達するとされ、発症してからの治療では手遅れになりやすい1。

⚠️ 免疫抑制療法(特にステロイド)を開始する前のスクリーニングが実務上の最になる。 流行地出身・流行地への渡航歴/居住歴のある患者では、免疫抑制を開始する前に血清学的検査で感染の有無を確認し、陽性であれば免疫抑制開始前にしておく——血清学は免疫抑制が確立した後は感度が低下するため、開始前に行うことが重要になる2。が間に合わない緊急の免疫抑制導入では、経験的な投与を考慮する2。

診断

  • 糞便中の幼虫の検出(体内でするため虫卵は検出されない)。(生きた幼虫を糞便から濃縮する手法)やで感度を上げる。
  • は虫体排出量が少なく間欠的なため、単回のでは偽陰性になりやすく、反復採取または血清学的検査()を併用する。
  • の上昇(好酸球増多)を認めることが多いが、ではステロイドの影響で好酸球増多が消失しうる点に注意する。
  • 幼虫のには一過性のを来し、など他のとの鑑別が問題になることがある。

治療

⭐ (200µg/kg)が第一選択であり、・より高い治癒率とが報告されている2。

病期 治療
慢性・ 単回〜2回投与(2週間あけて2回投与するレジメンも用いられる)。効果が不十分な場合やの問題があればを代替とする
・ により経口吸収が不安定なことがあり、より長期の投与(症状消失後も幼虫陰性化を確認するまで継続)に加え、合併するグラム陰性菌感染への治療を要する

まとめ

  • はStrongyloides stercoralisのにより、無治療なら数十年にわたり持続する。
  • 慢性期は無症状〜軽微(消化器症状・)だが、⚠️ 投与やを契機にが暴走すると、致死的な・(グラム陰性菌の菌血症・髄膜炎合併)を来す。
  • ⚠️ 免疫抑制療法を開始する前に流行地曝露歴を確認し、と陽性時のを行うことが最大のになる。
  • 診断は糞便中の幼虫検出()と血清学、治療はが第一選択。

出典

  1. 1.Strongyloidiasis(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2026)糞線虫症が自己感染により無治療なら数十年にわたり持続しうる土壌媒介性線虫感染症であること、慢性期は無症候性〜軽微な消化器症状にとどまる一方、免疫不全者では過剰感染症候群・播種性感染という致死的な経過をとりうることを確認した。閲覧 2026-08-19
  2. 2.Evidence-Based Guidelines for Screening and Management of Strongyloidiasis in Non-Endemic Countries(American Journal of Tropical Medicine and Hygiene・2017)流行地への曝露歴がある免疫抑制予定患者は治療開始前に血清学的スクリーニングを行うべきこと、糖質コルチコイドが過剰感染症候群・播種性感染の最も頻度の高い誘因であり短期投与でも起こりうること、HTLV-1感染が重症化・治療失敗の危険因子であること、イベルメクチン200µg/kgが第一選択治療であることを確認した。閲覧 2026-08-19