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Disease Atlas · 呼吸器 · 疾患

放射線肺臓炎

Radiation pneumonitis

別名
放射線誘発性肺障害
臓器系
呼吸器腫瘍
科目
Oncology
トピック
腫瘍学 II-27:肺癌の放射線療法腫瘍学 II-30:乳癌の放射線療法
上位概念
間質性肺疾患
鑑別疾患
薬剤性肺障害
治療薬
プレドニゾロン
症状
乾性咳嗽労作時呼吸困難
検査値
スパイロメトリー
画像所見
すりガラス影コンソリデーション牽引性気管支拡張

🧠 全体像時間軸で二相に分けて理解するのが幹になる——照射後1〜6か月に生じる急性期の「」と、6か月以降に組織のリモデリング・線維化への移行が始まり11年以上経過してからとして顕在化する慢性期2とで、病態もも変わる。の分類上、既知の原因による二次性ILDの一つに位置づけられる。発症は線量・照射体積(V20・平均肺線量)に依存するが、⚠️ に一致しない陰影が出た場合は型やという例外を疑う必要がある。とは原因が異なる別のノートだが、併用例では両者が重なり合い鑑別が問題になる。

時間軸で分ける——急性期(肺臓炎)と慢性期(肺線維症)

時期 目安 病態
急性期( 照射後1〜6か月1(文献により6週〜数か月とも表現される2 に一致した炎症性変化。が主体で、無症候のことも多い
慢性期(放射線誘発性 6か月以降から始まり1としては1年以上経過してから顕在化する2 Grade 1〜2のの頻度は約10%と見積もられる2

💡 急性期は「炎症」、慢性期は「線維化」という異なる病態であり、急性期に有効なステロイドは、いったん線維化が完成した慢性期の陰影を元に戻すことはできない。慢性期の管理は進行の抑制と支持療法が中心になる。

flowchart TD
    A["胸部への放射線治療歴"] --> B{"照射後どれくらい経過したか"}
    B -->|"1〜6か月"| C["急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiation pneumonitis'>放射線肺臓炎</span>を疑う"]
    B -->|"6か月以降"| D["慢性期の放射線誘発性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pulmonary fibrosis'>肺線維症</span>を疑う"]
    C --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='irradiation field'>照射野</span>に一致した陰影か確認"]
    E -->|"一致する"| F["典型的な急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiation pneumonitis'>放射線肺臓炎</span>"]
    E -->|"一致しない"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='organizing pneumonia'>器質化肺炎</span>型・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='radiation recall'>放射線リコール</span>を疑う"]
    F --> H["症状・画像の重症度を評価"]
    G --> H
    H --> I{"症候性か・進行性か"}
    I -->|"はい"| J["全身ステロイドを開始し<span class='jp-term jp-term-diagram' title='tapering'>漸減</span>"]
    I -->|"いいえ"| K["経過観察"]
    D --> L["進行抑制と支持療法が中心"]

画像所見と換気障害の経過

急性期には・びまん性の陰影やの不明瞭化として現れ、進行するにつれてを伴う・瘢痕様変化へ移行する2

典型例では陰影がに一致して分布する。 放射線散乱や過敏反応により、まれにの外側にも生じることがあり2、これが前述の「例外」(型・)と重なる所見になる。

では、線維化の進行に伴い低下)・低下を示すようになる。

線量・照射体積との関係

V20(20Gy以上を受ける肺容積の割合)とが、発症リスクを左右する代表的な線量体積因子である。 の3次元原体照射(3D-)ではV20が35%を超えるとのリスクが上昇し、MLDの上昇はGrade 3以上の重症と独立に関連する(1.002)1照射では、肺への線量が18〜20Gyを下回る範囲では放射線誘発性肺障害はまれとされる2

⚠️ との併用でリスクが上がる。 胸部への放射線治療歴はICI関連への感受性を高め、放射線治療後にPD-1阻害薬を投与すると肺の有害事象が増えることが報告されている1。化学療法・ICI・などを組み合わせる治療では、単独の放射線治療より低い線量でも肺障害が生じうるため、線量体積因子だけでリスクを判断しない2

例外——照射野に一致しない陰影

⚠️ は必ずしもの内側にとどまらない。 陰影がを越えて対側肺にまで及ぶ、あるいはの外側にだけ生じる場合は、型の放射線関連肺障害(放射線誘発性の遊走性)や、化学療法歴のある患者で以前照射した部位に再び炎症が生じる「」を鑑別に挙げる。この場合、線量分布と陰影の一致を機械的に前提とせず、薬剤歴・を合わせて評価する。

治療

急性期で症候性・進行性のには全身ステロイドを開始し、症状・画像の改善を確認しながらする。無症候性の軽度の変化まで全例に治療する必要はなく、経過観察でよいことも多い。慢性期の線維化に対しては、進行を止める確立した薬物治療はなく、支持療法(など)と経過観察が中心になる。

薬剤性肺障害との役割分担

放射線と薬剤はどちらも肺への既知の傷害因子だが、別の原因として扱う。 は照射歴と時間軸(急性期1〜6か月・慢性期は6か月以降のリモデリングを経て1年以上で線維症として顕在化)を軸に評価し、の薬剤歴とHRCTパターンを軸に評価する。両者が重なるのは、後にICIによるを行う肺癌治療などで、放射線治療歴のある患者にICI関連される場面である。どちらが主体かは、症状出現のタイミング(放射線治療直後か、ICI投与後か)と陰影の分布(に一致するか)で見極める。

まとめ

  • は時間軸が幹——急性期(1〜6か月、炎症)と、6か月以降にリモデリングが始まり1年以上で線維症として顕在化する慢性期とで病態も治療も異なる。
  • 画像は急性期のから、慢性期のを伴うへ移行し、典型例ではに一致して分布する。
  • V20(35%が目安)・平均肺線量(MLD)などの線量体積因子が発症リスクを規定する。
  • ⚠️ に一致しない陰影は、型の放射線関連肺障害・を疑う例外である。
  • との併用でリスクが上がり、多治療ではでも肺障害が生じうる。
  • とは原因(放射線歴 vs 薬剤歴)で区別するが、後の免疫療法など両者が重なる場面では鑑別が必要になる。

出典

  1. 1.Pulmonary Complications of Cancer Therapy: Clinical Presentations, Imaging Patterns, and Management Strategies(Medicina (Kaunas, Lithuania)・2026)急性放射線肺臓炎が照射後6週〜数か月で生じる一方、放射線誘発性肺線維症は1年以上経過してから生じ、Grade 1〜2の肺線維症の頻度が約10%と見積もられること、線量体積因子(照射体積・平均肺線量・治療スケジュール・腫瘍部位)が発症に影響すること、通常分割照射では18〜20Gyを下回る線量では放射線誘発性肺障害がまれであること、免疫チェックポイント阻害薬併用を含む多モダリティ治療では低い放射線量でも肺障害が生じうること、早期の画像変化がすりガラス影・びまん性の陰影・肺紋理の不明瞭化であり他のCT所見として容積減少を伴うコンソリデーション・牽引性気管支拡張・瘢痕様変化が挙げられること、放射線肺臓炎が放射線散乱や過敏反応によりまれに照射野の外側にも生じうることを(Radiation-Induced Lung Injury節)確認した。閲覧 2026-08-12
  2. 2.Carbon ion radiotherapy and radiation-induced lung injury: clinical evidence, mechanistic insights, and future directions(Frontiers in Oncology・2026)急性放射線肺臓炎が照射後1〜6か月で生じ、6か月以降は組織のリモデリングと線維化へ移行すること(3.1.1節)、従来型3D-CRTでは肺のV20(20Gy以上を受ける肺容積の割合)が35%を超えると放射線肺臓炎リスクが上昇すること、平均肺線量(MLD)の上昇がグレード3以上の放射線肺臓炎と独立に関連すること(オッズ比1.002、3.2節)、胸部への放射線治療歴が免疫チェックポイント阻害薬関連肺臓炎への感受性を高め、放射線治療後にPD-1阻害薬で肺の有害事象が増えることを確認した(3.2節)。閲覧 2026-08-12