組織病理学

組織病理学 · H1-048

気管支肺炎

Bronchopneumonia

描出疾患
市中肺炎
疾患
肺膿瘍

🧠 全体像:は、を中心にが周囲肺胞へ広がり、正常に近い肺胞と好中球性滲出物で満たされた肺胞が斑状に混在する病変である。両肺・複数へ散在しうるが、常に全5葉を侵すわけではない。

標本の要点

項目 所見
臓器 肺
染色 ・染色(HE)
分布 気管支・中心性の斑状病変
主な滲出物 好中球、壊死細胞、浮腫液
肺胞 内化膿と淡い好酸性浮腫液
付随所見 、炭粉沈着

発症と進展

flowchart TD
    A["細菌を含む分泌物の吸引・気道感染"] --> B["気管支・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='bronchiole'>細気管支</span>粘膜の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='acute inflammation'>急性炎症</span>"]
    B --> C["好中球性滲出物が気道内に貯留"]
    C --> D["周囲肺胞へ炎症が波及"]
    D --> E["斑状の肺胞内化膿"]
    E --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lesion (focal)'>病巣</span>が融合すれば広い実質性肺炎"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='subpleural'>胸膜直下</span>へ達すれば<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Fibrinous'>線維素性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='pleurisy'>胸膜炎</span>"]

原因菌は患者背景によって異なり、肺炎球菌、黄色ブドウ球菌、、グラム陰性桿菌などが含まれる。組織学的分布だけで菌種は確定できない。

💡 原因は生前でも大半が特定できない。 入院を要した成人2259例を分子検査まで含めて調べた前向き調査でも、病原体が検出されたのは38%にすぎず、ウイルス23%が細菌11%を上回った。最多はヒト9%、6%で、肺炎球菌は5%だった1。組織像から菌種を推定できないだけでなく、培養と分子検査を尽くしても大多数で病原体は挙がらない。

観察の順序

低倍率

  1. 気管支・を起点にする炎症巣を探す。
  2. 炎症巣が斑状で、比較的を保つ肺胞が間に残ることを確認する。
  3. 内の淡桃色の浮腫液と、濃紫色の細胞性滲出物を分ける。
  4. 胸膜表面のフィブリンと、気道周囲の黒色色素を確認する。

高倍率

所見 読み方
気管支内化膿性滲出物 気道腔にをもつ好中球がする
肺胞内化膿 好中球と壊死細胞がを満たす
浮腫液 内の均質で淡い好酸性物質
胸膜表面に好酸性フィブリンが付着する
炭粉沈着 マクロファージや間質内の粗い黒色炭素粒子

色素の読み分け

色素 色調・由来 この病変との関係
炭粉 黒色で、吸入炭素粒子をマクロファージが取り込む 都市生活や喫煙でもみられる付随所見
黄褐色顆粒で、鉄染色陽性 出血や慢性うっ血を示唆するが、の必須所見ではない

標本内の黒色色素は炭粉沈着として読む。を認めても、それだけでと判断しない。

大葉性肺炎との比較

項目
起点 気管支・ に連続して広がる
分布 斑状、多発、両側性になりうる 一の広い連続領域
組織像 病変肺胞と比較的正常な肺胞が混在 同じの肺胞内滲出が比較的均一
主滲出物 好中球・壊死物・浮腫液 フィブリン、好中球、赤血球がに応じて変化

⚠️ このは標本上の記述であって、臨床での分類軸ではない。 282例の胸部X線を2名の放射線科医が独立にした研究では、浸潤影の有無(κ=0.37)や単葉・多葉の別(κ=0.51)は中等度に一致したのに対し、をとに分ける判定はκ=0.09としか一致しなかった2。標本の読み方としては有用でも、画像や臨床経過からこの二つを分ける操作は再現性が低く、原因菌の推定にも使えない1。

転帰

  • 適切に排除されれば肺胞構造を保って吸収・治癒する。
  • 壊死が強ければを形成しうる。
  • 胸膜へ波及するとやを生じうる。
  • 高齢者や基礎疾患患者では菌血症・敗血症へ進む危険がある。

まとめ

  • は気道中心性・斑状のである。
  • 気管支内と肺胞内の好中球、浮腫液、胸膜フィブリン、炭粉を区別して観察する。
  • 両肺・複数へ広がりうるが、「必ず全5葉」と固定しない。
  • 黒色炭粉と黄褐色を混同しない。

出典

  1. 1.Community-Acquired Pneumonia Requiring Hospitalization among U.S. Adults(New England Journal of Medicine(EPIC study)・2015)入院を要した成人市中肺炎で細菌・ウイルス双方の検査検体がそろった2259例のうち、病原体が検出されたのは853例(38%)にとどまった。内訳はウイルス530例(23%)、細菌247例(11%)、両者59例(3%)、真菌・抗酸菌17例(1%)で、最多はヒトライノウイルス9%、インフルエンザウイルス6%、肺炎球菌5%。現行の検査を用いても大多数で病原体は同定できず、呼吸器ウイルスの検出頻度が細菌を上回った閲覧 2026-08-24
  2. 2.Interobserver reliability of the chest radiograph in community-acquired pneumonia. PORT Investigators(Chest・1996)市中肺炎282例の胸部X線を2名の放射線科医が独立に読影した研究で、浸潤影の有無(κ=0.37)、単葉か多葉か(κ=0.51)、胸水の有無(κ=0.46)は中等度の一致を示したのに対し、肺胞性浸潤影210例を大葉性肺炎と気管支肺炎に分ける判定はκ=0.09(95%CI −0.04〜0.22)と一致度が低く、気管支像の有無もκ=0.01だった閲覧 2026-08-24