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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

網膜前膜

Epiretinal membrane

別名
黄斑上膜黄斑前膜セロファン黄斑症ERM
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)Translational Medicine and Pathophysiology
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体病態生理学 1-10:糖尿病の細小血管合併症
鑑別疾患
黄斑円孔硝子体黄斑牽引
合併症
黄斑浮腫
症状
変視症視力低下霧視
画像所見
嚢胞様黄斑浮腫
元疾患
糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症網膜剥離

🧠 全体像:は、網膜の表面に細胞が這い出して薄い膜を作り、その膜が縮むことで網膜を面方向に皺寄せする病態である。がによる前後方向の引っ張りであるのに対し、こちらは膜自身のの収縮が主役で、の牽引を伴わない膜も含む。⭐ 中高年以上では10人に1人が持つほどありふれた所見である1。大半は無症候のまま進行しない。見つけたことは治療の理由にならない——手術を決めるのは所見ではなく、患者が見え方に困っているかである。

疫学:ありふれた所見である

住民ベースの13研究・49,697人を統合したによる年齢調整済みのは次のとおりである1。

病変 (95%信頼区間)
早期() 6.5%(4.2〜8.9%)
進行() 2.6%(1.8〜3.4%)
いずれかの 9.1%(6.0〜12.2%)

危険因子として統計学的に有意だったのは高齢と女性であることの2つだけだった。⚠️ の推定値は研究間で大きくばらつき、その差には人種のほか撮影法と法という測定側の要因が寄与している1。「◯%」を単一の数値として扱わない。

成り立ち:特発性と二次性

群 背景
特発性(最多) 加齢に伴う。剥離の際にに生じた微小な破綻が細胞の通り道になる
二次性・/後 裂孔形成そのもの、および・・という治療後に生じる
二次性・血管性 、増殖(病態生理学 1-10)
二次性・炎症性/ ぶどう膜炎、

💡 機序はどの群でも同じ形をしている。 網膜のは本来がつくる基底膜で、網膜内の細胞を側から隔てている(組織学 17.1)。この隔壁に破綻ができると、膠細胞や、側の細胞が網膜表面へ出て増殖し、収縮能をもつ膜を形成する。二次性の背景がどれも「網膜に穴・虚血・炎症という刺激が加わった状況」であることは、この筋書きと一致する。

OCTによる病期分類

Govettoらは172人194眼の後ろ向き多施設観察研究から、にが張り出しているかを軸にした4段階のOCT分類を提唱した2。

OCT所見 頻度(194眼中)
1 膜は薄く、が保たれる 43眼(22.1%)
2 が拡大し、が消失する 88眼(45.4%)
3 連続するが全体を横断する。網膜層構造はまだ識別できる 51眼(26.3%)
4 膜が厚く、に加えて網膜層構造そのものが破綻する 12眼(6.2%)

⭐ 視力は1から4へ段階的に低下する(P<.001)。を横断するのは194眼中63眼(32.5%)にみられ、低い視力と有意に関連していた2。膜の厚さだけでなく、の層構造がどこまで引き寄せられたかが視機能を規定するという読み方になる。

⚠️ この分類は単一の後ろ向き観察研究に基づくものである。された治療判断の基準として検証されたものではない。

症状

治療

  • 無症候・軽度なら経過観察。 大半は進行せず、所見があること自体は手術の理由にならない。
  • 手術は+膜剥離。 やが日常生活に支障を来したときに行う。
  • ⭐ を同時に剥離するかどうかは「再発」の問題である。 16研究1,286眼のでは、を併用すると再発率が有意に低い(0.25、95%信頼区間0.12〜0.49)一方、術後のにもにも有意差はなかった3。⚠️ 「再発は減るが、見え方が良くなるわけではない」という結果である。
  • ⚠️ 上記のに組み込まれた16研究はすべて後ろ向きまたは前向きの比較研究で、は1件も同定されなかった3。

硝子体黄斑牽引との分かれ目

⚠️ 分かれ目は「牽引があるか」である。 は定義上、異常なによるの歪みを伴う。はそれを伴わない膜も含み、収縮が進んで初めてを変形させる。両者はしばしば併存し、併存するとによる牽引の解除率が下がる。の分類(IVTS分類)との解剖はのノートで扱う。

まとめ

  • は網膜表面に増殖した細胞性の膜がに収縮する病態で、の牽引を伴わない膜も含む点がと違う。
  • 住民ベースのはいずれかので9.1%、進行型で2.6%。有意な危険因子は高齢と女性のみで、推定値は撮影法・法にも左右される。
  • 特発性(に伴う)が最多で、・治療後、・、ぶどう膜炎・外傷が二次性の背景になる。
  • OCTではを横断するの有無を軸に4段階に分け、が上がるほど視力が低い。
  • 無症候なら経過観察。手術は+膜剥離で、の同時剥離は再発を減らすが術後視力やは変えない。

出典

  1. 1.Prevalence and risk factors of epiretinal membranes: a systematic review and meta-analysis of population-based studies(BMJ Open・2017)住民ベースの13研究・49,697人を統合したメタアナリシスで、年齢調整済みの統合有病率が早期の網膜前膜(セロファン黄斑反射)6.5%(95%信頼区間4.2〜8.9%)、進行した網膜前膜(網膜前黄斑線維症)2.6%(同1.8〜3.4%)、いずれかの網膜前膜9.1%(同6.0〜12.2%)であったこと、危険因子として有意だったのは高齢と女性のみであったこと、人種・撮影法・読影法が有病率推定のばらつきに寄与していたことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Insights Into Epiretinal Membranes: Presence of Ectopic Inner Foveal Layers and a New Optical Coherence Tomography Staging Scheme(American Journal of Ophthalmology・2017)網膜前膜と診断された172人194眼の後ろ向き多施設観察研究で、連続する異所性内層が194眼中63眼(32.5%)にみられ低い視力と有意に関連したこと、網膜前膜をOCTで4段階に分け、ステージ1(43眼・22.1%)は薄く中心窩陥凹が保たれるもの、ステージ2(88眼・45.4%)は外顆粒層の拡大と中心窩陥凹の消失を伴うもの、ステージ3(51眼・26.3%)は連続する異所性内層が中心窩全体を横断するもの、ステージ4(12眼・6.2%)は膜が厚く異所性内層に加えて網膜層構造そのものが破綻したものと定義し、ステージ1〜3ではOCT上すべての網膜層が明瞭に識別できたこと、視力がステージ1からステージ4へ段階的に低下したこと(P<.001)を確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Effects of Internal Limiting Membrane Peeling Combined With Removal of Idiopathic Epiretinal Membrane: A Systematic Review of Literature and Meta-Analysis(Retina・2017)特発性網膜前膜の手術で内境界膜剥離を併用した群と併用しない群を比較した16研究・1,286眼のメタアナリシスで、術後の最良矯正視力(平均差0.01 logMAR、95%信頼区間 −0.05〜0.07、P=0.83)と中心黄斑厚(平均差13.13 µm、95%信頼区間 −10.66〜36.93、P=0.28)には有意差がなかった一方、網膜前膜の再発率は内境界膜剥離群で有意に低かった(オッズ比0.25、95%信頼区間0.12〜0.49、P<0.0001)こと、組み込まれた研究はすべて後ろ向きまたは前向きの比較研究で無作為化比較試験は同定されなかったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03