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Disease Atlas · 眼科 · 病態

黄斑浮腫

Macular edema

臓器系
眼科
科目
Internal MedicinePathophysiology
トピック
内科学 E-11:糖尿病患者と合併症の管理内科学 L-23:糖尿病の細小血管・大血管合併症病態生理学 1-10:糖尿病の細小血管合併症
治療薬
フルオシノロン
原因薬剤
フィンゴリモドオザニモドエトラシモドニコチン酸
症状
霧視
画像所見
嚢胞様黄斑浮腫
元疾患
糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症

🧠 全体像は単独の疾患名ではなく、が破綻して黄斑に液が溜まった状態を指す共通の最終病態である。原因は・ぶどう膜炎・術後()と多岐にわたるが、診断・治療効果判定にはOCTが共通の物差しとして使われ、血管性の原因には抗VEGF薬が治療の軸になるという2点は原因を問わず貫かれる。

病態

は、を養うの内側、またはが担う外側のいずれかが破綻し、に漏出した液が黄斑の網膜内に貯留することで生じる。破綻の引き金は原因によって異なるが、最終的に黄斑の網膜が肥厚するという結果は共通する。

flowchart TD
    A["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>の4大原因"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='diabetic retinopathy'>糖尿病網膜症</span>"]
    A --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal vein occlusion'>網膜静脈閉塞症</span>"]
    A --> D["ぶどう膜炎"]
    A --> E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='cataract'>白内障</span>術後<br>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Irvine-Gass syndrome'>Irvine-Gass症候群</span>)"]
    B --> F["VEGF介在性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood-retina barrier'>血液網膜関門</span>破綻"]
    C --> F
    D --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='inflammatory mediator'>炎症性メディエーター</span>介在性の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='blood-retina barrier'>血液網膜関門</span>破綻"]
    E --> G
    F --> H["黄斑への液貯留=<span class='jp-term jp-term-diagram' title='macular edema'>黄斑浮腫</span>"]
    G --> H

💡 原因ごとに主犯格の分子が違うから、治療の軸も違う。 は虚血に伴うVEGF過剰産生がを高める血管性の機序が主体で、これが抗VEGF薬が両者の治療の軸になる理由である。ぶどう膜炎・術後はが主体の機序で、こちらはステロイド・NSAIDが治療の軸になる。

臨床像

に共通する症状は、原因を問わず中心視力の低下である。網膜の周辺部は保たれるため視野全体が欠けることはないが、(物が歪んで見える)を来し、や顔の認識など中心視力に依存する動作が障害される。片眼性か両眼性かは原因で異なり、・ぶどう膜炎に伴うは両眼性で生じうるのに対し、術後のは原則として患眼の片側性である。

4大原因の使い分け

原因 機序の主体 治療の軸
VEGF介在性の 抗VEGF注射が第一選択。視力が保たれていれば20/30以下に低下するまで治療開始を待つことも妥当1
・虚血に伴うVEGF過剰産生 が第一選択。不応例・残存例にを検討2
ぶどう膜炎 による破綻 眼周囲・眼内の副腎皮質ステロイド()が中心。原疾患の炎症制御が前提3
術後( 術後炎症 (±局所ステロイド)が第一選択。難治例で傍眼窩・や抗VEGFへ進む4

慢性ぶどう膜炎・には、に限定して全身への曝露を避けた製剤のが用いられ、に直接薬剤をすることでを回避する。

💡 の時代になっても、とステロイドの居場所は残っている。 抗VEGF薬が広く使われる前は局所の標準治療だったが、現在は視力への効果で抗VEGF薬に及ばず、抗VEGF治療に反応しにくい非病変や併用療法としての位置づけに変わった。副腎皮質ステロイド()は進行のリスクを持つため、抗VEGF不応例やぶどう膜炎のように炎症そのものが主体の病態に限って中心的な役割を担う。

診断とモニタリング

OCTが診断・治療効果判定の要である。 黄斑の断層構造を直接測定できる非侵襲検査であり、初診時の診断だけでなく、抗VEGF治療の継続・中止判定にも使われる。に伴うでは、3か月連続で視力改善がなくOCTでの中心網から減っていなければ治療中止を検討するというOCTベースの基準が示されている2

OCTで見る所見の型(嚢胞様の低反射腔、での漏出パターン、漏出を伴わないCMEとの鑑別など)のスキルは、本ノートでは扱わない。画像所見としての定義・が正本であり、本ノートは「どの疾患が原因で、何を治療の軸にするか」という疾患側の枠組みを担う。

薬剤性の黄斑浮腫

⚠️ 一部の全身投与薬はを自ら引き起こす。 に用いるオザニモドエトラシモド)はクラス共通のとしてのリスクを持ち、糖尿病・ぶどう膜炎の既往があるとリスクが上がるため、投与開始前のと開始後の定期評価が必要になる。)大量投与もを来しうるが、こちらはの破綻ではなく内への液貯留という別機序であり、で漏出所見を示さない「漏出を伴わない」型をとる。

⚠️ に有効性が証明されていない薬もある。 薬のの進行抑制を期待して使われてきたが、CALDIRET試験では発症・進行を抑制できなかった。原疾患のや抗VEGF治療に置き換わるものではない。

まとめ

  • は単一疾患ではなく、の破綻という共通の最終病態であり、・ぶどう膜炎・術後()が4大原因である。
  • 血管性の原因()はVEGF介在性の機序が主体で抗VEGF薬が治療の軸になり、炎症性の原因(ぶどう膜炎・術後)はステロイド・NSAIDが治療の軸になる。
  • OCTは診断・治療効果判定・治療継続可否の判断すべてに使われる共通の物差しである。の詳細はに譲る。
  • はクラス共通のリスクを持ち、投与前後の眼科検査が必要である。
  • 有効性が証明されていない薬()を原因治療の代わりに用いない。

出典

  1. 1.Diabetic Retinopathy Preferred Practice Pattern (Guideline Summary)(American Academy of Ophthalmology・2024)硝子体内抗VEGF薬が視力低下を伴う中心窩を含む糖尿病黄斑浮腫(CI-DME)の治療に有効であること、視力が保たれているCI-DMEでは視力が20/30以下に低下するまで治療開始を待つことが妥当な場合があることを確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.Systematic review of clinical practice guidelines for the diagnosis and management of retinal vein occlusion((Eye / Springer Nature)・2024)網膜静脈閉塞症に伴う黄斑浮腫の治療で抗VEGF療法が第一選択とされること(薬剤の使い分けに明確な推奨はない)、治療継続の判断に視力の安定とOCTでの浮腫減少を用い3か月連続で視力改善なく中心網膜厚も基線から減っていなければ中止を検討すること、デキサメタゾン硝子体内インプラントは抗VEGF不応例や3〜4か月の抗VEGF治療後も浮腫が残存する場合に検討する第二選択であり眼圧上昇のモニタリングを要することを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.Treatment of Noninfectious Uveitic Macular Edema with Periocular and Intraocular Corticosteroid Therapies(American Academy of Ophthalmology (Ophthalmology)・2024)非感染性ぶどう膜炎に伴う黄斑浮腫に対し検討された眼周囲・眼内の副腎皮質ステロイド治療がいずれも視力または黄斑構造の改善を示したこと、硝子体内トリアムシノロン注射・デキサメタゾン硝子体内インプラントが眼周囲トリアムシノロン注射より優れた有効性を示した比較研究があること、これらの治療が眼圧上昇と白内障進行を来しうることを確認した閲覧 2026-08-11
  4. 4.Current Management Options in Irvine-Gass Syndrome(Journal of Clinical Medicine・2021)白内障術後の偽水晶体眼黄斑浮腫(Irvine-Gass症候群)の第一選択治療が局所NSAID(±局所ステロイド)であり、難治例では傍眼窩・硝子体内ステロイドや抗VEGF療法へ進むことを確認した閲覧 2026-08-11