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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

硝子体黄斑牽引

Vitreomacular traction

別名
硝子体黄斑牽引症候群VMT
臓器系
眼科
科目
Microscopic Anatomy and Embryology (Microscopic Anatomy)Microscopic Anatomy and Embryology (Embryology)
トピック
組織学 17.1:感覚器:眼発生学 19.3:眼:水晶体・角膜・脈絡膜・強膜・硝子体
鑑別疾患
黄斑分離症網膜前膜
合併症
黄斑浮腫
続発疾患
黄斑円孔
症状
変視症視力低下霧視中心暗点
画像所見
嚢胞様黄斑浮腫

🧠 全体像:は、加齢に伴うが「中途半端に」起こることで生まれる。が周辺から剥がれていく途中で、接着の強いだけが離れずに残ると、そこに前後方向の引っ張りがかかり続ける。⭐ 「癒着があるだけ」「引っ張られて形が崩れた」「引きちぎれて穴が空いた」は連続した1本の軸であり、その軸をOCT所見だけで言葉にしたのが2013年のIVTS分類である1。治療のは「の形が崩れているか」の一点にある。

出発点:後部硝子体剥離が均一に起こらない

は加齢とともにゲルがし、と網膜の(の基底膜、組織学 17.1)との接着が緩んで剥がれていく。ところが接着の強さは一様ではなく、・周囲・血管上・で強い。周辺から先に剥がれ、強い場所だけが残るという剥がれ方が起これば、残った1点に牽引が集中する——これが異常なである。

💡 牽引は「引っ張る力が生まれた」というより「離れられなかった」結果である。 だから完全に剥離が進めば牽引は自然に解除されうる。経過観察が肢として成立するのはこのためである。

IVTS分類(2013年)

の疾患は、施設ごとに別々の言葉で呼ばれてきた。IVTS(International Vitreomacular Traction Study Group)はOCTの解剖所見だけを根拠にした分類を2013年に示し、以後のと診療の共通語になっている1。

分類 定義
(VMA) 周囲ではが分離しているがの付着が残り、の形態は乱れていない。正常なの加齢変化の結果であるOCT所見
(VMT) 異常なにの解剖学的な歪みを伴う。・・・を含みうる
(FTMH) からまで全網膜層がした病変。によるものが一次性、他の病態によるものが二次性

⚠️ 癒着(VMA)は疾患名ではない。 の形が保たれている限り、それは加齢の所見であって治療対象ではない。牽引(VMT)と呼べるのはが歪んだときだけである1。

牽引はさらに、OCTで測った黄斑表面へので細分される。

亜分類 基準
1500 µm以下
1500 µm超
他の黄斑疾患を伴う場合1

⭐ この1500 µmは学問的な線引きではなく、治療反応が変わる線である(後述)。も同様に、円との有無で細分される。

症状

の形が歪むので、症状は黄斑疾患の共通言語になる——、、。片眼ずつ確認しないと本人が気づかないことが多い。OCTでがあればとしてのも同時に行うが、機序はの破綻ではなく牽引である。液を減らす局所治療ではなく、牽引を断つことが治療の標的になる。

治療

flowchart TD
    A["OCTで<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitreomacular interface'>硝子体黄斑界面</span>を評価"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='foveal contour'>中心窩形態</span>の歪みがあるか"}
    B -->|"なし(VMA)"| C["加齢変化として経過観察"]
    B -->|"あり(VMT)"| D{"症状があるか"}
    D -->|"なし・軽度"| E["自然な剥離完成を期待して経過観察"]
    D -->|"あり"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='attachment diameter'>付着径</span>・併存病変を評価"}
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='limited (localized) form'>限局型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiretinal membrane'>網膜前膜</span>なし"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='enzymatic vitreolysis'>酵素的硝子体融解</span>を検討"]
    F -->|"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='broad type'>広範型</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='epiretinal membrane'>網膜前膜</span>合併・<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='full-thickness macular hole'>全層黄斑円孔</span>を伴う"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='vitrectomy'>硝子体手術</span>"]
  • 経過観察。 剥離が完成すれば牽引は自然に解除されうるため、無症候であれば待つ。
  • ()。 ⚠️ では2023年8月30日に販売承認が撤回されており(商業上の理由)、入手できない国がある。 以下はの成績である。症候性のを対象とした第3相試験2件(652眼)で、28日目の癒着解除は26.5%(10.1%)、黄斑円孔の非閉鎖は40.6%(同10.6%)だった2。⚠️ 裏を返せば4眼に3眼は解除されない。 は68.4%(53.5%)に生じ、・・注射に伴う眼痛などで、重篤なの頻度は両群で差がなかった2。5試験1,067人のでは、最も多いは黄斑円孔の進行だった(22.5%・対照17.3%)3。
  • ⭐ 効きやすさは分類で予測できる。 癒着の解除率は、の合併・1500 µmを超える広範な癒着・・があると低く、若年・女性・黄斑円孔を伴う眼では高い3。IVTSの/という線引きが、そのまま薬を選ぶかどうかの判断材料になる。
  • 。 重症で症候性のに対する標準治療である2。を切除して牽引そのものを断つ方法で、を伴えば膜も同時に処理する。

網膜前膜との分かれ目

同じの疾患だが、引っ張る方向が違う。

引く主体 に残った 網膜表面に増殖した細胞性の膜
方向 前後方向(へ引き上げる) (網膜面に沿って縮む)
牽引の有無 定義上、牽引を伴う 牽引を伴わない膜も含む

⚠️ 両者は排他的ではなく、しばしば併存する。 併存するとが効きにくくなるため3、OCTでは「牽引があるか」だけでなく「膜があるか」も同時に読む。

まとめ

  • は、が不均一に進み、接着の強いだけが離れ残ることで生じる前後方向の牽引である。
  • IVTS分類(2013)はOCT所見だけで・・を定義し、の歪みの有無が癒着と牽引を分ける。
  • 牽引は1500 µm以下を、1500 µm超を、他の黄斑疾患を伴う場合をとする。
  • 症状は・・で、を伴っても機序は牽引であり、治療の標的は液ではなく牽引そのものになる。
  • 無症候なら経過観察。でを伴わなければが選択肢になり、・合併・ではを選ぶ。

出典

  1. 1.The International Vitreomacular Traction Study Group classification of vitreomacular adhesion, traction, and macular hole(Ophthalmology (International Vitreomacular Traction Study Group)・2013)硝子体黄斑癒着を「中心窩周囲の硝子体分離が生じつつ中心窩の付着が残り、中心窩形態が乱れていないもの」と定義し、これは正常な硝子体の加齢変化の結果であるOCT所見だとしていること、硝子体黄斑牽引を「異常な後部硝子体剥離に中心窩形態の解剖学的な歪みを伴うもので、偽嚢胞・黄斑分離・嚢胞様黄斑浮腫・網膜下液を含みうる」と定義し、OCTで測った黄斑表面への硝子体付着径が1500 µm以下を限局型・1500 µm超を広範型とし、他の黄斑疾患を伴う場合を併存型と分類していること、全層黄斑円孔を「内境界膜から網膜色素上皮まで全網膜層が断裂した中心窩病変」と定義し、硝子体牽引によるものを一次性・それ以外の病態によるものを二次性とし、円孔径と硝子体黄斑牽引の有無で細分していることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  2. 2.Enzymatic vitreolysis with ocriplasmin for vitreomacular traction and macular holes(New England Journal of Medicine (MIVI-TRUST Study Group)・2012)症候性硝子体黄斑癒着に対するオクリプラスミン125 µg硝子体内単回注射とプラセボを比較した第3相無作為化二重盲検試験2件(計652眼、オクリプラスミン464眼・プラセボ188眼)で、28日目の硝子体黄斑癒着の解除がオクリプラスミン26.5%・プラセボ10.1%(P<0.001)、完全な後部硝子体剥離が13.4%・3.7%(P<0.001)、黄斑円孔の非手術的閉鎖が40.6%・10.6%(P<0.001)であったこと、眼有害事象が68.4%・53.5%(P<0.001)で飛蚊症・光視症・注射に伴う眼痛・結膜出血などであり重篤な眼有害事象の頻度は両群で差がなかった(P=0.26)こと、重症で症候性の硝子体黄斑癒着に対する標準治療が硝子体手術であると背景に述べていることを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03
  3. 3.Ocriplasmin for treatment of vitreomacular traction and macular hole: A systematic literature review and individual participant data meta-analysis of randomized, controlled, double-masked trials(Survey of Ophthalmology・2022)無作為化比較試験5件・1,067人の個人データメタアナリシスで、治療6か月後のオクリプラスミン群が対照群より硝子体黄斑癒着の解除率と黄斑円孔の閉鎖率が高く、硝子体手術に至るオッズが低く、10文字以上の視力改善が得られやすかったこと、癒着の解除率は網膜前膜の合併・1500 µmを超える広範な硝子体黄斑癒着・糖尿病網膜症・偽水晶体眼があると低く、若年・女性・黄斑円孔を伴う眼では高かったこと、オクリプラスミン群で一過性の視機能低下・飛蚊症・光視症・羞明・眼痛・霧視・色覚異常が多かったが最終視力を予測しなかったこと、最も多い重篤有害事象がオクリプラスミン群と対照群でそれぞれ黄斑円孔の進行(22.5%・17.3%)・新規の黄斑円孔(1.5%・3.4%)・網膜剥離(0.8%・1.2%)であったことを確認した。抄録のみを閲覧しており全文は未取得。閲覧 2026-09-03