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Disease Atlas · 眼科 · 疾患

硝子体出血

Vitreous hemorrhage

別名
硝子体内出血
臓器系
眼科
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 L-23:糖尿病の細小血管・大血管合併症内科学 E-11:糖尿病患者と合併症の管理
治療薬
ベバシズマブ
症状
飛蚊症霧視視力低下
元疾患
糖尿病網膜症網膜静脈閉塞症

🧠 全体像それ自体が診断名ではなく、必ず何らかの原因があるという前提を最初に押さえる。「なぜ出血したか」を突き止めることがそのまま診療の目的になる。核心的な問題は、出血によって眼底が見えなくなること自体が原因検索を妨げるという悪循環にある——や裂孔があっても、出血のせいででは確認できない。だからこそ、眼底が透見できないときは・裂孔を必ず除外するという行動指針が、このノートの一番の要点になる。

症状

突然のの増加 → → 高度な出血ではのみという順で進行する1

原因

原因は多岐にわたるが、頻度の高いものから精査を組み立てる。

原因 特徴
最も頻度の高い原因からの出血で、両眼性に生じることが多い1
に伴ってが裂孔部でし出血する。見逃すとが進行する緊急性の高い原因
虚血に伴うからの出血
(単独) が網膜から分離する際に小血管がする。裂孔を伴わなければ比較的良性
からの出血
外傷 40歳未満での最多の原因1
による頭蓋内圧上昇がを介して視神経に伝わり、静脈圧上昇と毛細血管の二次的破綻を来す。患者でのは報告により2.6〜28%と幅がある2

診断の進め方

flowchart TD
    A["無痛性の急性<span class='jp-term jp-term-diagram' title='decreased visual acuity'>視力低下</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='floaters'>飛蚊症</span>増加"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='slit-lamp'>細隙灯</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fundus examination (fundoscopy)'>眼底検査</span>を試みる"]
    B --> C{"眼底(特に周辺部網膜)が<br>透見できるか"}
    C -->|"できる"| D["原因(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='angiogenesis'>新生血管</span>・裂孔・出血源)を<br>直接同定し原因治療へ"]
    C -->|"できない"| E["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='B-scan ultrasonography'>B-scan超音波</span>検査"]
    E --> F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='retinal detachment'>網膜剥離</span>・裂孔があるか"}
    F -->|"あり"| G["緊急治療(裂孔閉鎖・網膜復位術)"]
    F -->|"なし"| H["原因精査(糖尿病・血管疾患の既往・外傷歴)を継続し<br>頭位挙上で経過観察"]

では糖尿病・/抗凝固薬の使用歴、外傷歴、感()の有無(新規のを示唆)を確認する。眼底が一部でも透見できれば、そこから出血源を直接同定できることもある。

評価:眼底が透見できないときの超音波検査

⚠️ 眼底が透見できないほどのでは、検査で・裂孔の有無を必ず確認する。 これがの評価における最重要の行動指針である1・裂孔原性いずれのも超音波で描出でき、裂孔が見つかればへの進行を防ぐため緊急に治療する。

💡 の診療は「出血そのもの」より「出血によって見えなくなっている裏の病態」を常に警戒する構造になっている。だけで安心せず、透見不良なら必ず超音波を追加する。

治療

  1. 安静・頭位挙上:座位・半座位で頭を高くして就寝することで、赤血球が下方へ沈降し瞳孔領の透見性が改善するのを待つ。多くの軽症例は自然吸収される。
  2. 原因治療にはなどの抗VEGF薬注射、にはを行う。
  3. 切除術)の合併、遷延する出血、などが適応となる1。小児では予防のため早期の手術適応をより積極的に検討する。

⚠️ 抗凝固薬内服との関係は、直感に反して明確ではない。 抗凝固薬使用者でのリスクが明らかに高いという強い根拠はなく、ETDRS試験でもアスピリン使用による患者の出血リスク増加は示されていない1。抗凝固薬を機械的に中止する前に、原因検索と眼科的評価を優先する。

まとめ

  • は診断名ではなく、必ず背景に原因疾患がある。
  • 症状は無痛性の増加から、高度ならのみへと進行する。
  • 最多の原因はで、40歳未満では外傷が最多。に伴うも原因となる。
  • 眼底が透見できない例では検査で・裂孔を必ず除外する。裂孔があれば緊急に治療する。
  • 治療は頭位挙上での経過観察を基本に、原因治療(・抗VEGF)を組み合わせ、合併や遷延例ではを行う。抗凝固薬との明確なは確立していない。

出典

  1. 1.Vitreous Hemorrhage(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2023)硝子体出血の症状が飛蚊症・霧視・影やクモの巣のような自覚で通常は無痛性であること、原因として増殖糖尿病網膜症(特に両眼性の出血で最多)・後部硝子体剥離に伴う網膜裂孔・網膜静脈閉塞症・加齢黄斑変性・外傷(40歳未満で最多の原因)・Terson症候群・網膜細動脈瘤があること、眼底が透見できない例でB-scan超音波検査を行い牽引性・裂孔原性網膜剥離や網膜裂孔の有無を確認することが評価の要であること、保存的治療は頭位挙上・経過観察であり網膜剥離・眼内炎・遷延する出血・開放性眼外傷では硝子体手術の適応となること、抗凝固薬使用患者で硝子体出血のリスクが高いことを示す明確な根拠はなくETDRS試験でもアスピリン使用による糖尿病網膜症患者の出血リスク増加は示されなかったこと閲覧 2026-08-11
  2. 2.Clinical features and visual prognostic indicators after vitrectomy for Terson syndrome(Eye (Lond)(Nature Publishing Group)・2020)Terson症候群の発生機序が、頭蓋内圧上昇がくも膜下腔を介して視神経に伝わり静脈圧上昇と毛細血管の二次的破綻を来すことであること、くも膜下出血患者におけるTerson症候群の発生率の報告が2.6〜28%と幅広いこと閲覧 2026-08-11