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Disease Atlas · 皮膚 · 先天性疾患

Rothmund-Thomson症候群

Rothmund-Thomson syndrome

別名
ロスムンド・トムソン症候群
臓器系
皮膚腫瘍運動器眼科
科目
PathologyMedical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
病理学 B/13:遺伝性腫瘍症候群(遺伝性がん症候群)遺伝学 3.1:遺伝的変異
鑑別疾患
Bloom症候群Werner症候群コケイン症候群色素性乾皮症
続発疾患
骨肉腫・ユーイング肉腫白内障基底細胞癌皮膚有棘細胞癌
症状
光線過敏毛細血管拡張

🧠 全体像:は、と同じ(RECQL4)の両アレル機能喪失で起こるだが、の異常ではなく、乳幼児期発症の(網状の++萎縮)という皮膚所見と、という骨腫瘍リスクで特徴づけられる。によって2つの型に分かれ、RECQL4による2型はリスクを、まれなANAPC1による1型はを伴う——同じ臨床像に見えて、でリスクの中身が変わる好例である。

概要・位置づけ

(RTS)は、・・を特徴とするである。全体の約60%はRECQL4()のによる2型でリスクを伴い、約10%はANAPC1(の構子)による1型でを特徴とするがの報告はない。残り約30%はが同定されていない1。

型 頻度 特徴的な合併症
RTS 2型 RECQL4 約60% (約30%)
RTS 1型 ANAPC1 約10% (の報告なし)
原因不明 — 約30% —

病態(機序)

RECQL4はの活性化との安定化に働くで、の原因であるBLMと同じに属するが、担う役割の重心が異なる。機能喪失によりとが生じ、皮膚では色素・血管・真皮の異常な変化()として、骨ではの蓄積を経てとして表面化する。

flowchart TD
    A["RECQL4またはANAPC1の両アレル機能喪失"] --> B{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='causative gene'>原因遺伝子</span>は"}
    B -->|"RECQL4(2型・約60%)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='deoxyribonucleic acid'>DNA</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='replication origin'>複製起点</span>の活性化・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='replication fork'>複製フォーク</span>安定化が障害"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='replication stress'>複製ストレス</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Genomic instability'>ゲノム不安定性</span>"]
    D --> E["表皮・真皮でメラニン分布異常と血管拡張が進行"]
    E --> F["生後3〜6か月から進行する<span class='jp-term jp-term-diagram' title='poikiloderma'>ポイキロデルマ</span>"]
    D --> G["骨芽細胞系列で<span class='jp-term jp-term-diagram' title='somatic mutation'>体細胞変異</span>が蓄積"]
    G --> H["若年発症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteosarcoma'>骨肉腫</span>"]
    B -->|"ANAPC1(1型・約10%)"| I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='APC/C'>後期分裂促進複合体</span>の調節異常"]
    I --> J["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='lens epithelium'>水晶体上皮</span>の分化異常が前景に立つ"]
    J --> K["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Juvenile-onset'>若年性</span><span class='jp-term jp-term-diagram' title='bilateral cataract'>両側白内障</span>(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='osteosarcoma'>骨肉腫</span>は伴わない)"]

💡 同じ「+」という入口症状でも、で追うべきリスクが変わる。 RECQL4陽性ならを、ANAPC1陽性ならを主眼に経過をみる必要があり、遺伝子型が管理方針を左右する数少ない例の1つである。

臨床像

系統 所見
皮膚 生後3〜6か月にから始まり四肢・へ広がる、網状の・・からなる。数か月〜数年かけて進行し、その後は比較的安定する
毛髪 頭髪・眉毛・睫毛が粗く、まばらになる
成長・骨格 5未満の、・などの
眼 1型ではの両側
(は日光曝露で増悪しうる)
腫瘍 2型では(約30%、診断時年齢中央値11歳)、(・など、約5%)

⚠️ は一般人口よりやや若年で発症する。 四肢の疼痛・腫脹・急速に増大する腫瘤を訴えたら、年齢によらず速やかに骨X線を含む画像評価に進む必要がある1。

診断

診断は乳幼児期に始まると・という特徴的な臨床像から疑い、RECQL4またはANAPC1ので確定する。を発症した同胞例では、確定診断がRECQL4の変異の同定によって得られている2。

鑑別には、同じ異常だがの著増を特徴としより白血病・リンパ腫を含むあらゆる悪性腫瘍が問題になる、NER異常で紫外線誘発性のがする、異常で進行性が前景に立つが挙がる。RTSのはを伴いうるが、XPのような重篤な日焼け反応やのような進行性は伴わない点で区別できる。

治療・管理

根治療法はなく、・眼科・整形外科による定期的なが中心になる。皮膚は年1回を目安に色調・性状の変化を確認し、のない例でも眼科の定期評価を継続する1。

⚠️ の定期画像スクリーニングは推奨されない。 過剰なを避け、・腫脹・急速に増大する病変など臨床的な疑いが生じた時点で速やかに画像評価を行う方針が推奨される1。

⚠️ (GH)値が正常なら、に対するGH補充療法は行わない。 理論的な発癌促進リスクが懸念されるためで、GH分泌不全が証明された例のみ通常どおり適応となる1。日光曝露・熱曝露は避け、の整容的治療にはが用いられる。

予後

生命予後を左右する最大の因子は2型におけるの発症で、早期発見と(・)により寛解を維持できる例がある一方、寛解後に肺転移でする例もあり、転帰は一様ではない。ある同胞例では、姉は治療終了後3年以上寛解を維持したが、弟は同様の治療にもかかわらず経過観察中に肺転移を来しを要した2。自体は進行後に比較的安定し、生命を脅かすものではない。

まとめ

  • はで、約60%がリスクを伴うRECQL4(2型)、約10%がを特徴としを伴わないANAPC1(1型)による。
  • 乳幼児期に始まる網状の・・萎縮からなる、、、が中核所見。
  • と同じファミリーの異常だが、ではなくの不安定化を介してという組織特異的なを生む点が異なる。
  • は約30%(2型)に生じ診断時年齢中央値11歳とやや若年で、定期スクリーニングは推奨されないが症状があれば速やかに画像評価する。
  • 管理は皮膚・眼の定期と腫瘍への早期対応が中心で、GH値が正常なら治療は避ける。

出典

  1. 1.Rothmund-Thomson Syndrome(GeneReviews(Wang LL, Plon SE)・2020)常染色体劣性で*RECQL4*(全体の約60%を占め骨肉腫リスクを伴う2型)または*ANAPC1*(約10%、若年性両側白内障を特徴とし骨肉腫の報告はない1型)が原因遺伝子であり残り約30%は原因不明であること、中核所見が生後3〜6か月で発症し数か月〜数年かけて進行する網状の色素異常・毛細血管拡張・点状萎縮からなるポイキロデルマであること、頭髪・眉毛・睫毛の粗毛(まばら)、5パーセンタイル未満に多い低身長、骨格異常(橈側列欠損・膝蓋骨低形成など)を伴うこと、2型では骨肉腫の有病率が約30%で診断時年齢中央値11歳と一般人口よりやや若いこと、皮膚癌(基底細胞癌・有棘細胞癌・悪性黒色腫)が約5%に生じること、骨肉腫の定期スクリーニングは推奨されないが疼痛・腫脹・増大する病変があれば速やかに画像検査を行うこと、GH値が正常なら成長ホルモン治療は理論的な腫瘍化リスクから推奨されないことを確認した(Clinical Characteristics節・Management節)。閲覧 2026-08-20
  2. 2.Somatic and germline analysis of a familial Rothmund-Thomson syndrome in two siblings with osteosarcoma(npj Genomic Medicine・2020)RECQL4の複合ヘテロ接合体変異をもつ同胞例で、姉は6歳で大腿骨遠位、弟は5歳で脛骨近位に骨肉腫を発症し、いずれも一般的な散発性骨肉腫の好発年齢より若かったこと、確定診断が*RECQL4*の病的バリアント同定によること、片方の腫瘍組織にRB1の体細胞性ナンセンス変異(骨肉腫の10〜60%に報告される変異型)を認めたこと、姉は術前化学療法後に患肢温存手術(同種骨移植による大腿骨遠位再建)を受け治療終了後3年4か月時点で寛解を維持している一方、弟は同様の治療で寛解を得たものの2020年8月の経過観察で肺転移(左肺2結節)が検出され転移巣切除待機中であったことを本文で確認した。閲覧 2026-08-20