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Disease Atlas · 皮膚 · 先天性疾患

遺伝性汎発性色素異常症

Dyschromatosis universalis hereditaria

別名
DUH
臓器系
皮膚
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
遺伝学 4.1:単一遺伝子遺伝
鑑別疾患
遺伝性対側性色素異常症色素性乾皮症

🧠 全体像:(DUH)は、(DSH)と名前も見た目も紛らわしいが、分布域が違う——DSHが・優位の限局分布であるのに対し、DUHは体幹・四肢を含むよりの分布を示す。もABCB6・SASH1とDSHのADAR1とは別で、しかもDUHの中でもによっての性状が違う——ABCB6型は過色素・が均衡して混在する「」、SASH1型は優位の目立つという「lentiginous型」に寄る。「DUHか、DSHか」を分布で見分け、「DUHの中でどちらの型か」を斑の性状で見分ける、という二段構えで整理する。

定義・分布

DUHは、体幹・四肢に、時に顔面にも及ぶびまん性の分布で、境界明瞭・のとが混在する、まれな遺伝性皮膚疾患である12。病変は乳幼児期または小児期早期に出現し、思春期後にも進行することがあるが、以後は色調・分布に大きな変化なく生涯持続する1。

⚠️ 「DUH」と「DSH」は名前も臨床像も紛らわしいが別疾患である。 DSH()はADAR1の異常による常染色体優性の症で、・優位の分布を特徴とし、乳幼児期に出現して思春期前に拡大が止まる3。DUHはこれより広く体幹・四肢を含むの分布を示す点が最大の識別点になる。

原因遺伝子と表現型の違い

DUHのとしてABCB6・SASH1が同定されており、いずれもを示す家系が報告されている12。ただし同じ「DUH」でも、によって斑の性状が異なる2。

ABCB6() SASH1
の性状 ・が均衡して混在、網状パターン が優位(とのバランスが崩れる)
分布の特徴 優位
表現型の呼び方 「」 「lentiginous表現型」と呼ばれることが多い
遺伝形式 常染色体優性 常染色体優性(多くはde novo)

⭐ SASH1変異はに目立つを作る。 これは紫外線への感受性そのものが病的に亢進しているわけではなく、の活動性そのものが変異によって高まっているためと考えられる(下記)。「日光で目立つ」からといってを疑う根拠にはならない——DUHにはのような重症日焼け反応や修復異常は伴わない。

病態機序(SASH1変異型)

SASH1変異によるの機序として、次の3つの経路が報告されている1。

flowchart TD
    A["SASH1遺伝子の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heterozygous'>ヘテロ接合性</span>バリアント<br>(多くはSLY domain内、de novo)"] --> B["p53–POMC–MC1R–SASH1<br>カスケードの活性化亢進"]
    A --> C["MAPK/ERK経路の<br>活性化増強"]
    A --> D["E-cadherin発現の低下"]
    B --> E["メラニン合成・輸送の亢進"]
    C --> E
    D --> F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='melanocyte'>メラノサイト</span>の遊走亢進"]
    E --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='sun-exposed site'>日光曝露部</span>優位の<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='hyperpigmented macule'>過色素斑</span>(lentiginous表現型)"]
    F --> G

💡 1つの遺伝子変異が3つの経路を同時に動かす。 メラニン合成の亢進(p53–POMC–MC1R–SASH1カスケード、MAPK/ERK経路)と、自体の移動性亢進(E-cadherin低下)が組み合わさることで、に偏った目立つという表現型が説明される1。

随伴症状

皮膚病変のみにとどまらず、・眼・高音性難聴などの全身異常を伴う例が報告されている1。⚠️ これらは一部の症例に限られる随伴所見であり、DUHの必須所見ではない。 全身異常を伴わない皮膚が主体である。

鑑別

鑑別疾患 区別点
(DSH) ADAR1変異、・優位の限局分布、思春期前に進行停止3。DUHは体幹・四肢を含む分布
(XP) (NER)異常による重症の・が本態。DUHにはや素因の上昇はない
(単純性そばかす) のみでを伴わない。家族性の分布パターン・発症経過がDUHほど特徴的でない
・ 先行する炎症性皮膚病変の既往があり、分布が原病変に一致する

治療・管理

根治療法はなく、整容的な問題が中心であるため治療は必須ではない。の同定にはSanger sequencingなどのが診断確定・鑑別に有用である。優位のSASH1では・が症状の目立ちを軽減しうる。

まとめ

  • DUHは体幹・四肢を含むの分布で、・が混在する常染色体優性の症である。
  • はABCB6(:均衡した混在パターン)とSASH1(優位の優位パターン、多くはde novo)の2群があり、表現型が異なる。
  • ⚠️ DSHとは別疾患。 DSHはADAR1変異による・優位の限局分布で、DUHはより広い分布という分布域の違いが最大の識別点。
  • SASH1では、メラニン合成亢進と遊走亢進という2系統の機序が同時に働き、優位のを作る。
  • ・眼・高音性難聴などの全身異常を伴う例が一部で報告されるが、必須所見ではない。
  • や素因の上昇はなく、この点でとは明確に区別される。

出典

  1. 1.Two novel SASH1 mutations in Chinese families with dyschromatosis universalis hereditaria(Journal of Clinical Laboratory Analysis・2021)PMC全文で確認した。DUHが「無症候性の過色素斑・低色素斑」を特徴とするまれな色素性遺伝性皮膚疾患であり、病変が体幹・四肢に、時に顔面にも及ぶ**びまん性の分布**を示すこと、乳幼児期または小児期早期に出現し思春期後にも進行することがあり、以後は色調・分布に大きな変化なく生涯持続すること、皮膚病変に加えて低身長・眼白皮症・高音性難聴などの全身異常を伴う例が報告されていること。*ABCB6*と*SASH1*が近年DUHの原因遺伝子として同定され、いずれも常染色体優性遺伝を示す家系があること。本論文が報告した2家系はいずれも*SASH1*の高度に保存されたSLY domain内のde novoヘテロ接合性バリアント(c.1547G>A [p.Ser516Asn]、c.1547G>T [p.Ser516Ile])であり未報告の変異であったこと。機序として、SASH1変異がp53–POMC–MC1R–SASH1カスケードの活性化を強めメラニン合成・輸送を亢進させること、MAPK/ERK経路の活性化を増強すること、SLY domain内の変異がE-cadherin発現を低下させメラノサイトの遊走を増加させることを本文で確認した。閲覧 2026-09-07
  2. 2.Genetic Pigmentary Disorders: From Molecular Mechanisms to Clinical Manifestations(The Journal of Dermatology・2026)PMC全文で確認した。DUHが境界明瞭で不整形の過色素斑・低色素斑を体幹・四肢に多数生じ、乳幼児期または小児期早期に発症する疾患であること、*ABCB6*変異型が古典型で汎発性の過色素斑・低色素斑が網状パターンで混在する分布を示す一方、*SASH1*変異型は日光曝露部優位の目立つ過色素斑を呈し、古典型の均衡した過色素・低色素混在パターンとは異なる「lentiginous表現型」として報告されることが多いこと、いずれの遺伝子型も常染色体優性遺伝であること、DSH(遺伝性対側性色素異常症)は手背・足背優位の分布を特徴とすることを、DUH・DSHそれぞれの節で確認した。閲覧 2026-09-07
  3. 3.A Novel Mutation of the ADAR1 Gene in a Chinese Family with Dyschromatosis Symmetrica Hereditaria and Literature Review(Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology・2024)DSHの原因遺伝子が1q21.3の*ADAR1*で常染色体優性(高浸透率)であること、病変が乳幼児期〜小児期早期に出現し思春期前に拡大が止まること、分布が**手背・足背が主体**で顔面が次に多いことを本文で確認した(DUHとの分布域の対比に用いた)。閲覧 2026-09-07