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Disease Atlas · 皮膚 · 先天性疾患

遺伝性対側性色素異常症

Dyschromatosis symmetrica hereditaria

別名
DSH
臓器系
皮膚
科目
Medical Genetics and Immunology (Genetics)
トピック
遺伝学 4.1:単一遺伝子遺伝
鑑別疾患
遺伝性汎発性色素異常症色素性乾皮症
関連疾患
Aicardi-Goutières症候群

🧠 全体像:(DSH)は、(XP)と同じ「・顔面の網状の」という見た目を作るが、原因も機序もXPとはまったくの疾患である。XPが紫外線損傷を切り出す修復(NER)の異常であるのに対し、DSHはを編集するADAR1という酵素の異常で、常染色体優性(XPは劣性)、やの素因もない。臨床像だけが似て、機序は別物という関係を正しく区別することが、このノートの核心になる。

概要・位置づけ

DSHは、・を主座に顔面にも及ぶ、とが混在する網状のを来す常染色体優性の遺伝性症である。1910年に日本人(外山)が背側の独特な色素パターンを示す症例を初めて報告し、1929年に「」という疾患名を与えた1。以後も日本・中国からの報告が突出して多い2。原因は1q21.3にあるADAR1遺伝子ので、高いを示す2。

病態(機序)

ADAR1はのアデノシンをへ変換する編集酵素をコードする。の塩基配列そのものを扱うXPのNER()とは異なり、転写後のを編集する機構であり、紫外線損傷の除去や変異蓄積という発癌機序とは経路がまったく異なる。ADAR1機能低下がどのようにして・顔面に限局した網状のを生むのか、その正確な細胞機序は完全には解明されていない。

flowchart TD
    A["ADAR1遺伝子のバリアント"] --> B{"何コピーが変異しているか"}
    B -->|"1コピー(<span class='jp-term jp-term-diagram' title='heterozygote'>ヘテロ接合体</span>)"| C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>編集能は部分的に保たれる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dorsum of the hand'>手背</span>・顔面の限局した<span class='jp-term jp-term-diagram' title='pigmentary abnormality (dyspigmentation)'>色素異常</span>"]
    D --> E["DSH:<span class='jp-term jp-term-diagram' title='dermopathy'>皮膚症</span>状のみ"]
    B -->|"2コピー(ホモ・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='compound heterozygote'>複合ヘテロ接合体</span>)"| F["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ribonucleic acid'>RNA</span>編集能が高度に失われる"]
    F --> G["細胞質<span class='jp-term jp-term-diagram' title='double-stranded RNA'>二本鎖RNA</span>が蓄積"]
    G --> H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='type I interferon response'>I型インターフェロン応答</span>が誘導される"]
    H --> I["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='Aicardi-Goutières syndrome'>Aicardi-Goutières症候群</span>6型:重症の<span class='jp-term jp-term-diagram' title='neuroinflammation'>神経炎症</span>性疾患"]

⭐ 同じ遺伝子でも、変異が1コピーか2コピーかで病気の重さがまったく違う「」の好例である。 (1コピー)変異は状だけのDSHにとどまるが、・(2コピー)変異になると、ADAR1機能がさらに失われて細胞質のが蓄積し、ウイルス感染を模倣する強い()が誘導される、6型という重篤な性疾患(・・発達遅滞などを来す)に至る3。DSHと6型は同じ遺伝子の異なる表現型であり、DSHの患者・家系に6型の家族歴を尋ねる意義はここにある。

臨床像

病変は乳幼児期から幼児期早期に出現し、思春期前には拡大が止まって以後は安定する。(様の小さな斑)とが混在するの斑が、・を主座に、次いで顔面にも生じる。日光曝露で増悪し夏季に拡大・冬季に軽快する季節変動を示すことがある4が、XPのような重症の日焼け反応やは伴わない。

⚠️ 「日光で増悪する」という所見だけでXPを疑わない。 DSHの病変も日光曝露で目立つことがあるが、これはが相対的に強調されるためであり、XPのような損傷の蓄積を意味しない。皮膚がんの素因も上昇しない。

鑑別

もっとも重要な鑑別はである。両者とも・顔面のを来すが、DSHは常染色体優性でNERは正常、による重症日焼けやのを欠く点で区別できる。

そのほか、(DUH、体幹・四肢を含むよりの分布でSASH1・ABCB6など異なる遺伝子群が原因)、単なる、・も鑑別に挙がる。DSHは・優位という分布と、乳幼児期発症・思春期前進行停止という経過が識別の手がかりになる。

治療・管理

根治療法はなく、整容的な問題が中心のため治療は必須ではない。日光曝露で目立ちやすくなるため、・の使用を勧める。整容的な希望が強い場合はやなどが試みられるが、いずれも一時的な改善にとどまる2。

まとめ

  • DSHはADAR1(編集酵素)のによる常染色体優性の症で、日本・中国に多い。
  • XPと臨床像(・顔面の網状)が似るが、機序は——DSHは修復ではなく編集の異常であり、によるリスクの上昇はない。
  • 同じADAR1でも(1コピー)はDSHにとどまるが、ホモ・(2コピー)は6型という重症の性疾患に至るがある。
  • 病変は乳幼児期に出現し思春期前に進行が止まって安定する、・優位の・混在の斑が特徴。
  • 根治療法はなくと整容的対応が中心で、生命予後に影響しない良性の疾患である。

出典

  1. 1.Dyschromatosis symmetrica hereditaria(Journal of Dermatology・2013)1910年に外山が四肢遠位背側の独特な色素パターンを示す症例を初めて報告し、その後1929年に「遺伝性対側性色素異常症(dyschromatosis symmetrica hereditaria)」という疾患名を与えたという史的経緯を本文で確認した。閲覧 2026-08-20
  2. 2.A Novel Mutation of the ADAR1 Gene in a Chinese Family with Dyschromatosis Symmetrica Hereditaria and Literature Review(Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology・2024)DSHの原因遺伝子が1q21.3の*ADAR1*で常染色体優性(高浸透率)であること、病変が乳幼児期〜小児期早期に出現し思春期前に拡大が止まること、分布が手背・足背が主体で顔面が次に多いこと、過去色素斑と脱色素斑が混在する不整形の斑であること、日本・中国に多く報告されていることを本文で確認した。閲覧 2026-08-20
  3. 3.Case Report: Aicardi-Goutières Syndrome Type 6 and Dyschromatosis Symmetrica Hereditaria With Congenital Heart Disease and Mitral Valve Calcification – Phenotypic Variants Caused by Adenosine Deaminase Acting on the RNA 1 Gene Homozygous Mutations(Frontiers in Pediatrics・2022)*ADAR1*のヘテロ接合体(1コピー)変異は皮膚症状のみのDSHを来す一方、ホモ接合体・複合ヘテロ接合体(2コピー)変異はAicardi-Goutières症候群6型という重症の神経炎症性疾患を来すという遺伝子量効果があること、ADAR1機能低下により細胞質二本鎖RNAが蓄積しI型インターフェロン応答が誘導されるという機序を本文で確認した。閲覧 2026-08-20
  4. 4.A Case Report of Dyschromatosis Symmetrica Hereditaria with Glucose-6-Phosphate Dehydrogenase Deficiency(Clinical, Cosmetic and Investigational Dermatology・2023)症例で手指背側の脱色素斑と頬骨部の雀卵斑様色素斑を認め、病変が日光曝露で増悪し夏季に拡大・冬季に軽快する季節変動を示したことを本文で確認した。閲覧 2026-08-20