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Imaging findings · Published

脂肪体徴候

Fat pad sign

別名
肘関節の脂肪体徴候後方脂肪体徴候elbow fat pad signsail sign
臓器系
運動器小児
科目
Medical Imaging
トピック
画像診断学 02:X線撮影の基礎画像診断学 13:骨軟部の画像診断

🧠 全体像:は、肘の外傷後の側面像で、ではなく関節内の液体を見つける所見である。関節に血液()や液体がたまるとが膨らみ、関節の前後にある脂肪体が押し上げられて、周囲の軟部組織より黒い影として浮かび上がる。が見えなくても、があれば関節内の骨折を疑う手がかりになる。⚠️ 見つかる骨折は小児ではなど、成人ではが代表で、は「骨折の証明」ではなく「の証明」であることを忘れない。

所見の定義

肘の真の側面像で、前方と後方の脂肪体を見る。正しい側面像は、肘を90°に屈曲し、前腕を最大にして撮る1。

脂肪体は、の内側で滑膜の外側にある構造である。がたまるとが膨らんで脂肪体を押し出す。の挙上は、の検出により感度が高いとされる2。

脂肪体 正常 異常
前方 の前面に沿って細く見えることがある に押されて前方へ持ち上がり、帆のような形になる()1
後方 に隠れて見えない 見えれば常に異常で、転位のないを示す1
flowchart TD
    A["肘の外傷"] --> B["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='intra-articular fracture'>関節内骨折</span>"]
    B --> C["関節内に血液・液体がたまる"]
    C --> D["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='articular capsule'>関節包</span>が膨らむ"]
    D --> E["脂肪体が前方・後方へ押し出される"]
    E --> F["真の側面像で<br>前方が帆状・後方に黒い<span class='jp-term jp-term-diagram' title='crescent-shaped'>三日月状</span>の影"]
    F --> G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>が見えなくても<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='occult fracture'>潜在骨折</span>として扱う"]

潜在骨折はどれほどあるか

だけが陽性でが見えない肘に、骨折がどれだけ隠れているかは、見つけ方で数字が変わる。

研究 対象 骨折の見つけ方 の割合
小児(45例)3 の挙上のみ 約3週後のX線で新生骨を確認 76%(骨折の約半数が。次いで近位・・)
小児(26例)4 が陽性 数日以内のMRI 骨折23%、73%
成人(20例)5 のみ MRI 75%(その87%が)

⭐ 数字の違いは、骨折の定義と見つけ方の違いを含む。 小児の1999年の研究は、約3週後のX線で新生骨が出た肘を骨折とした。MRIの研究では、が骨折とは別に数えられている。MRIを行った2つの研究では、が見つかっても治療は変わらなかった54。

⚠️ 成人20例の検討では、脂肪体の持ち上がりの大きさは骨折の可能性と対応しなかった5。大きながあるから骨折の確率が高い、とは言えない。

評価の進め方

flowchart TD
    A["肘の外傷"] --> B["正面像と真の側面像<br>肘90°屈曲・前腕<span class='jp-term jp-term-diagram' title='supination'>回外</span>"]
    B --> C["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>と骨のずれを探す<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='anterior humeral line'>前上腕骨線</span>・<span class='jp-term jp-term-diagram' title='ossification center'>骨化中心</span>"]
    C --> D{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='fracture line'>骨折線</span>が見えるか"}
    D -->|"見える"| E["骨折として評価<br><span class='jp-term jp-term-diagram' title='supracondylar fracture'>顆上骨折</span>は血流と神経を確認"]
    D -->|"見えない"| F{"<span class='jp-term jp-term-diagram' title='posterior fat pad'>後方脂肪体</span>が見えるか<br>前方が帆状か"}
    F -->|"見える"| G["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='occult fracture'>潜在骨折</span>として固定<br>約3週後に再評価"]
    F -->|"見えない"| H["<span class='jp-term jp-term-diagram' title='clinical signs'>臨床所見</span>で判断<br>骨折を否定しきらない"]
  • を探すとき。 小児の肘では、がの中央1/3を通るかを見る。この線が年齢相応の位置から前方へずれていれば、伸展型の()を示す1。小児の肘はが年齢とともに現れるので、正常なを骨片と誤らない(の画像診断)。
  • 固定と再評価。 の挙上があるががない小児は、転位のない肘の骨折として扱う実践を支持する報告がある3。約3週後のX線で新生骨が見えれば、骨折があったと確認できる。MRIでが確認できても治療は変わらなかったとの報告がある4。
  • ⚠️ では、血管(脈拍・皮膚の色)と、橈骨・正中・の運動と感覚を必ず評価する1。

紛らわしいもの

状況 見分けるポイント
脂肪体が正常 が正常と読まれた小児113人のうち、骨折は2人(98.2%)6。骨折の可能性は低いが、ゼロではない
は陽性だががない 骨折の割合は研究で23〜76%と幅があり、も多い4。がなくても関節内の損傷として扱う
外傷のない が示すのはであって骨折ではない。外傷歴がなければ、などの感染や炎症によるも考える
の骨折 や縦のが、を示すことがある1
真の側面像でない画像 肘90°屈曲・前腕の条件から外れた像では、評価が不確かになる。必要なら撮り直す

まとめ

  • は、肘の外傷後の側面像でを示す所見で、が見えなくてもを疑う手がかりになる。
  • 正常でも見えると違い、は見えれば常に異常である。が帆のように持ち上がるのも異常である。
  • 隠れている骨折は、小児ではが多く、成人ではが多い。見つけ方で割合は変わり、MRIではが骨折とは別に数えられる。
  • が陽性でがなければ、として固定して再評価する。MRIでが確認されても治療は変わらなかったとする報告がある。では血流と神経の評価を忘れない。
  • 脂肪体が正常でも骨折は否定しきれない。真の側面像で評価する。

出典

  1. 1.Management of Pediatric Elbow Fractures and Dislocations(Children (Basel)・2024)Europe PMCの全文(PMC11352739、MDPI)で確認した。小児の肘の側面像は肘を90°屈曲し前腕を最大に回外して撮ること、前方脂肪体は正常でも見えるが関節液があると前方へ押し出されて外観が変わり(帆状徴候)潜在骨折を示しうること、側面像の後方脂肪体徴候は常に異常で転位のない潜在骨折を示すこと、前上腕骨線が上腕骨小頭の中央1/3を通らなければ伸展型顆上骨折の後方転位を示すこと、顆上骨折では血管の評価に加えて橈骨・正中・尺骨神経の運動と感覚を評価すること、肘頭骨折でも後方脂肪体徴候が潜在骨折を示しうることを確認した。閲覧 2026-10-26
  2. 2.Deep learning accurately classifies elbow joint effusion in adult and pediatric radiographs(Scientific Reports・2022)Europe PMCの全文(PMC9276721、CC BY)の序論で確認した。肘の脂肪体が関節包の内側にあり滑膜の外側にある構造であること、正常では前方脂肪体だけが上腕骨前面に接して見え後方脂肪体は肘頭窩に隠れること、関節内骨折で前方脂肪体が挙上し関節液の検出により感度が高いこと、後方脂肪体は関節液で肘頭窩から背側へ押し出されて見えることを確認した。閲覧 2026-10-26
  3. 3.The posterior fat pad sign in association with occult fracture of the elbow in children(Journal of Bone and Joint Surgery (American volume)・1999)Europe PMCの抄録(PMID 10535592)で確認した(全文は取得できていない)。外傷後に後方脂肪体の挙上以外の骨折所見がない平均4歳半の小児45例を約3週後の正面・側面・斜位2方向のX線で追跡し、新生骨の出現を骨折とみなしたところ34例(76%)に骨折があったこと、内訳が顆上骨折18例(53%)・尺骨近位9例(26%)・外側顆4例(12%)・橈骨頸3例(9%)であったこと、この所見のある小児は転位のない肘の骨折として扱う実践を支持するとしたことを確認した。閲覧 2026-10-26
  4. 4.The role of fat pad sign in diagnosing occult elbow fractures in the pediatric patient: a prospective magnetic resonance imaging study(Journal of Pediatric Orthopaedics B・2012)Europe PMCの抄録(PMID 22735922)で確認した(全文は取得できていない)。X線で脂肪体徴候が陽性だった小児26例(平均10歳)に数日以内にMRIを行ったところ、潜在骨折は6例(23%)、骨挫傷が19例(73%)であったこと、脂肪体徴候の陽性は潜在骨折と同義ではないこと、MRIで潜在骨折が見つかっても最終的な治療は変わらないこと、肘の関節液がX線で確認された小児は2〜3週間のギプス固定でよく追加の臨床・画像の確認は必要ないと考えられることを確認した(レベルIII)。閲覧 2026-10-26
  5. 5.The fat pad sign following elbow trauma in adults: its usefulness and reliability in suspecting occult fracture(Journal of Computer Assisted Tomography・2004)Europe PMCの抄録(PMID 15232392)で確認した(全文は取得できていない)。外傷後のX線で関節液貯留はあるが骨折が見えない成人20例にMRIを行ったところ75%に潜在骨折があり、その86.6%が橈骨頭、6.7%が外側上顆、6.7%が肘頭であったこと、90%に骨髄浮腫があったこと、脂肪体の挙上の大きさは骨折の可能性と対応せず、追加のMRIで管理は変わらなかったことを確認した。閲覧 2026-10-26
  6. 6.The predictive value of a normal radiographic anterior fat pad sign following elbow trauma in children(Pediatric Emergency Care・2011)Europe PMCの抄録(PMID 21712751)で確認した(全文は取得できていない)。肘の外傷で受診した1〜18歳の小児で追跡できた197例のうち、初回X線で前方脂肪体が正常と読まれた113例中、最終的に骨折と診断されたのは2例で、陰性的中率が98.2%(95%信頼区間93.1〜99.7%)であったこと、骨折56例のうち7例(13%)が追跡時に判明した潜在骨折であったこと、前方脂肪体の頂角は正常と読んだ群で平均14.7°、異常と読んだ群で27.0°であったことを確認した。閲覧 2026-10-26