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Lab values · Published

ピロリン酸カルシウム結晶

Calcium pyrophosphate crystals

別名
CPP結晶CPPD結晶
臓器系
運動器
科目
Internal Medicine
トピック
内科学 R-15:関節炎の鑑別診断

🧠 全体像結晶の読み方は、結晶との対比に尽きる——形(菱形・長 vs 針状)、の強さと向き(弱い正 vs 強い負)が鏡検の核心である。もう一つの実務上の要点は、CPP結晶は小さくが弱いため見落とされやすい(感度が低い)ことと、結晶が見つかってもを否定できないことの2つで、いずれも「結晶が見えた/見えない」だけで診療を止めないための注意になる。

何を見ているか

で得た(またはに相当する石灰化沈着物)を、で観察し、結晶の形、の有無・強さ、遅相軸に対する向きを判定する。CPP結晶は基質にまず沈着し、そこから中へ脱落したものを検出する。

基準値と単位

CPP結晶検査は定量値ではなく定性所見(陽性/陰性)であり、施設差・年齢差・性差というの概念は当てはまらない。ただし加齢は結晶沈着(軟骨石灰化)のを強く左右し、80歳以上では無症候の軟骨石灰化がまれではない。

陽性の意味:MSU結晶との対比

CPP結晶は菱形または平行六面体でが弱いのに対し、痛風のは針状でが強いという対比がまず基本になる1

所見 CPP結晶 (痛風)
菱形・長(平行六面体) 針状
の強さ 弱い 強い
の符号
の遅相軸に平行なときの色
対応する疾患 沈着症(CPPD、 痛風

💡 覚え方として、英語圏では「ABC」(Aligned=の遅相軸に平行、Blue=青、Calcium=カルシウム)という語呂合わせが使われる。CPP結晶は遅相軸に平行に置いたときく見え、直交させると黄色くなる——痛風のはちょうど逆(平行で黄、直交で青)になる。

CPP結晶が確認された場合でも、の急性発作か、無症候の軟骨石灰化に伴うの混入かは、関節の所見(発赤・熱感・腫脹)の有無と合わせて判断する。画像上の軟骨石灰化(・三角複合体など)は結晶沈着を支持する所見だが、感度は高くない。

陰性の意味

CPP結晶が陰性でもCPPD・を除外できない。結晶が小さくが弱いため見落とされやすいこと(後述)に加え、の部位・採取量、発作の時期によっても検出率は変わる。2023年のは、この偽陰性の多さを踏まえ、結晶陽性またはcrowned dens syndrome(冠状石灰化症候群)を十分条件とする一方、これらを欠く場合には年齢・代謝性/遺伝性危険因子・画像所見などを組み合わせた重み付けスコア(56点超)で分類する経路を用意している2

測定上の注意

⚠️ CPP結晶は小さく(しばしば2μm未満)が弱いため、通常の検査では見落とされやすい。 マゼンタ色の背景とのが乏しく、結晶の向きがわずかにずれるだけでさらにが弱まり検出が難しくなる。結晶に精通したリウマチ医の間でも同定の誤りが半数を超えるとする報告があり、観察者の熟練度に検出感度が強く依存する3

  • 検体は採取後速やかに検鏡する。放置・冷却により人工的な結晶がしたり、逆に脆弱な結晶が壊れて見えなくなったりする。
  • 抗炎症治療後や少量の検体では結晶量が減り、検出率がさらに下がる。
  • 結晶(CPPでもMSUでも)が確認できてもの併存は否定できない。 と細菌感染は同一関節に併存しうるため、結晶検索と並行して必ず細胞数・分画、グラム染色、培養を提出する。発熱、免疫不全、人工関節、多関節の急性腫脹があれば特に警戒する。
  • CPP結晶とが同一検体で混在することもあり、片方を確認しても他方の検索を打ち切らない。

経時変化とモニタリング

CPP結晶検査は急性発作の診断に使う単回のであり、な数値モニタリングの対象ではない。反復する発作の管理は臨床経過と画像(軟骨石灰化の分布)で追い、結晶検査を繰り返し施行して治療効果を追跡する使い方はしない。

まとめ

  • CPP結晶は菱形・弱いは針状・強いという対比が鏡検の核心で、遅相軸に平行なときの色(CPPは青、MSUは黄)が「ABC」の語呂合わせで覚えられる。
  • CPP結晶は小さくが弱いため見落とされやすく、検体は速やかに検鏡する。陰性でもCPPDを除外できない。
  • 結晶が確認できてもの併存は否定できず、グラム染色・培養を結晶検索と並行して必ず提出する。
  • 2023年のは、結晶検出の偽陰性の多さを踏まえ、結晶陽性を十分条件としつつ重み付けスコアによるを用意している。

出典

  1. 1.Calcium Pyrophosphate Deposition Disease(StatPearls (NCBI Bookshelf)・2025)CPP結晶は菱形または平行六面体(rhomboid or parallelepipedal)で弱い複屈折を示すのに対し、痛風のMSU結晶は強い負の複屈折を示す針状であるという対比を確認した閲覧 2026-08-11
  2. 2.The 2023 American College of Rheumatology/European Alliance of Associations for Rheumatology Classification Criteria for Calcium Pyrophosphate Deposition (CPPD) Disease(American College of Rheumatology / European Alliance of Associations for Rheumatology(Abhishek A, et al.)・2023)関節液の偏光顕微鏡によるCPP結晶陽性所見は特異度が高い一方で偽陰性率が高く観察者間variabilityも大きいため実務上の「実行可能な gold standard」が存在しないこと、この限界のため結晶同定を欠く場合の代替経路として重み付けスコアによる分類を用意したことを確認した閲覧 2026-08-11
  3. 3.A Novel Polarized Light Microscope for the Examination of Birefringent Crystals in Synovial Fluid(Gout, Urate, and Crystal Deposition Disease(FitzGerald JD, et al.)・2024)CPP結晶はしばしば2μm未満と小さく複屈折も弱いため、従来の偏光顕微鏡(CPLM)検査ではマゼンタ色の背景とのコントラストが乏しく同定が難しいこと、結晶に精通したリウマチ医の間でもCPP結晶の同定誤りの頻度が50%を超えるという報告があることを確認した閲覧 2026-08-11